2016/09/05

お手本は人間の脳 いま最高にホットなテクノロジー『ニューラルネットワーク』

HAL9000やスカイネットはいつ現れる?

人工知能(AI、Artificial Intelligence)といえば、SF映画では人間からの質問や命令にすぐさま反応し、サクッとミッションをクリアするシーンがよく描かれる。ただ、実際に実現するまでにはまだまだ時間がかかりそうで、映画『2001年宇宙の旅』でディスカバリー号に搭載されたHAL9000や、『ターミネーター』で人類滅亡のためにロボットを作り続けるスカイネットのようなコンピュータはまだ存在しない。

・・・・・・と思っていたら、2016年3月にコンピュータ囲碁プログラム「AlphaGo(アルファ碁)」が世界最強棋士のひとり、韓国のイ・セドルに勝利したというニュースが世界を駆け巡った! 囲碁といえば、チェスや将棋と比べて手数が多く、コンピュータが勝利するのは難しいとされてきた。今回解説する「人工ニューラルネットワーク」は、世界トップ棋士に勝利したAlphaGoに使われていた基幹技術だ。

AlphaGoとイ・セドルの対局の模様はYouTubeで見ることができる。囲碁好きの方はどうぞ

しかも、その3カ月後の6月、Twitter社がマジック・ポニー社という、社員たった11人の無名の英国企業を買い取ったというニュースが流れた。どんな会社なのかとマスコミが慌てて調べたら、なんとニューラルネットワークを用いた人工知能を開発している企業だったのだ。そう、ニューラルネットワーク、いま最高にホットなフロンティアなんです。

人間の脳の神経回路システムから着想する

人間の脳は千数百億以上ともいわれるニューロンという神経細胞が集まって構成されている。人間はなにかを経験すると、その原因と結果を記憶して自分なりのルールを見つけ、未経験のことに応用しようとしている。同じように、コンピュータにも事例となるデータを入力し、コンピュータなりのルールを見つけて、未経験の計算に応用できる関数をつくれるようにしようとしたのが人工ニューラルネットワークだ。

人間の脳がコンピュータだとしたら、ニューロンは回路。そしてニューロンとニューロンの接続部のシナプスでは、化学物質や電気を介して情報が伝達されるのだ

ちなみに、「人工」とつくようになったのは最近のこと。医学が進むにつれ、当初考えられていた脳の働きは、コンピュータにやらせようとしたものとは随分異なることがわかってきた。「これは一緒にするとマズいよね」ってことで、わざわざ「人工」をつけるようになったとか。

さて、話は戻って「AlphaGo」。これまで棋士に挑戦してきたプログラムとAlphaGoが大きく異なるのは評価経験則、つまり過去の囲碁の展開パターンが入力されていないこと。代わりに人工ニューラルネットワークを活用して、自分自身の中で対局を繰り返して最適な一手を見つける。開発者であっても、AlphaGoがなぜそこに石を置くと決めたのか、説明することはできないという。

ニューラルネットワークはディープラーニングの大切な要素

人工ニューラルネットワークは、人間の脳の生物科学的な仕組みからヒントを得て生まれたもので、AlphaGoでは多くのニューロンを多層構造で構築することで、膨大なデータを処理した。こうした多層構造の人工ニューラルネットワークは、ディープニューラルネットワークと呼ばれ、これを用いた機械学習(=アルゴリズムを使って特定の事象についてデータを解析し、傾向を学習・予測・判断を行う手法)がディープラーニング(深層学習)と呼ばれるようになった。

たとえば、MRIのスキャン画像からガンの兆候を発見したり、Facebookの投稿画像から友達と思わしき人物を特定するのも、ディープラーニングの成果。今後も消費者の動向を分析する製品マーケティングや、購買パターンの予測、果物の品質判定、漁獲量の予測など、あらゆる面で活用が期待されている。

今後の私たちの生活に根差したテクノロジーの源となるのが人工ニューラルネットワーク。それにしても、解明された脳の一部分からだけでもこれだけの技術が生まれるってことは、未解明の部分が明らかにされたら、一体どんなことが実現してしまうのか? そしてすごいのはやっぱり、人間の脳ってこと?

映画『2001年宇宙の旅』に登場した人工知能HAL9000は、映画ではこのカメラ・アイとしてその存在を暗示するだけで、コンピュータ本体が登場しないのが逆に不気味だった

文:吉田 努

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