2016/06/17

わが家に執事がやってくる? 噂の『HEMS(ヘムス)』とは

あなたの家にスゴ腕執事がやってくる!

HEMSと書いて、ヘムスと読む。なんだかプロ野球とか、サッカーチームの外国人選手っぽい名前だけれど、正式にはホームエネルギーマネジメントシステム(Home Energy Management System)の略。家庭で使われるエネルギーを集中管理するシステムのことで、やがては一家に1台の普及率となるといわれているのだ。

HEMSでは、家庭内の電力の使用量をコンセントごとに管理できるだけでなく、ガスや水道の使用状況も併せて把握できる。また、HEMSと電気機器がつながると、遠隔制御や自動制御ができるようになり、帰宅前にスマートフォンでお風呂に湯を張ったり、あらかじめエアコンを作動させておいたりすることも簡単にできてしまう。

電気自動車ユーザーなら、帰宅後にあらかじめコンセントにつないでおけば、電気代が安い時間にHEMSが自動的に充電してくれる。逆に、電気代が高い時間帯には家電を省エネ運転に切り替えて節電に気を配ってくれる。まさに、ホームエネルギーを賢く使う、スゴ腕執事なのだ。

スマートホームの中心的役割を果たすシステムがHEMSだともいえる

家電がHEMS対応なら後付けも可能

これはパナソニックのHEMSの中心となる「AiSEG」という機器

国内のメーカー各社は、それぞれ独自のHEMSを売り出している。たとえばパナソニックはグループ内に住宅メーカーがあるため、家から家電まで全部自社ブランドで統一するパッケージ化をプッシュ。シャープは通常必要な配電盤の工事が不要になるコンセントタイプのHEMSを売り出し中。東芝は外部サーバーにアクセスせずHEMSシステムを運用する家庭内完結型のシンプルな構成を提案している。

ただし、HEMSを設置するにあたって注意したいのは、今使っている家電がHEMSに対応しているかどうか。HEMSはコンセントごとに電力を監視しているので、電力の使用量を測るだけなら古い家電でも問題ない。家電の遠隔操作や自動運転をしたかったら、使っている家電がHEMSと通信するための共通の通信規格「ECHONET Lite(エコーネット ライト)」に対応している必要がある。

また、メーカーの仕様や家の状況によっては、大規模な宅内工事が必要な場合もあるので、導入時には注意してほしい。

HEMSではこんなコンソールから家庭内のエネルギーをコントロールする

実はHEMSに家族がいた!?

政府は、HEMSを2030年までに国内すべての住まいに設置することを目指している。2030年といえば随分先の話だが、すでに一般家庭でも導入が進みつつある。それを後押ししたのが、2016年4月から始まった電力自由化。環境課題的にも日本経済的にも、省エネルギーは大切なことだが、家庭においては電力料金は大きなトピックス。電力自由化に伴って普及が進むスマートメーターとHEMSが連携することで、家庭の省エネルギー&省マネーも加速するというわけ。

ところで、HEMSには兄弟がいる。BEMS(ベムス)とFEMS(フェムス)だ。頭文字のBはBuilding、FはFactoryで、それぞれオフィスビル版と工場版のHEMSのこと。規模の大きさから想像すると、長男FEMS、次男BEMS、三男HEMSといったところか。ちなみに、3兄弟を束ねるのがCEMS(セムス)で、CはClusterまたはCommunityを指す。CEMSは発電所での電力供給量と地域の電力需要の管理をする要の存在。お父さん/お母さんといって差し支えないだろう。

うーむ、家族と聞けばなんだか愛着が湧いてきそうだ。「HEMS、BEMS、FEMS、そしてCEMS。EMS一家がこれからの日本、そして地球のエネルギーを力強く支えていくのだ!!」(特撮作品の締めのナレーション風に読んでください)

文:吉田 努