2016/04/20

Facebookも開発に本気! 『全天球カメラ』とは

ぐるーり360°パノラマを撮るカメラ

世界的家電見本市「CES2016」で、VR(仮想現実)とともに多くの製品が発表されて話題となったのが全天球カメラだった。全天球カメラとは、前後左右だけじゃなく、上も下も全部、つまりぐる〜り360°のパノラマ写真を撮るためのカメラのことだ。しかも最新の製品は動画だってOKなのだ。

まずは全天球カメラで撮影した360°全天球動画を実際に見てもらおう。下のYouTube動画は、あとで紹介するリコーの「THETA S」という全天球カメラを用いて撮影したもの。なお、現在、YouTubeの360°全天球動画再生に対応しているブラウザは、Google ChromeとOperaのみ(2016年4月時点)なので、ほかのブラウザをご利用の方は、Google ChromeかOperaをインストールしてからトライしていただきたい。また、スマホで見る場合は、YouTube公式アプリが必要だ。

360°全天球動画、ご覧いただけただろうか。マウスでグリグリして、360°どの方向でも見ることができる。動画となるとなんとも感動的だ。

2万円台からのリーズナブルな機種が登場!!

360°全天球の静止画はこれまで、1台、あるいは複数のカメラで360°グルリと撮影したものを、専用のアプリケーションを使ってPC上で合成して作成していた。だから、これが動画となると映画のSFXレベルの作業となり、もはやアマチュアでは無理。ところが、上の動画の撮影に用いられた「THETA S」やコダックの「PIXPRO SP360」といった2〜4万円ほどで手に入れられる専用カメラが2014年ごろから登場し、グッと敷居が下がったというわけだ。今後もニコンなど各社が追随する予定で、2016年中にはさまざまな機種が登場する。楽しみだ。

全天球カメラを一挙に身近なものにしたリコーの「THETA」シリーズのこれは「S」。テレビのリモコンなどとほぼ同じ大きさなので、とてもカジュアルに持ち歩ける

こちらはニコンから発売予定の全天球カメラ「KeyMission 360」。4Kの高精細動画が撮影できるという

カメラの構造はシンプルで、180°パノラマを捉えることができる魚眼レンズが、カメラの胴体を挟んで2個背中合わせになっている。前と後(上と下でも同じことだが)で180°ずつ撮影して、合わせて360°というわけだ。そして、データの合成もカメラ本体が自動的に行ってくれる。誰にでも簡単に360°全天球動画が撮影でき、しかもYouTubeがこの360°全天球動画に対応したことによって、多くの人に見てもらえる時代がやってきたというわけなのだ。

VRをめぐるFacebookの野望!?

さて、この全天球カメラだが、VR(仮想現実)との関係を忘れてはいけない。現在発売中、あるいは発売予定の多くのVR向けヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、この360°全天球動画に対応している。つまり、自分が撮影した360°全天球動画をHMDで見れば、まるで撮影したその時間と場所に戻ったかのようなリアリティを感じることができるというわけだ。HMDを装着したまま上を見れば上が、右を見れば右が、振り返れば後ろの情景が見えるのだから。しかも動画で!!

そのVRと360°全天球動画に本格的に取り組むことを宣言しているのが、なんとFacebookだ。2016年春、FacebookはVR用の超高機能な全天球カメラを発表した。その名も「Surround 360」。その巨大なこまのようなボディの側面には14台のカメラが、上部には魚眼レンズのカメラが1台、底には2台のカメラを備え、3D映像の撮影も可能だという。一般販売はされないが、Facebookではこのカメラを用いて新しいサービスを始める予定だ。それがどんなものかは、以下のリンクからアクセスできる「facebook 360」で知ることができる。ちなみに、YouTube同様、360°全天球動画にFacebookもすでに対応済みで、誰でもアップロードできる。
https://facebook360.fb.com/

これがFacebookが発表した独自の高機能な全天球カメラだ

Facebookは極めて高解像度でプロフェッショナルな360°全天球動画の撮影で主導権を握り、VRの世界にどんどん進入を果たしていくという野望を持っているようだ。ま、それはそれとして、私たちも簡単に360°全天球動画が撮影できるようになったからには、そのうちプライベートな動画もHMDで見て追体験するのが普通となるなど、がぜんVRというものが身近になっていくのは間違いないだろう。

文:太田 穣