2018/10/05

『VTuber』大流行の理由はiPhone X? 「いそら真実」を例に解説します

YouTubeで動画配信・投稿をしている人のことをYouTuber(ユーチューバー)と呼ぶのに対して、YouTubeをはじめ、ニコニコ動画やSNSで動画配信・投稿をしている3DCGやイラストを「VTuber」という。読み方はバーチュアルユーチューバー、あるいはブイチューバーだ。

百聞は一見にしかず。たとえば、VTuber界のひとり、いそら真実の動画をYouTubeで見てみるといいだろう。美少女VTuberであるいそら真実がMCとなって、さまざまなコンテンツを配信している人気VTuberのひとりだ。

こういったVTuber、つまり3DCGアニメーションの存在がYouTubeに登場し始めたのが2017年の秋頃から。あっという間に人気が広がり、今では大勢のVTuberがYouTubeでしのぎを削り、人気VTuber番組の紹介サイトがあちこちにできているほど。こうしている間にも次から次へと新人VTuberが登場しているのが現状だ。

VTuber、人気の理由は?

VTuberがこれほどまでに人気を集める大きな理由には、二次元の存在がユーチューバーなどの動画配信者と同じように、歌をうたう「歌ってみた」やダンスを踊る「踊ってみた」、ゲーム実況プレイをハイテンションに行う様子などが、全世界のアニメ好きの心に刺さったことがあげられるだろう。ライブ配信時には、二次元アイドル等とコメントを通して会話が楽しめるということも、アニメ好きの夢を叶えている。

サングラスをかけてハイテンションに配信をするいそら真実と奏天まひろ サングラスをかけてハイテンションに配信を行う(左)いそら真実/(右)奏天まひろ

また、VTuberは新たなビジネスモデルとしても多くの企業から注目を集めている。たとえば、AIエンジニアになるためのオンライン学習サービスを行っているAidemy(アイデミー)では、プログラミング講座の講師をVTuberが務める無料講座の動画配信を始めた。アニメの延長のような形で楽しく学ぶことができるところや、音声データを差し替えるだけで外国語対応にもできる運用のしやすさにメリットがある。表情や体形、服装から細かな動きまで自由に設定できることから、プロモーションで活用したいと思う企業も多いようだ。

さらに、定年退職を迎えた人でも、VTuberとして新たな身体を手に入れ、社会で培ってきた知識を活用して稼ぐことができるという点で、高齢化社会のソリューションとしても期待されている

iPhone Xの登場でVTuberが変わった?

いそら真実の動画を見てもわかるが、顔の表情だけでなく、手の動きから髪の毛の揺れる様子まで、とても滑らかで自然な高品質3DCGアニメーションになっている。

いそら真実 状況にあわせて顔の表情や手や足、髪の毛までも滑らかに動く (左)いそら真実/(右)奏天まひろ

実際のところ、多くの人気VTuberの3DCG制作はプロのイラストレーターやCGクリエーターやプログラマーなどが手がけ、「中の人」は声優が演じていることが多い。そして視聴者とチャットなどをするには、人間の動きをCGにリアルタイムに反映できるモーションキャプチャーの装置なども必要で、かなりのお金がかかる。そのため、現在、VTuberの配信元の大半が企業なのだ。

ところがこのところ、企業ではなく個人の参入が相次いでいる。
理由は大きく2つ。1つは、VTuber用の制作アプリケーションやサイトが数多く登場したこと。トップVTuber並みの高品質を求めるならば、制作用アプリケーションも高価なものが必要になるが、まずまずの品質でよければWEB上で無料制作できるサイトや無料アプリがある。

2つ目は、iPhone Xの登場だ。これまでは個人でVTuberのアバターを制作するにはWEBカメラと高機能なPCが必要だったが、iPhone Xの登場後は、TrueDepthカメラのフェイストラッキング機能を利用したアプリが続々登場し、高機能PCがなくともかなり本格的な3DCGアニメーションが制作できるようになってきた

さらに、最近ではiPhone Xだけで背景の合成から配信までおこなえる無料アプリまで出てきた。もちろん、新たに発表されたiPhone XS/XS Max/XRでも同様のアプリを利用してアバターを制作できる

若い人たちを中心に人気のTikTokやSNOWなど、技術の進歩によりスマホ上で自己表現を行うことが当たり前になってきている。誰もが「なりたい自分」をデジタルやバーチャルの世界で表現できる時代が、すぐそこまで迫ってきているのだ。

YouTubeを越えて活躍するVTuberたち

注目を浴びるVTuberだが、YouTube以外でVTuberが活躍できる場をつくろうという動きも活発だ。なかでも話題を呼んでいるのが、グリーの子会社である「Wright Flyer Live Entertainment」が2018年8月からサービスをスタートした「REALITY 」だ。

これは世界初のVTuber専用ライブ配信プラットフォームと銘打たれたもので、VTuberのライブ配信や人気VTuberたちのコラボ配信が楽しめる

このプラットフォームで活躍するVTuberの一人が、先ほどから名前を挙げているいそら真美だ。いそら真美はREALITYの公式VTuberとして、アプリを中心にライブ配信をしている。グリーが2018年8月に開いた2018年6月期の決算説明会に登壇したことでも話題となった。

「REALITY」はiOSまたはAndroid用のアプリをインストールして利用できる。

「Reality」の画面

ほかにも、視聴者の投稿したコメントがVTuberのいる仮想スタジオに出現する、ドワンゴのVTuber配信サイト「バーチャルキャスト」など、VTuberが活躍できるさまざまなサービスが登場している。

今後は、YouTubeという世界を超えて活躍するVTuberがどんどん増えていくだろう。そのうち、人気タレントの上位をVTuberが占める、なんていう日がやってくるのかもしれない。

太田 穣

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