2016/03/31

みんなの安心・安全を守るために ALSOKの警備業務を支える『通信のチカラ』とは

深夜2時、ALSOKの神奈川ガードセンターが火災発生の警報を受信した。スマートフォンのGPS情報を元に、もっとも近くにいる警備隊員が自動で選び出され、緊急出動の指令が送られる。受け取ったのは、相模支社厚木支店、厚木機械警備隊に所属する近藤房治さんだ。

防刃チョッキの右胸に収納されているスマートフォンのアラームが鳴る。画面には、「契約しているビルで火災報知器が作動した」という旨の通知が表示されていた。

ALSOKのガードセンターには、昼夜を問わずデータが集まる。警報だけでも、年間で7億6,000万件と推計されているという

ガードセンターからは、「すでに火の手が上がっている可能性が高い」という情報も入っていた。すぐに119番通報を行い、クルマに乗り込む。エンジンをかけてナビを始動すると、スマートフォンが自動で接続。契約先の住所を転送すると、すぐに現場までの案内が始まった。

到着後、消火活動は消防隊に任せ、自らは状況を確認。警報の理由と状況をスマートフォンでガードセンターに報告する。併せて、スマートフォンで撮影した写真などを契約先の担当者に送る準備も進めた。早いタイミングで火災の発生を検知することはもちろん、契約先に状況を素早く報告するのも、ALSOKの務めだ。

ALSOK 相模支社厚木支店 厚木機械警備隊 近藤房治さん。右手に掲げているのはパナソニック製スマートフォン「TOUGHPAD」

すべての機械警備隊員にスマートフォンを配布

近藤さんは「センサーによる異常感知などで、1日に15回以上は指令が届く」と語る。そのすべてが、一分一秒でも早い現場到着が求められ、少しでも素早い処置が求められる事案だ。警備業法上では警報から25分以内の現場到着が定められているが、ALSOKの社内規定では20分を目標にしている。

「そういった意味では、情報端末が携帯電話からスマートフォンに変わったことで、スピード化と業務効率の改善が進みました」と近藤さん。

ALSOKでは、これまで使用していた携帯電話(ガラケー)に替わり、KDDIからパナソニック製「TOUGHPAD」と京セラ製「TORQUE G01」を調達し、現場の隊員へ配布した。

左の「TOUGHPAD」は主に現場の警備員が、右の「TORQUE G01」は主に技術担当者が使用している

実はあなたの身近で活躍しているALSOK

アスリートを起用したユニークなCMで知られるALSOKの正式名称は「綜合警備保障」。セキュリティサービス全般を業務とし、センサーによる一般・法人向けの機械警備や施設での常駐警備、人出が多い場所での雑踏警備、そして、現金輸送といった警備輸送業務まで手掛けている。

警備やセキュリティサービスと聞いても、遠い世界の出来事のように感じる人もいるかもしれない。しかし、あなたの身近なところでも、ALSOKは活躍している。

例えば、多くの人が日々便利に利用しているコンビニATM。コンビニで現金を引き出せないとなったら、困る人も多いだろう。その現金の補充・回収も、実はALSOKの担当業務のひとつだ。紙幣の詰まりといったトラブルが発生した際も、ALSOKの隊員が現場に急行できるよう、態勢が整えられている。

ATMへの現金の補充・回収業務は、現金輸送業務を専門に担当する警備員が行う

また、ALSOKは、一般家庭向けのホームセキュリティサービスのほか、GPS端末を活用して子どもや高齢者を見守る「まもるっく」というサービスや、ストーカー対策、盗聴器・盗撮器探索など、さまざまな世帯や世代に向けて幅広いサービスを提供している。

企業やビルの警備といった目に見えるところだけではなく、目に見えないところでみんなの安全・安心を支える。それがALSOKの仕事なのだ。

従来型の携帯電話からスマートフォンに移行した理由とは?

冒頭で紹介した近藤さんは、センサー類が異常を感知したとき、警備員が直ちに駆けつける機械警備を担当。契約先には銀行や損害保険会社もあり、コンビニや銀行に設置してあるATMの不具合や自動車事故が発生したときの現場確認などにも応対する。ただ、業務の幅が広がるにつれ、現場では、従来型の携帯電話の使い勝手の悪さが目立ってきたという。

「GPS対応の携帯電話を使った隊員指令システムを稼働させたのは2007年。この9年で、通信環境も端末性能も大幅に進化しました」と語るのは、開発技術部開発第一課課長の地頭正樹さんだ。

ALSOK 開発技術部 開発第一課 地頭正樹さん。スマートフォン導入の中心的な役割を担った

導入が検討されたのは2013年。スマートフォンの普及が加速度的に進んだ時期で、携帯電話を使ったシステムは時代遅れになりつつあった。

現場からの意見を吸い上げ、端末を選定

「そこで立ち上げた社内組織が"モバイル百人会"です。現場から携帯電話での不満点を吸い上げて、新しい端末を検討する参考にしました」(地頭さん)

上がってきた声で多かったのは、画面が小さくて見づらいという意見。また、24時間稼働する性質上、電池の持ちの悪さへの改善も求められた。

意外に多かったのは、形状に対する不満。携帯電話で報告などをしていると「ALSOKの隊員が携帯電話で遊んでいる」と勘違いされ、お叱りの連絡が入ることもあったという。

これらに加えて、暴風雨の中や寒冷地など、過酷な環境で出動する隊員が使用することから、高い防水性、寒冷地でも使用可能な性能、そして、衝撃に耐えられるタフネスさも求められた。

「整理すると、①大きくて見やすい画面②厳しい現場環境に耐える堅牢性③長時間使用が可能なバッテリー④業務用端末らしいスタイルが求められていることが分かりました」と地頭さん。

この条件を満たしていたのが、「TOUGHPAD」「TORQUE G01」だ。この2台を取り扱っていたキャリアはKDDIのみだった。

KDDIに求めたのは「通信環境」と「セキュリティ」

しかし、地頭さんは「KDDIさんと契約を交わしたのは、端末を提供できるという理由だけではありません」と語る。端末の選定と並行して、日本全国で安定した通信環境を提供できること、そして、顧客情報を取り扱うために高いセキュリティも求めたという。

防犯という性質上、セキュリティに関しては特に要求が高かったが、外出先からイントラネットアクセスを可能とするセキュアなリモートアクセスサービス「CPA (Closed Packet Access)」や、遠隔でのロック・初期化実施による情報漏えい対策、端末の利用を制限するセキュリティ機能、各種設定など、スマートデバイスの利用上必要となるさまざまな管理機能を提供できる「KDDI Smart Mobile Safety Manager」などの導入が決め手となった。

通信速度の向上が警備業務の効率化に果たした役割

もう一点、「TOUGHPAD」の導入より大幅に改善したことがある。それが、通信速度の速さだ。au 4G LTE回線を安定して利用できることで、社内ネットワーク内の情報を軽快に閲覧できるようになったのだ。

社内ネットワーク内の情報が見られることで、どんなメリットがあるのか。実は、機械警備の場合は、契約先によって状況報告の方法や内容が異なる。また、室内に入る場合も、契約先ごとに手順を記したマニュアルがある。ATMでトラブルが発生したときは、銀行ごとに対応マニュアルが存在。加えて、ATMは複数の企業が製造しているので、それぞれの取扱説明書も確認しなくてはならない。

これまでは、契約先ごとにルールを覚える必要があり、不明な部分はガードセンターに問い合わせをしていた。電話で不明点を伝えて、マニュアルを参照してもらい、方法を教えてもらう。これは、時間も手間もかかる。しかし、「TOUGHPAD』を使えば、現場でも自分でマニュアル確認が可能。正確性とスピードが向上し、業務効率の改善につながった。

また、携帯電話では文字情報のみだったが、通信速度の向上に伴い、画像の送受信も可能になった。機械警備では現場写真を顧客に送るケースがあるが、携帯電話を使用していたときには、デジカメ撮影した現場写真を、支店に戻りパソコンに移して顧客へと送信するという手間が発生していた。しかし、高速通信が可能なスマートフォンなら、現場で撮影した写真をその場ですぐに支店へ送り、そこから顧客へ転送することで、速やかな状況確認が可能になった。

スマートフォンが"ベテラン"と"新人"の差を埋める

ATMのトラブルでも、知識がない隊員は一度支店に戻り、取扱説明書を持参する必要があったが、「TOUGHPAD」ではその場で社内ネットワーク上に保存されている取扱説明書にアクセスし、画面に表示しながら応対できるようになったという。地頭さんはこれを「新人でも一定のクオリティで業務を遂行できる仕組み」と胸を張る。

かつては現地へ向かうために、地図を頭に叩き込む必要があったが、スマートフォン導入後はグーグルマップストリートビューを使って、事前に契約先の周辺情報を確認し、分かりづらい場所であればメンバーと共有することも可能になった。

隊員にはベテランもいれば新人もいる。ベテランの経験はもちろん大切だが、例え新人だろうと与えられた任務を確実に遂行しなければならない。スマートフォン導入は、警備業務の"効率"だけでなく、その"質"を高めることにも貢献しているのだ。

みんなの安全・安心のために、通信が果たす役割はますます大きくなる

地頭さんによると「今後は、到着後、センサーや分電盤の位置がすぐに確認できるように、契約先のビルや家の図面を端末で確認できるような仕組みも考えている」とのこと。

現在は個人情報保護の観点から、資料のコピーを取って出動し、終了後に破棄しているが、スマートフォンで閲覧できれば業務効率の改善につながる可能性は高い。

また、隊員の行動管理を行うことも視野に入れる。現在は手書きで作成している勤務記録も、GPS機能を利用して自動作成することで、手間を軽減できるという。

さらに先には、スマートフォンのカメラを利用して現場を撮影、ガードセンターなどで状況を随時モニタリングしたり、契約先の防犯カメラで撮影した動画をスマートフォンに送り、事前に確認したりするといった連携も考えている。

2020年の東京オリンピックを控えて、セキュリティサービスに対するニーズは高まるばかり。企業向けから一般家庭向けまで、業務内容も多様化が進んでいる。みんなの安全・安心を守るために、通信のチカラが果たす役割はこれからもますます大きくなっていくに違いない。

文:コージー林田
撮影:稲田 平、竹内一将

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