2017/06/12

メンタルから精子の状態まで(!)、スマホでできる最新セルフチェック・アプリ4選

医療分野でのIT化が進み、応用範囲は病院などの専門機関以外に自宅で個人が手軽に利用できるサービスにまで広がっている。特に注目を集めているのは、病気を予防する"未病対策"のためのソリューションで、先日、東京ビッグサイトで開催された、医療関連のテクノロジーをテーマにした展示会「メドテック ジャパン」では、スマホアプリやウエアラブルを使うサービスやアイデアが複数紹介されていた。

「声」を分析してストレスを測定する「MIMOSYS」

画像提供:PST株式会社

そのひとつ、声の調子からストレスや抑うつ状態を分析する「MIMOSYS」(マインド・モニタリング・システム)は、電話の通話音声を解析して今の心の状態を評価できるAndroidアプリ。職場でのストレスチェックは昨年から義務化が進んでいるが、自分でも日頃から手軽にチェックできるようにすることで、疲れを早めに自覚できるようになるなどの体調管理にも応用できるという。東京大学大学院医学系研究科社会連携講座音声病態分析学講座が技術検証を行っている。

開発を行っているPST社は、声でストレスを評価する技術の研究開発を行っており、東京大学、防衛医科大学校、北原国際病院、神奈川歯科大学と連携して行った実験成果に関する論文も多数発表している。そうした成果を元に開発されたアプリが現在、Google Playから無料でダウンロードできるよう公開されており、誰でも心の状態を計測することができる。

睡眠中の"体を掻く動き"をチェックできる「Itch Tracker」

画像提供:Nestle Skin Health

無料で提供しているiPhone/Apple Watchアプリ「Itch Tracker」(イッチトラッカー)はなかなかユニークだ。寝ているあいだに "体を掻く"という特定の動きをチェックし、身体を掻いている時間を記録するのである。身体のかゆみが引き起こすストレスはQOLを低下させる原因となる。

Itch Trackerによってユーザーは寝ているあいだの身体の動きを客観的に知ることができ、またそこで得られたデータは個人情報が特定できない状態で収調査研究用に利用される。正確な方法がまだ確立されていないかゆみの治療法の開発に役立たせることを目指しているのだ。

開発は食品企業のネスレのグループ会社で、健康、美容関連事業を手掛けるネスレ スキンヘルス・シールド。Apple社がオープンソースで公開している医療研究用アプリのためのフレームワーク「ResearchKit」を利用している。

市販薬や衛生用品をガイドしてくれるアプリ「健こんぱす」

画像提供:Medical Compass Inc.

アプリに表示される質問に答えていくだけで、必要な市販薬やヘルスケア用品をガイドしてくれるアプリ「健こんぱす」は、医師や薬剤師らを中心とした医療従事者たちのチームによって開発され、セルフメディケーションを支援するツールとして、いつでもどこでも健康や治療の不安を軽減できるようにする環境づくりを目指して開発されている。大手製薬メーカーとも協力しながら開発を行っており、6月下旬の配信を予定している。今後、アプリの診断にはマシンラーニングを取り入れて精度を上げるとのことだ。

面倒な手続きの要らない精子チェックキット「Seem」

画像提供:リクルートライフスタイル

女性向けに比べると注目度が低いメンズヘルス関連の製品開発も行われている。独自に開発された専用キットを使用し、スマホで精子の状態が簡単に測定できるサービス「Seem(シーム)」は、病院に行ったり、サンプルを郵送で専門機関に送ったりするという手間をかけず、いつでも手軽に使えるのが最大の特長になっている。

開発を行ったリクルートのグループ会社でホットペッパーなどを発行しているリクルートライフスタイル社によると、精子の状態は日々の生活や環境で変わるため、複数回測定する必要があるため自宅で使えるキットを作成したという。使いやすくデザインされており、ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテストやグッドデザイン賞も受賞し、すでに昨年から販売が始まっている。

スマホが健康に寄り添う一方で、注意点も

こうしたヘルスケア関連アプリが多数登場している背景には、2014年末に施行された「医薬品医療機器等法(薬機法)」でスマホアプリなどの単体ソフトウエアが医療機器として認められるようになったことがある。一方で、安易なヘルスケアをうたって倫理規程違反になるアプリもあり、注意が必要だ。

今回紹介したものも、病気を治療したり診断したりするものではなく、日頃から健康や未病を意識し、関心を持ってもらうことを目的としている。信用できるアプリかどうかの判断基準としては、医療関係者が関連しているかどうかがあげられており、今後ヘルスケアアプリを使用する際にはその点をきちんとチェックするといいだろう。

文:野々下裕子