2017/01/17

平均1.8分で専門家につながる、テキスト版『いのちの電話』がアメリカの若者を救う

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2013年、ニューヨーク市に設立された非営利組織、クライシス・テキスト・ライン(Crisis Text Line)は、主に十代の若者たちのための活動を行っている。

クライシス(crisis)には、「危機」「難局」といった意味のほかに、「転機」とか「岐路」、または「重大な局面」という意味もある。困難な状況に陥っている若者が、テキストメッセージで助けを求めることができる。741741に、テキストメッセージで「START」という文章を送ると、24時間365日、専門のカウンセラーが対応してくれるというもの。危機(crisis)の内容は限定されておらず、どのような状況であっても相談できる。

助けを求める1人の少女からのメッセージが誕生のきっかけに

クライシス・テキスト・ラインが生まれるきっかけとなったのは、2011年に、ニューヨーク市の非営利団体、DoSomething.orgにいたStephanie Shihという若い女性のつらい経験だ。当時、同団体は若者に社会活動への参加を促し、あるいは環境問題に関心を持ってもらうように、テキストメッセージをティーンエイジャーたちに送出していた。

そこへ、知人から連続的な性暴力被害を受けているという少女から、助けを求めるメッセージが届いた。Shih氏が加害者について尋ねると、翌朝、自分の父親であることを打ち明けるメッセージが届いたという。当時のDoSomething.orgには、こうした場合の対処に関する決まりがなく、Shih氏は別の民間組織の連絡先を伝えることしかできなかった。このつらい経験は、DoSomething.orgのCEO、Nancy Lublinに伝えられ、2年後にクライシス・テキスト・ラインが設立された。

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米大手通信事業者もメッセージ送信無料化で支援

クライシス・テキスト・ラインは、さまざまな企業、組織、政府機関と提携している。最近では、鉄道での自殺を避けることを目的として、カリフォルニア州の鉄道、Caltrainとのパートナーシップが発表されている。11月下旬から駅や列車内にポスターを掲示し、悩みのある若者に対して741741にメッセージを送るよう呼びかけているという。Verizon、AT&T、T-Mobile、Sprintといった米大手通信会社は、クライシス・テキスト・ライン「741741」へのメッセージ送信を無償化して支援しており、請求書にはプライバシー保護のため番号が表示されない。

約2,900万件のメッセージを受信

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「START」の代わりに「BAY」というメッセージを送ると、自動的に「なにかあったの?(What's on your mind?)」という返事がすぐに届く。これに対する返事のなかに、「死にたい」とか「自殺したい」といった言葉があれば、すぐに全米各地にいるカウンセラーとのマッチングが行われ、平均して1.8分以内にカウンセラーが直接対応を始めるという。

電話を使ったいわゆるホットラインのサービス(日本でいう「いのちの電話」)もあるが、ティーンエイジャーにはテキストのやりとりの方が楽なケースが多いのだそうだ。電話で悩みを声に出すとなると、周囲の目が気になるのは確かだろう。相談者は主に口コミで知った若者で、2013年8月の開設以来、約2,900万件のメッセージが送信されている。

クライシス・テキスト・ラインのウェブサイトでは、これまでに寄せられたメッセージに関する統計が公開されている。「自殺意図」「自傷」「性的被害」「健康問題」「友人関係」「摂食障害」など、危機の種類別に、曜日別、時間帯別のメッセージ件数、州別のランキング、時系列での増減を見ることができる。

「自殺意図」の州別メッセージ数ランキング(写真提供: www.crisistrends.org. Crisis Text Line, Janu-ary 2017. Web. <2017.1.10>.)

また、アメリカ以外の国でも同様のサービスを提供したい組織に対して、クライシス・テキスト・ラインのインフラ提供を始めている。

文:幸野百太郎

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