2017/01/05

【世界のドローン50】昆虫がヒント カーボンナノファイバーで包まれた探索のためのドローン

写真提供:Flyability

これまでのドローンは空撮や飛ばすことをメインに市場を伸ばしてきたが、これからは大きく「宅配・輸送」、「パーソナルな移動手段」、「ライブパフォーマンス」、「消防活動」、「探索・救急救命」の5分野での活用が期待されている。なかでも、自然災害の多い日本で期待したいのが「探索・救急救命」での活用である。

球体のワイヤーが機体を守りながら、被災者を探索

スイスのFlyability社が開発した「ELIOS」は、まさしく「探索・救急救命」のために開発された世界初の商業用ドローンで、クワッド式ローター型の機体の周りを、カーボンナノファイバーで作られた直径約40cmのメッシュ状ワイヤーが、全体を保護するショックアブソーバー(振動する機械や建築物の振動を吸収する装置)の役割を果たし、障害物にぶつかってもすぐに姿勢を戻して飛び続けられるよう設計されている。

姿勢維持には、ジャイロ機能を使った宇宙ゴマの原理が用いられていて、カメラが常に地面と平行する位置に固定されるようにすることで、遭難者や被災者をくまなく探し出すことができる。搭載されたHDおよびサーモ探知カメラは、上下に180度角度が変えられ、映像はほぼリアルタイムで見られるほか、内蔵のUSBに記録しておける。

写真提供:Flyability

強力なLEDライトで周囲を明るく照らし出し、見えにくい場所にいる人を探し出すのはもちろん、救助の際に障害になるものや、被災者を傷つけるものがないかを事前に確認することもできる。1回あたりの飛行時間は約10分とやや短いものの、バッテリー交換は10秒でできるほど簡単で、充電もたった1時間でできるようにしている。

写真提供:Flyability

特にコントロールが簡単で、タブレットの画面かラジコンのようなコントローラーを使って細やかな操作ができる。万が一落下させたり、建物にぶつかったり、人に当たってもお互い傷つくことがないので、初心者でも安心して飛ばせるという。5km以上の離れたところでも操作できるのは、ほかにはない機能だといえる。

紹介動画では雪深い山で遭難者を探すため、狭く深いクレバスの中を雪面にぶつかりながらもすいすいと飛んでいくところや、狭い配管だらけの建物の中を難なく移動する姿が紹介されている。ビルの外壁や橋りょう、トンネル、マンホールなど、人が検査するのが難しい場所を調べるのにも活用でき、コストバランスも追求しているとFlyability社は説明する。

ヒントはなんと、昆虫

CEO のPatrick Thevozによると、ELIOSザインのアイデアは、障害物にぶつかったり、風に流されたりしても姿勢をコントロールしながら飛び続ける昆虫をヒントにしているとのこと。開発は5年をかけ、7つのプロトタイプを50の実証実験で検証し、コストバランスも追求したうえで、現在の形にたどり着いたそうだ。DJI社と協力関係を結んでトランスミッション部分を改良するなど性能アップを続けており、発表早々に大手石油メーカーのガスタンクを内部検査する契約も結ぶなどの実績を上げている。

写真提供:Flyability

ただし、同様の機能を持つドローンはこれからも登場しそうで、ELIOSに関しては耐久温度もマイナス10度から35度までと、やや心もとないところがある。今後、軽量化や小型化、飛行時間の延長なども含めて課題がクリアできれば、多くの救援現場で採用されるようになるかもしれない。

スペック

ELIOS

サイズ:直径 400mm
重量:700g
飛行速度:ノーマルモード 秒速3m、ハイスピードモード 秒速7m
飛行時間:約10分
操作距離:5km以上

文:野々下裕子

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