TS 文化部

2017/08/03

生肉や長い爪もモチーフに!? 「シュールだけどカワイイ」話題のアーティスト「とんだ林蘭」の創作ワールド

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いまどきのネットを騒がせている女性たちを紹介する「ネット系女子!」。23回目はアーティストのとんだ林蘭(とんだばやし・らん)さん。

彼女はコラージュやイラスト、ペインティングなど、さまざまな手法を用いた作品をInstagramで発表。生肉やリップなど、ちょっと毒っ気のある作品が「カワイイ!」と若い女性を中心に絶大な支持を集め、今やフォロワーは4万人以上。木村カエラや東京スカパラダイスオーケストラなどのミュージシャン、またファッションブランドへの作品提供も行い、今年4月にはラフォーレ原宿に自身初のポップアップショップも出店。SNSの枠を飛び越え、多方面で活躍しています。

鋭くもキュートな作品のアイディアは、一体どうやって生み出されているのでしょうか? とんだ林さんに直接うかがってみました。

「フワッとした状態から、一気にスイッチが入った」

――アーティストとして活動を始めるまでのいきさつを教えてください。

「もともとファッションが好きで、高校から服飾専門学校に進学して、卒業後はアパレル関係の仕事に就職しました。仕事は楽しかったしやりがいもありましたが、そこでずっと働いている自分がイメージできなくて。『子どもの頃思い描いていた大人って、もっと楽しかったハズ』って。それで、とりあえず仕事を辞めてなにかにチャレンジしてみようと、ひとりで燃えてたんです

同じ頃、浅草にあるちょっと変わった服屋さんによく遊びに行っていて。服ももちろん販売しているんですが、楽器が置いてあるので仲間うちでライブのリハーサルをしたり、トランプをして遊んだりと、放課後の部室みたいな雰囲気なんです(笑)。そこで落書きをしていたら、常連さんに『イラストレーターになったら?』って言われて。そのひと言がきっかけでスイッチが入って、絵に取り組むようになりました」

とんだ林さんの線画作品

――芸術の道に進むのに不安はありませんでしたか。

「美大に通っていたわけでもありませんし、不安もありました。でも、それまでの『なにができるかわからない』というフワフワした苦しさから抜け出せたので、夢中で頑張れました。『やっとやりたいことが見つかった』という感じでしたね」

絵の具を使った作品

――個性的な名前ですが、由来は。

「絵を本格的にやろうと決めたときにペンネームが欲しくて、以前から交流のあったレキシの池ちゃん(池田貴史)に名付けてもらいました。当時はいくつか候補をあげてくれたなかで、『まあこれでいいかな』くらいの感覚で選んだんですけど、『覚えやすいし、テンポがいいよね!』と言ってくださる方もいるので、今はこの名前で良かったなって思います(笑)」

モチーフがシュールでも、感情はクリア

――とんだ林さんといえばコラージュ作品もよく知られていますが、こちらをつくり始めたきっかけは?

「最初は絵の具やペンなどを使って、イチから描く作品だけでしたが、それとは別の頭の使い方をして作品をつくってみたいと思い始めて。ちょうど知り合いが雑誌を大量に廃棄するということで、『じゃあ、もらってなにかつくろうかな』と。結果として表現の幅がぐんと広がったので、挑戦してみて良かったです」

――1作品をつくるのに、どれくらいの時間がかかるのでしょう。

Instagramにアップしているものは、1〜2時間くらいかな。最初は紙を切って貼って写真を撮って、という感じでしたが、今はPhotoshopを使っています。その日気になったモチーフのパーツを感覚的に組み合わせている感じ。最初から完成形が浮かんでいるわけではなく、つくっていくうちに見えてくるんです」

――よく使うモチーフはありますか?

リップとか、お花、食べ物や生肉はずっと好きなモチーフです。でも、その時々でなにを使うかは変わりますね。今は長い爪や手、インテリアがマイブーム。意識的に使っているわけではなく、あとから作品を見返して、『あ、私は今これにハマってるんだな』って気づきます」

生肉の写真をふんだんに使ったコラージュ作品

――ちょっと変わったものが好きなんですね。

「自分では意識してそうしようとは思っていないんですけどね。まあでも、今思い返すと小さい頃から周りの人に『(性格が)シュールだよね』って言われることは多かったです。怖い話とか、お化けとか好きでしたし。絵本だったり歌だったり、食に関することが描かれているものにも強く惹かれていました」

――作品を通して伝えたいメッセージなどはありますか。

そういうものは特にないですね。私は自分の感情を言葉で表すことが苦手だから、絵やコラージュなどの作品にして表現しているだけなんです。普通に歩いていて空や花がきれいだなって思ったとき、素直な人はそのまま表現できるけど、私はそのまま伝えるのはなんとなく恥ずかしい。フィルターを通して人に見せることで、やっと伝えることができるんです。だから、モチーフは少しグロテスクかもしれませんが、感じていることの根本は普通の人と変わらないと思っています

SNSに作品をアップするのは「自分に発破をかけるため」

――ほぼ毎日Instagramに作品をアップし続けていますよね。

基本的に、Instagramは作品帳として使ってます。私は毎日作品を作っていないと焦ってしまうので、自分の創作意欲を絶やさないために日々アップしている部分もあると思います。作った作品をどんどん発表したいという大量生産型の自分に合っていたんでしょうね。あと、使い始めた頃はまだ全然お仕事をいただいていない時期だったので、仕事につながればいいな、という気持ちもありました」

――最初にもらったお仕事はなんでしたか?

「知り合いのギタリストの方がTwitterにアップした私の作品を見て、ライブのフライヤーを作成してほしい、アー写をコラージュでつくってほしいという依頼がいちばん最初のお仕事です。それから、その方づてで木村カエラさんが私の Instagram を知ってくださったようで、 木村カエラさんからオフィシャルグッズのお仕事のお話をいただきました」

―― 一般の方も、Instagramがきっかけでとんだ林さんを知る方が多そうですよね。

「実際、展示などで『Instagramを見てきました』という方はたくさんいます。多分、普通に暮らしていてどこかで私の作品を見たことがあっても、誰の作品か調べるまではあんまりしないんじゃないかな。でも、Instagramはどんな人がなにをやっているかわかるので、作品だけじゃなく名前も覚えてもらえるのかな、と。でも私としては、たとえ名前を知ってもらえていなくても、私の作品を見て『あ、いいな』って思ってくれるだけで十分嬉しいです

「いつも画面を割っちゃうので、もう直さないことにしています」

――Instagramに写真をアップする際に使う加工アプリはありますか?

「『Instaflash Pro』をよく使います。有料ですけど、暗い写真を明るくできたり、細かく加工や調整できたりとすごく便利ですよ」

とんだ林さんのスマホのホーム画面。「壁紙は私の先輩です。これにしてから、なぜかいいことが続くんです(笑)」

創作を続けるコツは「毎日を楽しく過ごすこと」

――創作意欲を絶やさないコツはありますか。

「日常を元気に、穏やかに過ごすこと(笑)。基本的に作品は元気がないとつくれないので、自分がやりたいことをして、好きなように時間を過ごしています。楽しくない日って、あんまりないです」

――今、やってみたいことは?

実は最初に絵を始めたときは、漫画家になろうと思っていたんです。だからペンネームも考えてもらったんですよ。でも漫画を描くのって本当に難しくて制作がストップしていたので、また描き始めたいです。最近、飲み屋巡りにハマっているので、その様子を絵と文で綴るエッセイみたいなのもいいですね。制作したら、またどこかで発表したいと思います」

「昔の作品は、見返したくないんです。常に新しいものをつくり続けていたい」と語るとんだ林さん。ほぼ毎日更新されるInstagramは、彼女が進化を続けることを表す軌跡なのかもしれません。この記事に掲載した作品はほんの一部。明日もまた更新されるであろう作品は、一体どんな世界を見せてくれるのでしょう?

文:服部桃子(アート・サプライ)
撮影:有坂政晴(STUH)

とんだ林 蘭(とんだばやし・らん)

1987年生まれ、東京を拠点に活動。コラージュ、イラスト、ぺインティングを中心に幅広い手法を用いて作品を制作。猟奇的で可愛らしい刺激的なビジュアルは、幅広い層のファンを持つとともに、名付け親である池田貴史(レキシ)をはじめ、音楽アーティストやファッションブランドからも高く評価されている。

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