2016/04/22

| 更新

2018/05/25

【おもいでタイムライン】第5回:1999〜1997年、手のひらからIT革命

まだオフィスには個人用のパソコンもなく、あるのは電卓と電話、というのが当たり前だった時代の光景
KDD(国際電信電話株式会社)1985年社内報より

日本で初めての携帯電話「ショルダーホン」が発売されてから、約30年が過ぎました。そして携帯電話の進化と同時に、私たちのコミュニケーションも大きく変化してきました。携帯電話の歴史は、コミュニケーションの変遷の歴史でもあるんです。

では、一体どんな風に変化してきたのでしょう?

連載の第5回は1999〜1997年までさかのぼってみましょう。

「IT革命」という言葉が使われはじめたのは1990年代の初め頃から。バブル期につくられた日本映画やドラマの再放送を見て、ちょっと違和感を覚えませんか? 街の風景によく知ったランドマークやおなじみの商業施設がなかったり、クルマやファッションが古くさかったりということもあるのですが、なによりもオフィスのデスクにパソコンがない。電話(これも微妙に古い)と書類の入ったファイルとボールペンしかなくて、妙にツルッとした印象を受けたりも。

この頃から電子メール(eメール)が登場し、企業が「ホームページ」を制作して自社のサービスやデータを公開するようになり、ビジネスマンも少しずつコンピュータを仕事に取り入れるようになりました。

「IT革命」自体は、この時期から起こりつつあったのですが、流行語大賞を受賞するのは2000年のこと。そこで世間一般に幅広く認知されるようになりました。1999年に登場した、携帯電話のある機能がきっかけといってもいいでしょう。それにより人々のコミュニケーションが一変した機能――そう、携帯電話のインターネット接続サービスのスタートです。ビジネスの世界ではすでに起こっていたIT革命が、生活の中に、わたしたちの手のひらの中にもたらされたのがこの時代だったのです。

誕生して間もない頃の、携帯電話のインターネット接続サービスは、さまざまな制約があったものの、生活に大きな変化を生み出したものでした。今回はそこのところを振り返ってみましょう。

携帯電話からメールが送れるようになって変わったこと。

この時代の携帯電話・スマホは?
「506G」(1997年発売)
→このケータイの「auケータイ図鑑」ページへ

この時期、携帯電話は「文字」というコミュニケーションツールを手に入れました。最初は97年、同じキャリア間だけでやり取りできるショートメッセージサービスのみでした。当時、IDO(日本移動通信)が提供していたのは「プチメール」。月額利用料なしで、メール送信1回1円(契約によっては5円)という設定で、最大128文字まで送受信可能。"最大"というのは、半角文字の場合で、全角だと半分の64文字が限界。情報をたくさん送りたい時には、半角で書くというつましい努力をしたものです。メールには送信者の電話番号が記録されるので、本文中に自分の名前を書かなくても誰からのメールであるかは、一応は分かるようになっていました。

文字数制限は今のSMSにもありますが、決定的に違うのが、"受話できる状態じゃないと届かない"という点。電源が入っていなかったり圏外の場合、こちらのメールは一切届きませんでした。だから「メール」とはいえ、通話に近いかたち。あと、携帯電話会社が違うと送れないという制約がありながら、どうしても送りたいときはポケベルとおなじ「文字コード表」に則って数字と記号でトーン入力する、というめんどうなやり方もありましたね。

(左)EZweb、(右)iモードのロゴ
※「i-mode」ロゴは、株式会社NTTドコモの登録商標です

若者たちのコミュニケーションツールとしてはこれでも十分人気だったわけですが、革新的だったのは、99年のiモード、EZweb、J-skyの登場です。これ以降、携帯電話でもいわゆるPC間で行っていた「eメール」の送受信が可能になったわけです。パソコンともやり取りできるし、128文字どころではない長い文章も受け取ることができるようになりました。

今では想像もできませんが、「メールチェックしに会社に帰る」あるいは「メールチェックしに休日出勤」みたいなことが、当時は結構あったんです。

仕事上のメールを確認したり返信したりするために、わざわざオフィスに出向いてパソコンを立ち上げたり……。だからその頃は、eメールといっても、要件を送信して返信をもらうのに1、2日を要するなんてこともありました。携帯電話のネット接続は、ビジネスのスピードも飛躍的にアップさせたというわけです。……まぁ、逆にいうと、どこにいても対応せざるをえなくなってしまったわけですけどね。

手のひらからインターネット!

この時代の携帯電話・スマホは?
「C201H」(1999年発売)
→このケータイの「auケータイ図鑑」ページへ

1997年頃、はじめてPCからインターネットに接続したとき、荒波にもまれながらもなんとか乗りこなしていくのはとてもエキサイティングでした。まだダイヤルアップ接続で、ネットにつなぐのにパソコンから「ピポパポ」とダイヤルしたものです。で、当時のネットタイムといえば、時間限定でつなぎ放題の深夜から早朝まで。海外のショッピングモールとか、通販とか、映画会社などなど、回線の向こう側に無限に広がる世界に夢中になる人が続出したのもこの頃。

それが、手のひらの携帯電話で自由に操れようになったんですから! 携帯電話のインターネット接続によってもたらされたもうひとつの恩恵は、「携帯電話でインターネットコンテンツが見られる」ことでした。

もちろん、当初はPCほどの自由度はありませんでした。
「ニュース」や「着メロ」、「待ち受け」みたいに、あらかじめ決められたメニューから番号で選んで深い階層に入っていき、決められたなかで気になるコンテンツにアクセスしていたものでした。携帯電話特有の縦長で簡素化された表示に戸惑ったPCユーザーもいましましたが、携帯電話を自分好みで、自分がもっとも使いやすいかたちにカスタマイズできるようになったのがこの時代。

ほんの少し前までは、がんばって4和音とかをテンキー入力でつくっていた着メロが、はるかにグレードの高い音質でダウンロードできるようにもなったし、ディスプレイに表示するための画像もネットからどんどん落とせるようになりました。

それだけではなく、天気予報に電車の乗り継ぎ、ネットバンキングまで、つねに持ち歩いているデバイスだからこそ役に立つ、さまざまな「携帯電話専用ウェブサイト」も生まれました。

なにかにつけて「IT」「デジタル」といった単語が世の中に溢れはじめ、ペットがIT化し、犬型エンタテインメントロボットが人気を集めたり、端末のディスプレイの中だけで存在する液晶画面の小動物たちが人気を集めたり、携帯電話に限らず、身近な話題に変革が訪れたのもこの頃の特徴でした。

あ、そうそう携帯電話の番号が、11桁になったのもここからでしたね。

文:T&S編集部

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。