2022/10/20

日本で唯一の海外向け短波放送を担う「KDDI八俣送信所」

世界的に無線通信が発展するなか、日本では1940年に、海外放送専用の送信所として八俣送信所が開設された。現在も「KDDI八俣送信所」の名称で、日本で唯一の海外向け短波放送を送信している。

KDDI八俣送信所

日本の裏側のブラジルをはじめ、南極の昭和基地まで、世界各地に短波によるラジオ国際放送(NHKワールド・ラジオ日本)を送信している「KDDI八俣送信所」。開設から80年以上が経ったいまも、短波放送を世界各地へ送り続ける意義について、「KDDI八俣送信所」の堀江 孝マネージャーに話を聞いた。

KDDI技術統括本部 八俣送信所マネージャー 堀江 孝

「1940年に開設された『八俣送信所』は、戦時中も大きな被害を受けることなく、海外に向けて短波放送を送信してきました。2008年頃までは高校野球や紅白歌合戦、平和記念式典などを世界に向けて時間を延長して送信することもあり、ブラジルなど日系人が多い国などでは、非常に好評だったそうです」

短波放送は衛星放送やインターネットと異なり、通信衛星や海底ケーブルなどの大がかりな設備が不要。聴取者は受信できる短波ラジオさえあれば、誰でも海外で情報を受信できるという大きなメリットがある。

また、電話やインターネットが世界中に普及しているが、大規模な自然災害や政情不安などの有事の際には、通信が途絶する可能性がある。そうした場合でも短波で情報を発信することで、世界中に正しい情報を伝えることができる。

有事の際の短波放送のイメージ

「1990年の湾岸戦争では現地の通信が遮断されてしまったため、残留邦人は正確な情報を得ることができませんでした。そこで残留邦人に向けて有事放送を送信しましたが、現地にいる人にとっては、日本から届く唯一の情報源が、この短波放送だったのです」

中継施設などの必要がない短波放送は、有事の際も情報を送ることができる。

「大規模災害があっても、内乱や戦争があっても、八俣送信所が存在する限りは短波放送で情報を発信できます。だからこそ、外務省は海外渡航者に短波ラジオを携帯するよう、アナウンスを行っているのです」と、堀江は語る。

KDDI技術統括本部 八俣送信所マネージャー 堀江 孝

一方で、世界的に見ても短波は縮小傾向にある。国際通信を行うのであれば大容量の光海底ケーブルや通信衛星を使えばよく、経済性から見ると短波は非効率であるためだ。

「非効率だからと短波放送をなくしてしまうと、湾岸戦争のときのように非常時に日本から海外に情報発信ができなくなる可能性があるため、私たちは短波放送の送信を“国家的利益”と考えています。普段の生活では聴くことは少ない短波放送ですが、日本の危機管理という面では今も大きな役割を担っているのです」

設立から80年以上が経つ「KDDI八俣送信所」は、今日も休むことなく短波放送を使って日本の情報を世界に向けて送信し続けている。

※この記事は2021年9月29日の記事(https://time-space.kddi.com/au-kddi/20210929/3183)を再編集したものです。

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