2022/09/30

富士山頂に住む写真家・植田めぐみさんに聞いた、山頂から毎日情報を発信する理由

日本の最高峰、「富士山」。その美しい姿で多くの人を惹き付けるこの山は、登山対象としても人気が高い。7月上旬から9月上旬までの開山期間中、登山道や山頂は多くの登山者で賑わう。

そんな富士山に魅了され、毎年夏は富士山頂で暮らす女性がいる。写真家の植田めぐみさんだ。

写真家の植田めぐみさん 植田めぐみさん/1977年生まれ。静岡県吉田町出身。写真家として活動するほか、SUPや釣りなどアウトドアアクティビティのインストラクターとしても活躍

学生時代にスノーボードにのめり込み、スノーボード専門の写真家としてキャリアをスタートした植田さん。約10年前に富士山の魅力に取り憑かれて以来、夏は富士山で暮らしながら写真を撮り、ブログ「富士山に住むカメラ女子」やFacebook、Twitterで現地の情報を発信している。

植田さんが富士山に惹かれるのはなぜか?富士山頂ではどのような暮らしを送っているのか?そして日々情報を発信する理由とは?山頂を訪れ、本人に話を聞いた。

夏の2カ月間は一度も下山せず、山頂に滞在

――植田さんが富士山に惹かれたきっかけを教えてください。

写真家の植田めぐみさん

植田:私は静岡県出身で、子どもの頃から富士山は身近な存在でした。でも、初めて登ったのは大人になってから。知り合いから「富士山頂からの景色は素晴らしいから、一度は見たほうがいいよ」と強く勧められて。せっかく富士山に登るなら写真を撮りたい、そしてできれば山頂に長期滞在してじっくり写真を撮りたいと考えた私は、2010年の夏の開山期間に山頂の山小屋でアルバイトとして働くことにしたんです。初めて山頂からご来光を見たときの感動は忘れられません。

富士山頂から見たご来光 富士山頂から見たご来光(撮影:植田めぐみさん)

それから5年間、夏は山頂の山小屋で働き、その後2015年と2016年は富士山御殿場口五合目のトレイルステーションに勤めました。2017年から再び山頂に戻り、毎年夏は富士山頂上浅間大社奥宮に住み込みで働いています。

富士山頂上浅間大社奥宮 富士山頂上浅間大社奥宮

――植田さんは夏のあいだ、富士山頂上浅間大社奥宮でどのような仕事をして、どのような暮らしを送っていますか?

植田:私の担当は、神主さんをはじめとする神社関係者の方々の山頂での暮らしのお手伝いをすることで、主に朝昼晩の食事の用意をしています。それ以外の時間は基本的にフリータイム。写真を撮ったり、富士山の情報をブログやSNSで発信したり。開山期間の2カ月間は基本的に一度も下山せず、ずっと山頂に滞在しています。

富士山頂からの景色は飽きることがない

――富士山頂では日々どのような写真を撮っていますか?

植田:風景写真ばかり撮影しています。「ずっと山頂にいて飽きないの?」と聞かれることもありますが、まったく飽きることがないんですよ。

山の天気は変わりやすいと言いますよね。とりわけ富士山頂は変化のスピードが速く、雲の流れ方や太陽の光の差し方が目まぐるしく変わります。同じ景色は二度と見ることができないので、一瞬たりとも見逃せません。そんな変わりゆく景色こそ、私が考える富士山のいちばんの魅力です。

富士山頂から見た影富士 雲海に富士山の姿が映し出される「影富士」(撮影:植田めぐみさん)
富士山頂から見た吊るし雲 標高の高い山にしか発生しない「吊るし雲」(撮影:植田めぐみさん)
富士山頂から見た星空 夜は星空がきれいに見えることも(撮影:植田めぐみさん)

ブログやSNSで山頂から情報を日々発信

――植田さんは富士山の情報を日々ブログやSNSで発信していますよね。それはどういった思いからでしょうか?

写真家の植田めぐみさん

植田:富士山頂に長期滞在していて強く感じるのが、安全な登山のための正しい情報が登山者へ十分に届いていないのではないか、ということ。

麓と山頂では天候も気温もまったく違いますし、標高を上げると高山病にかかるリスクもあります。そんな基本的なことすら知らないまま富士山に登ろうとする人は、残念ながら少なくありません。雨具や防寒具を持たずに山頂で震えている登山者をこれまで何度見てきたことか。

富士山というと、ご来光や雲海などの絶景をイメージする人が多いと思います。ただ、それは富士山の一面に過ぎません。富士山は日本一高い山であり、自然環境は極めて過酷。特に山頂は天気が荒れがちで、ときには暴風雨に見舞われることも。絶景を拝めると思ってせっかく山頂まで登ったのに真っ白でなにも見えなかった……とがっかりする人が少なくないのも現実です。

富士登山を安全に楽しんでもらうために、現場のリアルな情報をひとりでも多くの人に共有したい。そして富士山の本当の魅力を知ってもらいたい。そんな思いで私はここ富士山頂から日々情報を発信しています。

登山を安全に楽しむためにスマホは不可欠

――写真撮影や情報発信にはどのような機器を活用していますか?

写真家の植田めぐみさん

植田:写真は主に一眼レフカメラで撮影し、情報発信にはスマホを活用しています。PCも持ってきていますが、情報発信にはスマホのほうが手軽でスピーディです。最近は富士山をはじめとする山でスマホがつながりやすくなり、とても便利になりました。1日2、3回、富士山頂の景色や天候をブログやSNSに投稿しています。

スマホは情報発信だけでなく、家族や友達との連絡手段としても重宝しています。2カ月間も富士山頂に滞在して、ホームシックにならずに済んでいるのは、スマホのおかげかも(笑)。

――ここ数年で富士山におけるスマホの通信環境は変わりましたか?

写真家の植田めぐみさん

植田:年々良くなってきていると感じます。仕事のオンラインミーティングも富士山頂からできるようになりました。技術の進化に感謝ですね。

登山者のみなさんにも、スマホをうまく活用してほしいと思います。たとえば、美しいご来光に出会うことができたら、その感動をSNSなどで家族や友達と分かち合いたいと思いますよね。山頂や登山道でスマホが使えることで、それがリアルタイムで可能になります。また、富士山は山頂や登山口が複数あるため、登山中に仲間とはぐれてしまうケースも。そんなときに連絡を取り合う手段としてもスマホは不可欠です。

私自身、富士山に限らず、山に登る際は山頂や登山道の電波状況を事前にチェックするようにしています。どこでつながりやすく、どこでつながりづらいかがわかれば、安心して山を楽しめますから。

昔ながらの山好きのなかには「山でスマホに頼る必要があるのか?」と訝しがる方もいるかもしれません。でも、山で遭難者が発生した際にスマホが救助に役立てられ、命を救っているのは事実であり、安全な登山のためにスマホが重要な役割を果たしていることは間違いないと思います。

――最後に、登山者に向けてアドバイスをお願いします。

植田:山に登るときは、雨具や防寒具のほか、モバイルバッテリーを必ず携帯しましょう。スマホの充電用です。

モバイルバッテリー

スマホはバッテリーが切れてしまうと用をなしません。山で絶景に出会うと、写真を撮りたくなるもの。写真をたくさん撮るとスマホのバッテリーはどんどん減っていきますし、富士山頂のような気温が低い場所ではバッテリーの持ちは悪くなります。小型のもので構いませんので、登山の際はモバイルバッテリーをバックパックに入れておくことをおすすめします。

auは百名山の電波対策を強化中

KDDIは2009年より、スマホの利用が多く見込まれる富士山の開山期間にあわせて、登山道や山頂にauの電波を届ける取り組みを行ってきた。2021年からは山頂にau 5Gを整備するなど、その取り組みを強化している。

富士山の山小屋に貼られたauのステッカー 山小屋に貼られたステッカーが、auがつながる目印
富士山頂の剣ヶ峰
富士山頂の剣ヶ峰 日本最高地点の剣ヶ峰(標高3,776m)を含む富士山頂でau 5Gがつながる

つなげる取り組みを進めている山は富士山だけでない。KDDIは、全国の日本百名山をはじめとする人気の山の登山道や山小屋において、auの電波を届ける取り組みを続けている。

なぜKDDIは山での電波対策に力を入れるのか。山に電波を届ける舞台裏とは。日本百名山をはじめとする山での電波対策の推進/計画に携わったKDDIエンジニアリングの丹 貴幸は次のように語る。

「登山人気が高まるなか、遭難などの事故も発生しています。お客さまが、山でスマホやケータイが使えなければ、緊急時に仲間と連絡を取ることも救助を要請することもできず、場合によっては命に関わります。登山を安全に楽しむうえでスマホやケータイは不可欠であり、通信会社であるKDDIが山での電波対策に力を入れるのは、登山の安全性を高めるためにほかなりません。

山での電波対策は都市部とは大きく異なり、一筋縄ではいきません。電源や通信回線の確保が難しかったり、地形的に電波が届きづらかったり、その山の特性に応じた対策が求められます。事前の調査や電波測定のために現地を訪れる必要もあり、何度も山に登るため、体力も欠かせません。

KDDIの電波調査 山での電波測定の様子。西穂高岳直下の西穂山荘にて

時間をかけて取り組みを続けてきた結果、日本百名山の多くの山に電波を届けることができました。電波対策に終わりはありません。現在担当する東北地区でもつなげる努力を続けていきたいと思います」(KDDIエンジニアリング 東日本運用本部 東日本支社 丹 貴幸)

auのサイトでは、登山アプリのYAMAP監修のもと、日本全国の百名山の電波状況を確認できる詳細な登山地図を提供している。どこの山のどの登山道でauが使えるのか、詳しく確認することが可能だ。

auの富士山登山地図 auが提供している登山地図。つながる登山道やスポットがひと目でわかる
au携帯電話がご利用いただける登山道 auのサイトでは日本全国の百名山の電波状況が確認可能

山に出かける際は、下記のサイトにアクセスし、その山の登山道の電波状況を事前にチェックしたうえで、スマホを上手に活用して安全に登山を楽しんでほしい。

文:TIME&SPACE編集部

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