2022/09/12
「完全キャッシュレス学園祭」開催!au PAYでの支払いを通じて生徒たちが学んだこと
2022年6月11日、12日に日本でも類を見ない “完全キャッシュレス学園祭”が開催された。静岡県三島市の日本大学三島高等学校・中学校(以下、日大三島高校)の「桜陵祭」だ。
2020年度より文科省を中心に、生徒1人に1台の情報端末を配付し、教育ICT環境を整備しようという「GIGAスクール構想」を推進。先進的なICTの活用で知られる日大三島高校では2016年から全生徒がiPadを持ち、教科書の電子化やオンライン授業での活用だけでなく、生徒が独自にアプリをインストールできるなど柔軟な運用を行っている。
今回の桜陵祭では、クラスごとに飲食物を販売する「パーラー」と、地元で人気の飲食店に生徒たち自身が出店交渉し、自分たちで模擬店を運営する地域活性化プロジェクト「フードフェスティバル」を合わせ約40店舗が並んだが、すべて「au PAY」での完全キャッシュレス決済に踏み切った。なお、今回はアプリでQRコードを読み取るコード支払での運用だ。
生徒たちの発案で実現したという、この“完全キャッシュレス学園祭”はどんな経緯で生まれ、どんな目的があるのか。学園祭の現場を取材し、生徒と先生、そしてKDDIの担当者にキャッシュレス決済が教育の現場にもたらす可能性について話を聞いた。
「安全、正確、スムーズ」なお金の管理を目指して
「桜陵祭」はそもそも生徒が中心となって企画・立案し、運営を行っている。生徒会長・副会長と各クラスの学級委員、学園祭実行委員が担当の先生たちと協議してつくりあげているという。コロナ禍で2020年は中止。2021年は学外の観客を招かずに行われた。2020年以降、日大三島高校では完全なかたちでの学園祭は実現していなかったという。
では今回、どのような経緯で「キャッシュレス学園祭」が実現したのか、日本大学三島高校生徒会長の鳥澤佳史さんと、学級委員長の二宮稜斗さんに聞いた。
「自分は中学から日大三島で、かつての桜陵祭の盛り上がりを体験していたので、今年は一般のお客さんにも来ていただける学園祭をやりたかったんです。僕たちの希望をまず先生に伝え、それを実現するための課題をみんなで洗い出し、どう解決するかということを考えました。
最大の懸念は感染拡大です。学園祭独自のガイドラインを設定し、“対面型の非接触”というテーマを打ち出しました。お客さんとは対面するけれど、基本非接触。そして、その時間を極力短くするには……と考えて、キャッシュレス決済というアイデアにたどり着きました」(鳥澤さん)
「桜陵祭の目玉のひとつは、僕たち3年生が地域の飲食店と協力出店させていただく『フードフェスティバル』です。自分たちでお店と交渉し、価格や個数も相談して決め、自分たちで販売するというもので、生徒会では学園祭終了後にすべての店舗の売り上げを集計します。いわば自分たちのお店のようなものですから、お金の管理も自分たちでやりたいんです。
でも去年は販売個数と売り上げが合わずに何度も計算し直したりと、集計がすごく大変でした。お店での販売の際には現金でおつりを準備する必要がありますし、貯まった売り上げはその都度、先生に預けるという仕組みもあり、とにかく煩雑だったんです。キャッシュレス決済なら、安全なだけでなく正確でスムーズです。そもそも僕たちは全員auキャリアのiPadを授業で使っているので、au PAYだったら全員使えるのでは、と先生に提案しました」(二宮さん)
出店しているみんなの「うまくいってるね」「よかったね」という満足げな声を聞いて、ふたりは成功を確信。二宮さんは「au PAYが来年以降の桜陵祭開催のひな形のひとつになればいいと思う」と話す。
「決済が早くて便利」と生徒たちからも好評
桜陵祭物販の目玉となる「フードフェスティバル」は3年生の各クラスが地域の飲食店とコラボし、特別メニューを販売する地域活性化プロジェクト。今回はフレンチ、イタリアン、韓国料理、スイーツなど全21店舗がそろった。ほかにも、クラスごとに焼きそばやチョコバナナなどを販売する「パーラー」や部活動による出店などもあり、あちこちから賑やかな呼び込みの声が上がる。
日大三島高校では、「校内でスマホは電源オフ」というルールがある。生徒たちは、各自所有のiPadに事前にインストールした「au PAY」アプリを利用。校外からの参加者は、それぞれのスマホで決済する。au PAYを使ったことのない人のために、KDDIはアプリの設定をサポートするブースを出展し、生徒会との共同企画でスタンプラリーも開催した。
キャッシュレス決算による現場での混乱などは見られず、au PAYを使ってみた生徒たちからも好評だ。
「普段は銀行口座から直接引き落とされるキャッシュレス決済を使っています。残高を確認して愕然とすることがあるんですが、au PAYはチャージ式なのでその心配がないです(笑)」(小林さん)
「最初は設定するのが面倒かなと思ったんですが、実際に決済すると早くて便利ですね」(小塩さん)
「僕は現金がなくても翌月引き落としされるアプリを使っていますが、au PAYはシンプルだと思いました」(小川さん)
そもそもau PAYを使い慣れている人も、この機会に使いはじめた人にも総じて好評であった。
キャッシュレス決済の導入で実現した「学び」
家庭科を担当する長坂綾子先生と、生徒会指導部主任として生徒とともに桜陵祭をつくりあげてきた大川幸祐先生は、キャッシュレス学園祭は「金融教育」の生きた体験の場になるという。
「家庭科の授業ではこれまでも公的保険と私的保険の違い、貯蓄、税金や年金などといった、いわゆる『家庭経済』はカリキュラムに入っていたのですが、人生90年の時代、“いかにお金を増やすか”という点にも着目するよう、文科省の学習指導要領が変わってきています。投資信託や株式など、社会に出たときに役に立つ金融の現在についても『金融教育』として扱うようになっているんです。
その一環として、支払方法の多様化なども教科書で出てきます。キャッシュレス決済を経験したことがない生徒も多く、今回の桜陵祭で実践できるのは素晴らしいことだと思います。とくに生徒たちが同じ機会に同じ体験を共有できるので、のちのち授業での理解も深まりやすいと考えています」(長坂綾子先生)
大川幸祐先生は、人を入れた学園祭が実現したことで生徒たちが大きな学びを得ることができたと話す。
「準備はいろいろ大変でしたが、開催できて本当によかったと思っています。いまや、学校だけで教育がすべて完結する時代ではありません。3年全クラスが参加した『フードフェスティバル』はまさに、地域活性というテーマで、子どもたちが社会に接して学ぶことができるよい機会になりました。
子どもたちは自分たちで地域のお店を選び、生徒会で作成した『アポイントメントマニュアル』に則って出店交渉を行います。OKがいただければ、お店に伺ってメニューの内容と価格を交渉し、取材をしてYouTubeに上げる紹介動画を制作したり、メニューが決まったら、フードロス対策としてGoogleフォームのアンケート機能を使って事前予約を取り、お店に発注するということを行いました。
それらはすべて生徒たちがiPadを使って行っています。生徒たちがこれから生きていくうえで『交渉力』は重要な要素のひとつとなりますが、今回は実際に商店の方々とお話をし、先方の状況を伺うなど、コミュニケーションをしてひとつのプロジェクトを実現できました。
また、生徒会は昨年よりも大きな規模で、人を入れたかたちでの桜陵祭というプロジェクトを自分たちでつくりあげました。au PAYによるキャッシュレス決済は、こうした学びを実現するためのツールとして大いに役立ってくれたと考えています」(大川先生)
生徒会で非接触決済方法を検討した際、導入の簡単さと学園祭以降も使える汎用性の高さからau PAYの採用となった。2日間の桜陵祭において、au PAYでの決済はのべ約1万件にのぼったという。
KDDI担当者に聞く、桜陵際で伝えたかったこと
7年前に日大三島高校がiPadを導入する際に、提案を行ったのがKDDIだった。それ以降、教育機関におけるタブレットの活用法などに関して、大川先生から助言をいただくこともしばしばあった。そして、今回のキャッシュレス学園祭というチャレンジに関して、KDDIは初手から日大三島高校とタッグを組んできた。
そんなKDDIの担当者に、日本初の完全キャッシュレス学園祭について聞いた。KDDIはこの桜陵祭に、まさに学園祭をともにつくりあげていくような姿勢で参加したという。
「今回のau PAYを使ったキャッシュレス学園祭では、先生と生徒さんそれぞれとやり取りを行いました。学園祭専用のQRコードを日大三島高校さんに発行したり、生徒さんたちのiPadにアプリをインストールする仕組みを考えたりするところは大川先生とやり取りをして、学園祭の当日にau PAYを盛り上げる企画は生徒会の二宮さんと一緒に組み立てました。二宮さんとは、当初はメールでやり取りしていたのですが、あまりにきちんとされているので、しばらく先生かと思っていました(笑)。
下見に伺った際に直接お会いして、打ち合わせをした結果、2回買っていただくとくじ引きができるというイベントを行うことになったのですが、当日も生徒さんでシフトを組んで呼び込みや誘導などで協力いただいて、とてもスムーズでしたし、参加した私たちも楽しかったです」(大熊)
秋山は、自身が担当している地域共創の面からKDDIが全国の教育機関に、これまでにない貢献の仕方ができるという。
「KDDIはICTを活用して地域の課題を解決することに取り組んできました。全国それぞれの地域に学校はあり、食文化も地域ごとに千差万別です。今回の『フードフェスティバル』は、日大三島高校さんの地域を活性化しようという意識と、ICTへの柔軟な姿勢のおかげで実現したものですが、この桜陵祭は、学校と地域と企業をつなぐ共創の新しいモデルになるのではないかとワクワクしています」(秋山)
杉山は企業や学校の通信環境を整備したり、ICTデバイスを導入して有効活用を行う「KDDIまとめてオフィス」に所属している。教育機関との新しい可能性に目を輝かせた。
「私たちが主導して学校の交流会を開催したり、オンラインでセミナーを開催したりすることはありますが、生徒さんと一緒になにかをつくりあげたことはありませんでした。今回のように生徒さんと直接コミュニケーションしてグループワークのようなかたちで、学校さんがやりたいことを打ち出していただくのは新しいやり方だと思います。いま、私たちは全国で数百校の学校さんにICTデバイスをご提供していますが、そこにKDDIが持つ技術や資産を組み合わせれば、きっとお役に立てるだろうと、今回の桜陵祭の盛り上がりを見ながら確信しています」(杉山)
教育機関との共創は新たな学びを生み出し、地域も盛り上げる
KDDIは今回、手探りしながら手づくりで日大三島高校の桜陵祭をサポートした。au PAYを活用することで有観客の学園祭を実現し、生徒たちの新たな体験の手助けをすることができ、さまざまな教育機関との連携の可能性も見えてきた。今後は、学校とその地元をテクノロジーで結びつけ、地域社会の活性化に貢献することもできるかもしれない。
今回はau PAYでのお手伝いだったが、今後もKDDIは持てる通信テクノロジーや強みを活かし、これまでにないかたちも模索しながら教育現場や地域との共創を行っていく。
文:TIME&SPACE編集部
写真:正慶真弓
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