2022/09/05

「人流」からなにが見える?位置情報ビッグデータを課題解決につなげるKDDIの取り組み

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人々の行動や混雑への意識に変化が起こったことにより、「位置情報ビッグデータ」への社会的関心が高まっている。

位置情報ビッグデータとは、スマホのGPSや携帯電話の基地局などから取得し集積したロケーションデータのこと。特定の地域における人の位置や動き、いわゆる「人流」をスピーディかつ正確に把握できることから、官民問わずさまざまな分野で活用が進んでいる。

「人流」のイメージ画像

そんななか注目を集めているのが、KDDIが提供している位置情報ソリューションサービス「KDDI Location Analyzer(KLA)」だ。

KDDI Location Analyzer

KLAは、位置情報活用の許諾を得たauユーザーから得た位置情報ビッグデータをもとに、任意の地域の人流を可視化するセルフ分析ツール。性別や年代などの属性がわかるうえ、高精度なGPS位置情報データを用いているため正確で詳細な分析が可能となる。

KDDI Location Analyzer KDDI Location Analyzer

操作はブラウザ上で簡単に行うことができ、難しい設定は不要。2019年6月のサービス開始以来、幅広い分野で導入され、民間企業のエリアマーケティングのツールとして、また官公庁・自治体における緊急・災害時の動態調査や、観光・交通の施策立案のための検討材料として、利用件数はトライアルを含めて数千件に及ぶ(2022年8月現在)。

感染症対策が認知を広める契機に

位置情報ビッグデータを活用して人流を可視化し、分析することで、いったいなにが見えてくるのか。そしてそれは将来的にどのような可能性を秘めているのか。KLAを担当するKDDIの吉村智史と田崎良太に話を聞いた。

KDDI サービス統括本部 データマネジメント部 吉村智史(左)、田崎良太(右) KDDI サービス統括本部 データマネジメント部 吉村智史(左)、田崎良太(右)

――通信事業者であるKDDIが位置情報ビッグデータを活用したサービスを提供する狙いや経緯について教えてください。

KDDI サービス統括本部 データマネジメント部 吉村智史

吉村「KDDIが位置情報ビッグデータを活用するうえで、転機となった大きな出来事が3つあります。1つめは、スマホの普及です。2010年頃からスマホの利用が急速に広まり、KDDIをはじめとする通信事業者はスマホ利用者のGPSの位置情報をビッグデータとして収集できるようになりました。

2つめは、東日本大震災です。スマホ利用者のGPSから得た位置情報ビッグデータによって、どの場所にどれくらいの人がいて、どこから来てどこへ移動したのか、特定の地域における人流を把握できます。そのデータを測定し、分析することは、緊急時における救護体制の支援や避難経路の最適化など、今後の防災対策も役立てられるのではないか。そんな可能性が見えてきました。

3つめは、新型コロナウイルスの感染拡大です。2020年の緊急事態宣言下において、都市部の繁華街や全国の主要観光地における人流の推移が連日報道されていたことをおぼえている方も多いでしょう。そのときに用いられていたのが、KDDIをはじめとする通信事業者が取得した位置情報ビッグデータに基づく人流データです。

人流の可視化とそのデータの分析は、官庁や自治体でコロナ感染症対策における繁華街の人流把握に活用されて一定の成果を生み、位置情報ビッグデータの価値が広く認知される大きなきっかけになりました。」

KDDI サービス統括本部 データマネジメント部 田崎良太

田崎「かつては人流を把握するには、目視で人数を数えたり、施設に電話して利用者数を尋ねたり、時間と労力をかけて人力で測定するアナログな手法に頼るしかありませんでした。一方、スマホの位置情報ビッグデータを活用すれば、素早く正確に人流を測ることができます。

コロナ禍を経て、人の動きが大きく変わるなか、人流を定量的に測りたいというニーズは高まるばかりです。KDDIが提供するKLAは、民間企業のエリアマーケティングのツールとして、また官公庁・自治体における緊急・災害時の動態調査や、観光・交通の施策立案のための検討材料として、幅広い分野で活用されています。」

「属性の正確さ」「精度の高さ」が強み

――位置情報ビッグデータを活用したサービスのなかでもKLAの特徴とは?

吉村「性別や年代など正確な属性情報が得られることです。KDDIの位置情報ビッグデータの属性情報はauスマホの契約者情報を基にしているため、きめ細かなデータ分析が可能になります。

もちろん、データは個別に明確な同意をいただいたauスマホユーザーからのみ取得するものであるとともに、プライバシーを保護する仕組みを構築しています。例えば、特定の方のスマホから位置情報を取得する際、識別子を変更する処理を施しています。こういった、同一人物の連続する位置情報を秘匿する処理を行うことで、同一人物の移動経路をわからないようにしています。」

田崎「KDDIの位置情報ビッグデータは、精度の高さも特長です。最短2分間隔で取得されるスマホのGPSをもとに取得しているため、非常に細かい範囲での位置分析が可能となります。」

自治体や企業のKLA導入事例

――KLAの導入事例を教えてください。

田崎「例えば栃木県庁様では、新型コロナウイルスの影響で減少した観光客数の実態調査や観光需要回復のための施策立案の効果検証を目的に、2020年8月よりKLAを導入いただきました。

KLAでは特定の施設の来訪者の人数、動向、属性をピンポイントで調べられるほか、その施設を訪れた人の前後の行動パターンまで把握できるため、より効果的な観光振興施策の検討が可能になります。ご担当者様からは「県内観光地の人流動向がスピーディに把握でき、データを定量的に分析できるようになったことで、より効果的な誘客施策の立案が可能になった」との声を頂戴しています。」

栃木県庁でKDDIが開催したKLAの活用方法セミナー 栃木県庁でKDDIが開催したKLAの活用方法セミナー

田崎「また、藤沢市役所様では、2021年コロナ禍で大型連休期間中の江の島周辺エリアへの来訪者数が増えているという一部報道があり、地域住民が不安視していたところ、KLAを活用して正確なデータを分析。その結果、県外からの来訪者数はコロナ禍前より減少しており、増加した来訪者は県内住民であったことなどが可視化され、住民の安心につながりました。

愛知県警様は交通事故対策にKLAを活用。特に事故が多い高齢者が多く行き来する場所や時間帯を特定し、それにあわせてパトロールの経路を最適化したことで、交通死亡事故の減少につながりました。」

愛知県管内各エリアにおける高齢者の通行量
愛知県管内各エリアにおける高齢者の動態 KLAを活用し、愛知県管内各エリアにおける高齢者の通行量や動態を把握

吉村「民間企業では、飲食店の新規出店場所の選定、小売業における販促エリアの最適化、商業施設におけるイベントの効果検証など、さまざまな目的でKLAをご活用いただいています。KDDIの位置情報ビッグデータは性別や年代はもちろん、居住や勤務に関する属性もわかるため、商圏や来訪者、時間帯別傾向など、鮮度の高いエリアマーケティングを可能にします。

KLAを活用することで、自社はもちろん、競合店の分析も可能です。自社との差分がわかれば、セールやクーポンなどの販促施策も打ちやすくなります。」

位置情報ビッグデータの今後の可能性

――位置情報ビッグデータを活用したサービスの将来の展望や今後の可能性についてお聞かせください。

田崎「将来的には、位置情報ビッグデータは特別なものではなくなり、社会活動のベースとして当たり前のように使われるデータのひとつになっていくのではないでしょうか。取得したデータをどのように分析し、どのように有効活用していくか、アイデア次第で可能性は無限に広がっていくと思います。」

吉村「人口減少や高齢化など社会課題が山積するなか、位置情報ビッグデータの活用が、地域の活性化や課題解決につながればと考えています。今後もKDDIは、自治体や企業と協業しながら、位置情報ビッグデータを活用した価値のあるサービスを提供していきます。」

KDDI サービス統括本部 データマネジメント部 吉村智史(左)、田崎良太(右)

コロナ禍で注目度が高まり、多様な分野で活用が進む位置情報ビッグデータ。人流をスピーディかつ正確に把握できるようになったことは、企業や自治体に大きな恩恵をもたらしているとともに、地域が抱える課題の解決へとつながる可能性も秘めている。

これからもKDDIは、位置情報ビッグデータをはじめ、強みであるICTを最大限に活用し、安心して豊かに暮らせる社会の実現を目指して取り組みを進めていく。

文:TIME&SPACE編集部

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