2022/06/24

教育格差の解消にICTを活用 ネパールの教育を支援するKDDI財団の取り組み

世界をあげて持続可能な開発目標であるSDGsに取り組むなか、KDDIグループの社会貢献活動の一翼を担うKDDI財団は、ICT(情報通信技術)を活用した支援活動を世界各地で進めている。

ネパール地方部の医療支援活動 ネパールの地方部において、ICTを活用して医療課題の解決を図るNPO法人を支援
カンボジアの学校でパソコン教室を受ける子どもたち カンボジアの学校にパソコン教室を導入
光ファイバーケーブルの敷設工事 KDDIの海底用ケーブル技術を応用し、ネパールに光ファイバーケーブルを敷設

ネパールにおける教育支援活動もそのひとつ。ネパールの教育はどのような課題を抱えているのか。そして、それをどのようにして解決しようとしているのか。ネパールの教育問題に取り組む現地のNGO「OLEネパール」のラビ・カルマチャリヤさんと、同団体とともにネパールの教育支援活動を行うKDDI財団の中山善博に話を聞いた。

KDDI財団の中山善博とOLEネパールのラビ・カルマチャリヤさん KDDI財団の中山善博と、OLEネパールのラビ・カルマチャリヤさん(ネパール在住)。取材はオンラインで行った

教育格差の広がりが課題

ネパールの教育の現状について、OLEネパールのラビ・カルマチャリヤさんは次のように語る。

OLEネパールのラビ・カルマチャリヤさん

「ネパールでは近年、政府が危機感を持って教育問題に取り組んでおり、学校の数は増えつつあります。しかしながら、まだまだ課題が山積しているのが実情です。

特に大きな課題は、公立校と私立校の格差が大きいこと。大半の子どもは公立校に通います。公立校は教材の質が低く、授業や試験は旧態依然とした暗記中心の詰め込み型。教員たちの給与が低いため、教育熱心な教員は多くありません。一方、富裕層の子どもは私立校に通い、優秀な教員のもと、質の高い教育を受けています。経済格差が教育格差につながってしまっているのです。

コロナ禍がその状況に追い打ちをかけました。感染拡大で多くの学校が閉鎖になるなか、富裕層の子どもはPCやタブレットを活用して自宅で学習できましたが、一般の家庭ではそれができず、格差は広がる一方です。

また、ネパールでは視聴覚の障がいのある人が多く、その割合は人口の約16%にのぼるとも言われています。コロナ禍で多くの学校が閉鎖を余儀なくされたことは視聴覚に障がいを抱える子どもたちの学習機会を激減させることにもつながってしまったのです」(OLEネパール ラビ・カルマチャリヤさん)

KDDI財団が取り組む教育支援

ネパールが抱える教育の課題解決のために、OLEネパールとKDDI財団は具体的にどのような取り組みを行っているのか。KDDI財団の中山善博に聞いた。

KDDI財団 国際協力部 中山善博

「日本でも小学校のプログラミング教育必修化に向けて準備が進められていたことから、ロボットプログラミング教育から実施しました。ロボットやクルマをブロックで製作したうえで、プログラミングで動作を指示する作業を通じて、論理的思考力や問題解決力を育む取り組みです。宮城教育大学の水谷好成先生に協力いただき、現地で教員の方々に日本での指導方法を伝える活動を2019年に実施しました。

ネパールのロボットプログラミング教育
ネパールのロボットプログラミング教育

2019年3月と9月、指導者育成のための研修を現地で開催し、7校から約40名の教員の方々にご参加いただきました。その後は授業に取り入れたり、地域住民を招く学習発表会で披露したりと、現在も学校ごとに独自の取り組みが進められています。

2021年2月からは、ネパールのラリトプール市の6校において、タブレットによる自宅学習支援を開始しました。コロナ禍で学校閉鎖期間中もすべての子どもたちが平等に学びを継続するための取り組みです。

ネパールにおけるタブレットによる自宅学習支援
ネパールにおけるタブレットによる自宅学習支援

ネパールではインターネット環境がない家庭が少なくありません。そこで共用タブレット端末にデジタル教材をインストールし、インターネット接続がない環境でも利用できるようにしました。

また、視聴覚に障がいを抱える子どもたちに学ぶ機会を提供するため、手話動画や音声読み上げ機能を付けた視聴覚障がい者向けのデジタル教材を製作し、学校へ導入しました。本活動はKDDI財団のほかに、ユニセフからの支援も行われています。

ネパールにおける視聴覚障がい者向け授業
ネパールにおける視聴覚障がい者向けデジタルコンテンツ

視聴覚障がい者向けのデジタル教材はすでに3校への導入が完了しており、これから活用が進められていく予定です」(KDDI財団 国際協力部 中山善博)

子どもたちに公平な機会を

ネパールにおける教育の課題解決を図るOLEネパールとKDDI財団の取り組み。ラビ・カルマチャリヤさんと中山善博はどのような思いで活動に携わっているのか。

「ロボットプログラミング教育、タブレットによる自宅学習支援、視聴覚障がい者向けのデジタル教材の製作といったKDDI財団との取り組みは、着実に実を結びつつあります。それらを実施した学校では、子どもたちは生き生きとした表情で学習に取り組んでいますし、教員たちのモチベーションの向上にもつながっています。

私たちOLEネパールが目指しているのは、子どもたちに公平な学習機会を提供すること。デジタル教材やeラーニングをはじめとするICTを積極的に活用することが、教育格差の解消につながると考えています。その点、ICTの技術と知見を持つKDDI財団が果たす役割は非常に大きい。今後も手を取り合って、ともに取り組みを進めていきたいと考えています」(OLEネパール ラビ・カルマチャリヤさん)

「KDDI財団はかねてより、カンボジアやミャンマーで教育支援活動を展開してきました。より良い社会の実現のためには、途上国における教育の質の向上を図ることが重要であり、われわれの強みであるICTを活用して教育を支援することは私たちの使命だと考えるからです。

その活動を他の地域へ広げていきたいと考えていたときに出会ったのがラビさんです。ICTを活用して教育格差の解消を図るというOLEネパールの理念に共感し、ともに取り組みを進めてきました。生まれた場所や暮らしている環境にとらわれることなく、世界中の誰もが質の高い教育を受けられる社会を目指して、これからも継続的な支援を進めていきたいと思います」(KDDI財団 国際協力部 中山善博)

KDDI財団の中山善博とOLEネパールのラビ・カルマチャリヤさん

教育格差の拡大のほか、医療資源の不足、通信インフラの未整備など、ネパールをはじめとする途上国はさまざまな課題を抱えている。それらの解決に向けて、KDDIグループはICTのチカラを活用し、長期的な視野で持続可能な国際支援に取り組んでいく。

文:TIME&SPACE編集部
通訳:中山善博

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