2022/06/22

スマホの通信設備の電力量は?カーボンニュートラルを目指すKDDIの取り組み


カーボンニュートラルのイメージ画像

持続可能な未来を目指すため、世界中で取り組みはじめているカーボンニュートラル。この日本においても、政府は2050年までのカーボンニュートラルを宣言しており、私たちのまわりでもさまざまな取り組みが始まっている。

■カーボンニュートラルとは
二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を抑え、吸収量を増やすことで、差し引きを実質的なゼロにすること。
・電力消費量の削減(省エネ)
・再生可能エネルギーを使った発電への移行
・植林などによる温室効果ガスの吸収量増加…など

カーボンニュートラルとは

そんな取り組みが進むなか、2022年4月、KDDIは、2030年度までにCO2排出量を実質ゼロにすることを発表した。

そもそも世界中でカーボンニュートラルに取り組まないと、私たちの生活にどんな影響があるのか。KDDIの取り組みによる削減効果など、取り組みに関する素朴な疑問について、KDDIでカーボンニュートラルを推進する担当者に話を聞いた。

KDDIでカーボンニュートラルに取り組む担当者 左から、KDDI サステナビリティ企画部 青木圭秀、柏木真由子
カーボンニュートラル推進室 宮崎典行、市村 豪

【目次】

なぜ今から取り組む必要があるのか?生活への影響は?

―――少し前からこの「カーボンニュートラル」という言葉をよく耳にしますが、なぜ今から取り組む必要があるのか、まだピンときていない部分があります。取り組まないと、私たちの生活にいったいどんな影響があるのでしょうか。

青木:身近なところでは、近年増えている豪雨などの自然災害を回避するためにも、実はもう今すぐにも取り組まないといけない状況です。気候変動に関する最新の科学的知見をまとめたIPCCの報告書によると、このまま気温上昇が続くと、豪雨や熱波、高潮や干ばつなどの異常気象が加速し、自然災害や健康被害、食糧不足など、私たち人間の生活と生存の危機にまで影響が及ぶと言われています。

※IPCC:195の国と地域が参加し、世界中の専門家の協力のもと、気候変動に関する最新の科学的知見を評価、公表する政府間組織

KDDIでカーボンニュートラルに取り組む担当者 KDDI サステナビリティ企画部 青木圭秀

こういったリスクを回避するためには、世界の平均気温の上昇を、近代化がはじまった産業革命以前に比べて「1.5℃未満」に抑えないといけないのですが、実はもう2017年時点で「約1℃」上がっており、このまま進めば今後20年以内に1.5℃上昇に到達してしまうという予測が報告されています。

KDDI全体でのCO2排出量はどれくらいなのか?

―――確かに私が子どものときに比べて現在の夏の気温が上がっていることからも、すでにひとごとではない状況ですね……。KDDIでもカーボンニュートラルの取り組みをはじめたということですが、そもそもKDDIでのCO2排出量は、どれくらいあるのでしょうか。

市村:KDDIのCO2排出量は、2020年実績で106万トンほどあり、約98%が「電気を使うこと」による排出です。その電気使用量の99%が、スマホなどの通信を支える基地局と通信局舎といわれる施設で消費される電力となっています。

KDDIでカーボンニュートラルに取り組む担当者 KDDI カーボンニュートラル推進室 市村 豪

―――CO2排出量で数字を聞いてもなじみがない数字なので教えてほしいのですが、この通信設備で消費される電力を一般家庭に例えると、どのくらいの量になるのでしょうか。

KDDIが一年間に使う電力量は、約50万以上の世帯が一年間に使う電力と同じ規模の電力です。全国に数万ヶ所ある基地局は、常に安定して通信をお使いいただけるよう24時間365日ひと時も休まず稼働しています。そのひとつの基地局で使う電力量は規模により大小ありますが、わかりやすい例として、少し大きめの家庭用エアコンを24時間365日、ずっと最大出力でつけっぱなしに近い電力を消費しています。

また、基地局以外にも通信局舎といわれる通話や通信を処理する大規模な施設があり、同様に大きな電力を消費しているため、KDDI全体で中規模の政令指定都市レベルの電力を消費しているというわけです。

―――通信設備のどういうところで電気を使っているのでしょうか。

基地局には、携帯電話の電波を出す機器や、通信局舎と基地局を光ファイバーでつなぐ機器などが設置されております。これらは、利用する人が増えたり、通信するデータの量が増えると、それに応じて使用電力も増加します。

KDDIの基地局で作業する人

もうひとつの通信局舎やデータセンターは、基地局から入ってくる通信データの行き先や課金などさまざまな制御処理を行う施設です。この制御のために大量のサーバーや伝送装置などの機器を置いていますが、その稼働のための電力に加え、機器の排熱により、設置場所がとても熱くなりますので、フロアを適切な温度に保つための空調設備も設置しています。

サーバールームのイメージ写真

通信を使う人がいなくても、24時間365日、生活インフラとして基地局と通信局舎を止めるわけにはいかないので、この電力をどう削減していくかが、KDDIのカーボンニュートラルにおける大きな課題となっています。

KDDIにおける電力消費量削減の取り組み

―――この大きな電力を、具体的にはどう削減していくのでしょうか。

宮崎:まず基地局については、3Gサービスが始まった頃は機器のサイズも大きくエアコンで冷やす必要がありましたが、開発が進み、暑いところでも寒いところでも空調設備なく自然空冷で十分稼働する、小型化された機器が増えてきました。今の4Gや5Gの基地局設備では、この自然空冷の機器に入れ替えていくことで電力が削減でき、さらに置き場所にも少し柔軟性が出てきています。

KDDIの小型基地局

また、基地局では複数の周波数帯を使っていますが、すべての周波数帯を常に使っているわけではないので、AIを活用し、利用状況に応じて動作を制御することで、電力消費量を削減する実証実験を実施しました。

KDDIでカーボンニュートラルに取り組む担当者 KDDI カーボンニュートラル推進室 宮崎典行

通信局舎については、空気より液体のほうが効率的に冷やせることに着目し、サーバーを特別な液体オイルに浸すことで、空調に必要な電力使用量を削減する技術の開発に取り組んでいます。

KDDIにおけるカーボンニュートラルのためにサーバーを特別な液体オイルで冷やす実証実験 液体でサーバーを冷却する様子

このように、2030年度にCO2排出量を実質ゼロにできるようあらゆる観点で活動を始めています。

気候変動問題に取り組むスタートアップとの連携

―――ほかにも取り組んでいることはあるでしょうか。

柏木:はい、気候変動問題は世界的な課題で、1社だけで解決できるものではないと考えています。カーボンニュートラル達成には、あらゆる企業との連携とイノベーションが必要です。

KDDIでカーボンニュートラルに取り組む担当者 KDDI サステナビリティ企画部 柏木真由子

KDDIはこれまでさまざまなビジネスにおいて他業種との連携を推進してきましたが、2010年頃から10年以上にわたり、特にスタートアップとの取り組みにも注力しています。この脱炭素領域においてもそのノウハウを生かし、カーボンニュートラルに貢献したいという思いから、2021年11月、気候変動問題に特化したファンド「KDDI Green Partners Fund」を設立しました。

特に現在は再生可能エネルギーなど、エネルギー・テック領域では研究開発が活発化しています。すぐれた技術をもつスタートアップに対し、資金を提供するだけではなく、KDDIの持つ通信ネットワークやIoT、AIなどの技術を提供し、存分に活用いただくことで、スタートアップの成長に寄与していきたいと考えています。

KDDI Green Partners Fund

柏木:たとえば今年3月に出資したスタートアップの「エネコートテクノロジーズ」さんでは、これまでの太陽電池の常識をくつがえす「薄くて軽くて曲がり、さらに曇りや室内でも発電する」というフィルム型の次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」を研究開発・製造しています。

エネコートテクノロジーズで開発中のペロブスカイト太陽電池

この次世代太陽電池の技術が発展することで、たとえばビルの壁面やオフィスのブラインドなど、今まで太陽光パネルを設置できなかったような場所でも発電できるようになることが期待されます。KDDIも、基地局の再生可能エネルギー導入に向け、スペースが限られた基地局への導入を将来的に検討したいと考えています。

日本国内でも今後、太陽光発電を増やすという指針がありますが、国土の70%が山で平地の少ない日本では、太陽光パネルを設置できる場所には限りがあります。山を切り開いて太陽光発電設備を設置することは、環境負荷や景観の観点からも問題が指摘されています。

エネコートテクノロジーズさんのようなスタートアップのすばらしい技術を支援することで、社会のカーボンニュートラルに貢献したいと考えています。

太陽電池のイメージ写真

当たり前を守り、未来へつなぐ

―――これからKDDIがカーボンニュートラルを通して目指しているのは、どのような未来でしょうか。

青木:KDDIが発足以来掲げている企業理念は、「豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献すること」です。わたしたちKDDIの事業は、社会の安定と持続可能な地球環境を前提として成り立っていると考えます。わたし自身もコロナ禍を経験することで、それまで当たり前と思っていた生活がガラッと変わり、社会・環境の「持続可能性」の大事さに気づかされました。

カーボンニュートラルは持続可能な社会の実現に不可欠ですので、KDDIのカーボンニュートラル達成や、「KDDI Green Partners Fund」などの活動を通じた気候変動問題解決への取り組みによって、これからも豊かな社会と豊かな地球を未来につなぐことに貢献していきたいと考えています。

―――KDDIは、24時間365日、通信を安定して提供することで、お客さまの「当たり前」を守り抜き、カーボンニュートラルの取り組みを通じて、豊かな未来へのバトンをつないでいく。

文:TIME&SPACE編集部

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。