2022/06/02

人工島に電波を!「桜島と芸術花火2022」でスマホが快適に使えたauの取り組みに密着

2022年4月30日、鹿児島で「桜島と芸術花火2022」が開催された。

「芸術花火」は、演出家(花火コレオグラファー)が全国の有名花火師たちの作品を中心に構成した花火を、音楽とシンクロさせて打ち上げるというもの。

「桜島と芸術花火2022」

当日の来場者数は1万2,800人。観覧会場はお昼からオープンしており、キッチンカーも多数出店。集まった人々は、スマホ決済で食事を楽しんだり、会場の写真をSNSにアップしたり、待ち合わせ相手と連絡を取り合ったり、スマホを活用するシーンがあちこちで見られた。そして、打ち上げが始まってからは、多くのみなさんがダイナミックな花火にスマホを向けていた。

花火大会でスマホを使う人々

こうした花火大会や音楽フェスなどのイベント時には、特定の場所に通常以上の集客があり、携帯電話の電波状況が悪くなることがある。KDDIではいつも通りにスマホが快適に使えるよう、臨時の電波対策を行っている。今回の「桜島と芸術花火2022」でも、同様の対策を行った。

「TIME&SPACE」では、その模様に密着。花火大会で来場した人々がスマホを快適に利用できた舞台裏ではどのような作業が行われたのか、詳しくお伝えしていこう。

花火大会の会場となったのは鹿児島港の人工島

まず、どんな場所にどのように電波を届けたのかを見てみよう。

会場の「マリンポートかごしま」は、陸地とは長さ数百mの橋1本でつながった人工島だ。

会場となった人工島へ通じる道

会場には、約1万のイス席とファミリーやカップルでレジャーシートを敷いて座れるシート席を用意。また、キッチンカーやお弁当販売のテント、飲食のできるスペースのあるフードエリアは島の外れに設けられ、観覧席には食べ物の持ち込みが禁じられていたため人々の移動も多く見受けられた。

実際の会場風景がこちら。背後には桜島がそびえている。

実際の観覧会場の模様

会場の岸から20〜30m先の海上に浮かんでいるのが台船。ここから花火が打ち上げられる。

会場のすぐ目の前に浮かぶ花火打上げ用の台船 会場のすぐそばの海上に浮かぶ打上げ用の台船。背後にそびえるのが桜島だ

目の前を遮るものがなにもない大パノラマは海上ならでは。会場となるこの島でもスマホの使用は可能だが、1万人を超える観客が訪れた場合も快適に使えるよう、対策を行った。

こうしたイベントの対策では、クルマ1台に基地局のシステムをすべて搭載した「車載型基地局」を使用するのが一般的だ。今回も島内に1台設営された。

会場の外れに設営された車載型基地局

車載型基地局は通常、近くまで敷設された光ケーブルとつないでスマホの電波のやり取りを行う。だが今回の会場となった島には光ケーブルが届いていなかった。そのため「無線エントランス」という方式で通信を行った。

「無線エントランス」とは“親機”となる基地局を設営、さらに電波を届けたい場所に “子機”を置き、両者を無線でつないで通信を行う方式だ。今回の場合は、島を望む湾岸のビルの上に親機を設置し、島内に子機となる車載型基地局を設置した。

会場近辺の俯瞰図 画像中央の四角い人工島が会場。左上の赤マル部分が無線エントランスの親機、子機となるのは斜線部の車載型基地局

では今回の設営の様子を追ってみてみよう。

花火大会の1万人に電波を届ける作業に密着

現地での作業は、本番3日前の4月27日からスタートした。会場のエリア確認などは1月中旬からはじまっていた。当初、花火大会は3月19日開催予定だったが、延期になったため、3月初旬には対策の実施を決定し、あらためて本格的に検討をはじめた。

準備を含め実際の設営を担当したのはKDDIエンジニアリング。現場の作業には黒川貴祐ら福岡の3名に加え、広島から2名が応援に駆けつけた。

基地局設営を担当するKDDIエンジニアリングの3人 KDDIエンジニアリング 西日本運用本部 西日本支社 福岡フィールド1グループ 黒川貴祐(中)、竹田真也(左)、糸瀬大輔(右)の3人に加え、広島の支社から2名が参加した

まず最初に行った作業は、無線エントランスの親局の設営。

島の対岸のビルの屋上に無線エントランスの親機を設営

設置場所は会場となる人工島に見通しがきく湾岸のビルの屋上。倉庫の屋根越しに見える、赤マル印をつけた場所が今回の会場だ。

湾岸のビルの屋上に無線エントランスの親機を設営

黒川によると、ここにはもともとauの基地局が設置されているという。

「KDDIの基地局を設置させていただいていて、まさに会場を見渡せる立地でしたので、今回の対策用に無線エントランスの親局を置かせていただけるようお願いしました」(黒川貴祐)

設営された親機がこちら。この四角いアンテナと、島内に設営した子機とで電波のやり取りを行う。

湾岸のビルの屋上に設営された無線エントランスの親機

左の赤マルが今回設営した親機。右のふたつが既存のauの基地局である。

湾岸のビルの屋上に設置されたアンテナ

同じ日に、ここから直線距離にして800mほど離れた会場では、車載型基地局の設営作業が行われた。

KDDIの車載型基地局

観覧客のスマホに電波を送るアンテナと、陸側の親機と電波をやり取りするためのアンテナを備えている。右の四角いアンテナが親機から電波を受けるための子機だ。

KDDIの車載型基地局と屋根に設営された無線エントランスの子機

無線エントランスは調整が繊細である。お互いのアンテナの向きが少しでもずれていると通信ができなかったり、十分なパフォーマンスを確保できない。このため、パフォーマンスが最大となるように親機と子機の方向を相互で連携しながら微調整していく。この日は無線エントランスの調整までを完了させた。

翌4月28日には、車載型基地局の設営を行った。

車載型基地局の無線機の調整を行うKDDIメンバー

現地の基地局の設営後、実際に電波を発射するのは「KDDIエンジニアリング関西支社」だ。車載型基地局への設定投入が必要なため、黒川は関西支社に連絡し無線機設定と電波発射を要請した。なお、会場の電波状況は関西支社側でもモニタリングできる。

だがそれで作業終了というわけではない。黒川らは会場内をくまなく歩き回りながら、電波が行き届いているか、安定してスマホが使えるかの調査を行った。

会場内の電波調査を行うKDDIメンバー

「桜島と芸術花火2022」当日、打ち上げまで

花火の打ち上げは19時30分から。もっとも早い観客は午後2時のフェリーで島に到着する。それに先駆けて、13時にスタッフが現場入り。KDDI九州総支社の田本道夫も福岡から合流した。

KDDI九州総支社の田本道夫 KDDI九州総支社 田本道夫

田本のチームは、今回、会場でau PAYを使用できるプランを立てた。

「感染症対策において混雑の緩和や、非接触でのキャッシュレス決済が有用との思いから、キッチンカーでの買い物に、au PAYが使用できるよう大会主催者に提案しました。九州総支社を中心に企画を進め、主催者を通じて出展者に導入も呼びかけました」(田本)

当日は、スムーズに決済ができるよう、au PAYスタッフがサポートを行った。

会場で行われたau PAYの担当スタッフ パートナービジネス統括部 溝口康博(前列中央) ほかau PAY担当

一方、KDDIエンジニアリングの黒川らは、au PAYの利用に支障がないように、来場者が集まるキッチンカー周辺でも電波状況に問題がないかをチェック。4G LTEがきちんと使えることを確認した。

当日の会場で絵の電波状況を調査

そして開場。打ち上げの時間が近づき、少しずつ来場者も集まりはじめた。

「桜島と芸術花火2022」のフードエリア

キッチンカーに並ぶ人や、観覧席でも多くの来場者がスマホを使用する姿が見られた。

会場でスマホを使用する観客のみなさん

だが、KDDIエンジニアリングの黒川貴祐の仕事はまだ終わっていなかった。彼はパソコン片手に会場内を歩き回っていた。

観覧席の電波を確認するKDDIエンジニアリングの黒川貴祐

黒川はKDDIエンジニアリング関西支社がモニタリングしている会場の電波使用状況をパソコンでチェックしながら、実際に場内の混雑度を確認していたのだ。

打ち上げ直前まで電波の調整を行うKDDIメンバー

「打ち上げが近づいてお客さまが増え、かなりスマホが使われるようになりました。場合によっては基地局の負荷状況をコントロールする必要があると、関西支社の担当者と話をしていました」(黒川)

ここで、あらためてKDDIエンジニアリングの黒川と、KDDI九州総支社の田本に、今回のイベントに対する思いを聞いた。

KDDIエンジニアリングの黒川貴祐 KDDIエンジニアリング 西日本運用本部 西日本支社 福岡フィールド1グループ 黒川貴祐

「実は今回、準備期間が非常に短かく、準備から本番まで3週間弱しかありませんでした。

それでもなんとかこのイベントに電波を届けたいと考え、『無線エントランス』方式を選択しました。人工島まで光回線を引くには、数カ月の準備期間が必要となります。限られた期間内で実施できる方法を模索しながら、もっとも効果的な手法を用いて短期間で実現させました。

コロナ禍の長い我慢を経て、ようやくこうした大規模なイベントも開催できるようになってきました。お越しいただくみなさんには快適にスマホを使っていただきたいと思っています」

田本はKDDIらしく対策していきたいと話す。

KDDI九州総支社の田本道夫 KDDI九州総支社 管理部エキスパート 田本道夫

「黒川から『桜島と芸術花火2022』における電波対策のことを聞き、コロナ禍の不安を少しでも払拭できるような施策ができないかと、au PAYの担当部署とともに企画しました。

当日までに大会主催者と協議を重ね、密にならない対策ができ、うれしいかぎりです。

社会情勢が不安定ななか、やはりこうしたイベントがあれば、多くのみなさんが笑顔になっていただけると思います。ですので、私たちも通信事業者として、できるかぎりの対応をしてイベントを盛り上げ、さらに楽しんでいただければと考えています」

そして花火が打ち上げられた

午後7時30分、まさに目の前で花火の打ち上げが始まった。すごい迫力だ。ラヴェルの「ボレロ」、Mr.Childrenの「HANABI」、ビリー・アイリッシュの「BAD GUY」が次々と流れ、演奏のロングトーンと花火玉が空に昇っていくあいだ、ボーカルのシャウトと花火の炸裂が完全にシンクロしていた。そして、多くの観客が空にスマホを向けていた。

スマホで花火を撮影する人々

そして、こちらが会場に電波を送り続けてきた車載型基地局から見た花火。

「桜島と芸術花火2022」に出動したKDDIの車載型基地局

田本や黒川をはじめ、KDDIメンバーはみな駐車場の縁石に腰を下ろして空を見上げていた。豪快で美しい花火に目を奪われながらも、次のイベントに向けた準備を口にしていた。

花火大会やフェスなど、大規模なイベントが少しずつ開催されるようになってきた。その場で見たこと、感じたことは自分の思い出に残し、多くの人々と共有したいもの。携帯電話はそうした喜びや感動を誰かに伝える大切なツールとなる。そんなときに、誰もが自由につながることができるよう、KDDIは電波対策を行っていく。

この夏のさまざまなイベントに電波を届け、少しずつ日常を取り戻しつつある社会をつなぎ、人々の笑顔をつないでいく。

「桜島と芸術花火2022」に出動したKDDIの車載型基地局

文:TIME&SPACE編集部
写真:梅田航

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