2022/04/15
「5G SA」とは?スマホで8K映像の配信などライブイベントの未来を取材
5G時代のライブ配信には、どのような可能性があるのだろうか。
2022年3月15日、KDDIのコンセプトショップ「GINZA 456 Created by KDDI」と、5Gビジネスの開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」において、SA(スタンドアローン)方式の5Gを活用した「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2022 」の8Kライブ配信イベントを開催した。
GINZA 456でのライブ配信内容、5G SAの仕組み、そして今後の5G時代におけるライブ配信の可能性を紹介しよう。
当日のライブ配信内容
今回配信したイベントは、「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2022」というスペースシャワーTVがその年の音楽で功績をあげたアーティストを表彰するアワードだ。そのイベント内容の一部を、サテライト会場となるGINZA 456とKDDI DIGITAL GATEにてそれぞれ5G SAでつなぎ実現した。
GINZA 456では、正面の大型スクリーンをディスプレイとした高画質の8K映像をリアルタイムで配信。また、5G SAの特長である低遅延通信を活かし、番組内で遠隔地会場との会話のやり取りなど、本会場さながらの臨場感を実現。
イベントMCのいとうせいこうさんも「こういった時代に時差のない配信でライブを届けられるのはうれしい」とコメントした。
もうひとつのサテライト会場であるKDDI DIGITAL GATEでは、8Kライブ配信にくわえて8KのVR配信も実施。180°の3D映像で、遠隔地でも没入感あるライブを楽しめる体験を実現した。
■5G SAによる「SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2022」配信概要
5G SAで変わるライブ映像の配信体制
今回のイベント配信のポイントは、5G SAを活用することで、このようにメイン会場とサテライト会場との対話や高精細な映像での中継を遅延なく届けるということもあるが、その裏側となる配信手法にも注目したい。
このアワードの配信は、一部補助的に固定回線を利用したものの、メインとなる通信は、スマートフォン『Xperia(TM) 1 III』をベースに「5G SA」に対応させた端末を送受信機として配信した。今までイベント配信を準備するには固定回線や専用設備の手配にお金と時間がかかる傾向にあったが、5G SAを活用するとスマホだけで実現できるようになり、イベント主催者の費用と準備にかかる工数を削減できる。
実際に体験した人はどう感じたのか。GINZA456のサテライト会場でライブを見ていたアカペラグループ「Nagie Lane (ナギーレーン)」のreiさんに、その感想を伺った。
reiさん:今はまだ新型コロナウイルスの影響で私たちの活動も制限されていて、お客様としてもライブハウスに行きづらいという人が多いなか、このように別空間であってもリアルタイムで体験できる環境を用意できるというのは、希望に感じました。
reiさん:それがスマホひとつでこれだけ高精細な映像をリアルタイムで配信できるというのは、実際に体験してみてただただ驚きです。お客様が現地にいなくても、リアルタイムで配信を聞いてくれているというだけでうれしいので、今後これが気軽に利用できる世界が来ることを期待しています。
他の参加したお客様に聞いても、とにかく8K映像の美しさに驚く人が多かった。あらためて、今回のイベントを実現した5G SAとはどういうものなのか。配信体系や今後のビジョンについて、KDDIで5G SAのビジネスユースやエンタメサービスを検討する担当者に話を聞いた。
5G・xRサービス企画開発部 福井啓允
5G SAとは
―――5Gという言葉は最近よく耳にするようになりましたが、この「5G SA」とはいったいどういうものなのでしょうか。
栃本:5G SAの「SA」は「Stand Alone(スタンドアローン)」の略で、従来の5Gは4Gコアネットワークを活用して、4GLTEと5Gの基地局設備を連携して通信する「NSA=Non Stand Alone(ノンスタンドアローン)」方式で展開してきましたが、4Gから独立し、5Gのコアネットワークと5Gの基地局のみで通信する方式が「5G SA」です。
―――従来の5Gとは何が違うのでしょうか。
栃本:5Gの高速・大容量、他接続、低遅延という特長をフル活用できることもそうですが、いちばん大きな違いは、サービスごとに独立したネットワークを構築できる「ネットワークスライシング」を活用できることです。
―――ネットワークスライシングとはどういうものでしょうか。
栃本:ネットワークスライシングは、簡単にいうと、サービスごとに専用の高速道路を用意するイメージです。ネットワーク内の各種リソースを仮想的に分割し、それぞれの利用用途ごとに専用のネットワークを構築することで、ほかのトラフィックの影響を受けない安定的な通信環境を提供することができます。
―――まさに理想とする5G通信というわけですね。誰でも利用できるのでしょうか。
福井:5G SAを利用するには、SAに対応した基地局の設置とSAに対応したスマートフォンが必要ですので、まずは法人向けに提供を開始しました。今回は、配信会場に5G SAが使える環境を構築し、SONY様にもご協力いただき、8KカメラやXperia(TM)をベースにした5G SA対応のスマートフォンを用意しました。
5G SAがつくる映像の未来
―――これからさまざまな法人がサービスとして活用するようになれば、どんな世界になるでしょうか。
栃本:簡単にいうと、スマホだけで高画質映像配信ができるようになります。たとえば報道番組内の中継でも、テレビカメラに有線ケーブルと中継車を用意しなければいけなかった状況が、カメラにスマホをつなげるだけで遅延なくリアルタイムに近いかたちで配信できるようになります。今回の8K映像はFHDの16倍の精細さですが、スマホカメラの性能が今よりグッと上がれば、スマホだけで手軽に高画質な撮影と配信ができるようになるでしょう。本来8Kのような大容量映像は、通常は配信で流すことは困難なのですが、SAで帯域が保証されることで配信ができるようになるわけです。
福井:何より、5G SAによって専用の固定回線の敷設作業から解放されることで、今まで費用と工数の観点でライブ配信できなかった映像が簡単に配信できるようになります。スマホだけで高精細な映像が送ることができる時代になると、既存のライブ会場の環境に縛られず、どんなところからもライブ配信を行うことが可能となりますし、準備期間も短縮されますので、臨機応変に撮影、配信を行うことが可能となります。さらに、今まで大掛かりなカメラを設置できなかった、新たな視点での映像なども実現できるかもしれません。
栃本:用途はライブ性を伴うものでしたら、幅広いニーズがあると考えています。エンタメやスポーツの中継に加え、学校の運動会や学生スポーツ、地域のフェスティバルなどの身近なイベント、また先ほど挙げた報道もそうですが、災害時など、ドローンなどを活用して機動的に状況を把握できるので、防災にも役立つと思います。
栃本:XRについても、5G SA時代になると、人間の目の解像度に迫る4K×2の映像をWi-Fiなしで安定してストリーミング再生できるようになるので、この5G SAの普及が映像配信のブレイクスルーになる可能性があります。
今回のイベント配信のほかにも、ABEMAさんと生映像中継のLIVE配信や、SONYさんと外出先のスマホからプレイステーションを楽しめるゲームストリーミングの技術検証試験にも成功しました。今後もさまざまなパートナーさまと実用に向け進めていきますので、ぜひ今後の5G SAの展開にご期待ください。
―――5G時代の映像配信。KDDIは5G SAを活用することで、高画質映像をリアルタイムに配信し、臨場感あるライブやインタラクティブ体験を実現していく。
文:TIME&SPACE編集部
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