2022/02/16

中学生が考える「スマホとの正しい付き合い方」とは?生徒の主体的な取り組みを紹介

我が子にいつスマホを持たせるか?子どもがいる家庭にとって切実な問題だ。子どもからねだられ、「まだ早い」と様子を見るか、「うちもそろそろ」と買ってあげるか。スマホ利用の低年齢化が進むなか、頭を悩ませる家庭も多いだろう。

スマホデビューの時期は「中1」が最多

2021年の総務省の調査結果によると、スマホを利用しはじめる時期は「中学1年生(22.1%)」がもっとも多く、次いで「高校1年生(12.6%)」「小学6年生(10.6%)」の割合が高い。進学の時期やその直前からスマホ利用をはじめていることがわかる。

自分専用のスマホを持っている子どもの割合は、小学生と中学生の差が顕著だ。スマホ所持率は小学校低学年が29.2%、小学校高学年が52.5%で、中学生になると87.8%に跳ね上がる。

高校生に至っては99.1%が自分専用のスマホを所持。青少年全体(未就学児〜高校生)のスマホ所持率は実に7割を超える。

子どもの安全なスマホ利用のために

上記の調査結果からわかるように、子どものスマホ所持がもはや特別なことではなくなったなか、KDDIは通信事業者として青少年の適切かつ健全なスマホ利用を実現するため、小学校や中学校、高校、特別支援学校などで「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」を行っている。

講座では、子どもたちが自らの判断でスマホやネットに潜むトラブルを回避する能力を身に付けられるよう、スマホを安全に使うためのルールやマナー、実際のトラブル例や対策を紹介。講座は学校に講師が出向く出前講座のほか、YouTubeでの教材の提供やDVDでの教材貸出、ライブ配信でのオンライン講座にも取り組んでいる。

KDDI スマホ・ケータイ安全教室

2021年11月には、KDDI、兵庫県立大学環境人間学部准教授・竹内和雄先生、神戸市立渚中学校(以下、渚中学校)の三者による「スマホとの正しい付き合い方」をテーマにしたオンラインワークショップを開催した。中学生はスマホとどう向き合い、日々どのように活用しているのか。生徒の生の声を聞くことで、スマホやSNSの有用な利用方法を考え、今後の講座や教材づくりに活用することが狙いだ。

KDDI、渚中学校、竹内先生によるオンラインワークショップ オンラインワークショップには、竹内先生(写真右上)、渚中学校のみなさん(写真右下)、KDDI サステナビリティ推進室の担当者(左上・左下)が参加

竹内先生はスマホ時代の子どもたちへの支援方策を探るソーシャルメディア研究会を主宰。KDDIスマホ・ケータイ安全教室で使用する教材の監修を担当している。

渚中学校は2017年より「情報モラル育成プロジェクト」と題する独自の取り組みを実践してきた。ネットやスマホを正しく適切に使いこなすにはどうしたらいいかを生徒が主体的に考え、安全な利用のための心構えやルールの策定を目指した取り組みだ。

「生徒が主体的に考える」渚中学校の取り組み

オンラインワークショップの第一部は、渚中学校の生徒のみなさんによるプレゼンテーション。同校の「情報モラル育成プロジェクト」でこれまで行ってきた取り組みやその成果が発表された。その一部を紹介しよう。

■校外ワークショップへの参加

スマホの安全な利用を目指して、地方公共団体が主催するさまざまなワークショップに生徒会執行部や有志が参加。他校の生徒や世代の違う人たちと意見交換することは、非常に有意義な経験になったという。

スマホサミット in ひょうご スマホサミット in ひょうご
スマホサミット in ひょうご スマホサミット in ひょうご

■校内スマホワークショップの開催や啓発動画の作成

生徒会執行部が学校の外で得た学びを全校生徒に共有するため、校内ワークショップを開催。スマホやネットのトラブルが起こる理由や、スマホ依存に陥る原因などについて議論した。

渚中学校の校内スマホワークショップ
渚中学校の校内スマホワークショップ

■日々の時間の使い方を可視化する

スマホの使い過ぎを防ぐことを目的に、生徒たち一人ひとりが毎日のタイムテーブルを書き出し、自分の日々の時間の使い方を可視化。書き出したタイムテーブルは定期的に友だち同士で見せあい、お互いの意見を交わした。

神戸市立渚中学校の生徒の一週間のタイムテーブル

この取り組みにより、生徒からは「1日の生活がはっきりと目に見えるため、時間の使い方を振り返ることができた」「自分の生活の改善点がわかった」「勉強する時間とスマホを使う時間のけじめをつけることができるようになった」などの意見が出たという。

これらの取り組みのポイントは、あくまでも「生徒が主体」であること。親や先生から押し付けられるのではなく、なにが正しいかを生徒たちが自分たちで考え、お互いの意見を交わしながら、スマホとの正しい付き合い方を模索している。

中学生にとって適切なスマホ利用時間とは?

第二部は、竹内先生を交えたディスカッション。渚中学校の生徒たちの発表を聞いた竹内先生から質問が投げかけられた。

兵庫県立大学環境人間学部准教授 竹内和雄先生 兵庫県立大学環境人間学部准教授 竹内和雄先生
渚中学校の青木さん、奥本さん、撫さん、原田先生 渚中学校のみなさん。左から、青木さん、奥本さん、撫さん、原田先生

青木さんは中3から、奥本さんは中2から、撫さんは小6から、それぞれ自分専用のスマホを所持している。

竹内先生「「1日に何時間スマホを使おうと勝手でしょ」という中学生もいるなか、みなさんはそうではなく、適切に使いこなすにはどうすればいいかを真摯に考え、行動している。そもそも、みなさんのなかに「スマホの使い過ぎは良くない」という意識が前提としてあるのでしょうか?」

青木さん「そうですね。使い過ぎには気をつけています。スマホは便利で楽しいものですが、使い過ぎると勉強時間や睡眠時間が削られてしまうので。」

奥本さん「良くないとわかっていても、ついつい使いすぎてしまうことがあります。今日、学校でテストがあったのですが、昨日の夜はいつもより15分ほど長くスマホを使ってしまいました。15分あれば英単語を10個は覚えられたのに、と後悔しています。」

撫さん「私も、中1や中2の頃はついついスマホを触ってしまう時間が多かったです。でも中3になってからは受験勉強もあるので、スマホを使うのはなるべく控えようと意識しています。」

ここで竹内先生からスライドの紹介。竹内先生が中学生を対象に調査したアンケート結果のグラフが投影された。

中学生のスマホの利用に関するアンケート

横軸が1日あたりのスマホの利用時間、縦軸が「友人」「家族」「自分」の満足度や「社会」「海外」への関心の高さを示す。「友人」「家庭」「自分」に満足している人や「社会」「海外」への関心が高い人は、1日のスマホ利用が「1〜2時間」の割合がもっとも高く、1日のスマホ利用が「2〜5時間」「5時間〜」と長くなるほど満足度や関心度は低下している。このデータを見て、生徒たちはどう感じたのだろうか。

撫さん「スマホの利用時間が増えると「友人」「家庭」「自分」への満足度が減るのは、ちょっとわかる気がします。現実世界の人間関係に満足していないからこそ、ネットの世界に向かうのかな、と。」

奥本さん「スマホを使う時間が長いほど「社会」「海外」への関心が減るのはなんでだろう……。なにかに夢中になり過ぎると、まわりが見えなくなってしまうからかな?」

青木さん「そうかもしれないです。スマホは情報収集手段として便利ですが、使いすぎると、本来必要のない情報まで入ってきてしまうので。」

竹内先生「スマホの使い過ぎは、良くない。それはたしかにそうでしょう。でも、利用時間が短いほどいいかというと、そうとも言い切れません。1日のスマホ利用が「〜1時間」の人は、「1〜2時間」の人よりも満足度や関心度が総じて低くなっていることに注目してください。これ、なぜだと思いますか?」

撫さん「スマホを使う時間が短すぎると、情報が全然入ってこなくなるし、友だちとも連絡が取りづらい。それはそれで困るので、1日のスマホ利用が「〜1時間」の人は満足度や関心度が低いのかなと思いました。」

奥本さん「1日のスマホ利用が「〜1時間」ということは、ほぼ使っていないってことですよね。満足度が低いのは、親に制限されているせいかもしれません。」

青木さん「使い過ぎも、全く使わないのも、どちらも良くない気がします。おそらく、1日のスマホ利用は「1〜2時間」が適切で、実際それくらいの人がスマホとうまく付き合えていると思いました。」

竹内先生「みんなの話を聞いていて、中学生にもスマホは必須であるものの、どうすれば正しく付き合えるのか、苦心している様子がうかがえました。中学生のスマホの使い方は大人とは違います。だからこそ、適切に利用するには自分たちが主体的に考え、行動することが大切です。ただ、中学生ができることにも限界があります。中学生自身が取り組みや情報発信を進めながら、大人がその声に耳を傾け、いっしょに取り組んでいく必要があると思いました。」

スマホは生活を豊かにしてくれるもの

今回のワークショップを通じて、KDDIの担当者はどのようなことを感じたのか。また、今後の活動にどう生かしていくのか。「KDDIスマホ・ケータイ安全教室」を運営するKDDI サステナビリティ推進室の海崎千恵子、日野有子、峯 秀人に聞いた。

KDDI サステナビリティ推進室の海崎千恵子、日野有子、峯 秀人 KDDI サステナビリティ推進室の海崎千恵子、日野有子、峯 秀人

「文部科学省が推進するGIGAスクール構想や、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、子どものスマホ利用環境が大きく変わりつつあります。私たちが作成している動画や教材も、近年増えつつあるゲーム依存やゲーム内トラブルへの注意喚起を盛り込むなど、時代の変化に即してアップデートしています。今回のワークショップでは、先進的な取り組みを進める渚中学校の生徒のみなさんのお話を通じて、現役中学生のスマホ利用の実態や考え方に触れることができ、安心・安全なスマホとの付き合い方を提案するうえでのいいヒントになりました」(海崎)

「親や先生からの押し付けではなく、スマホとの付き合い方を生徒が自分たちで考え、主体的に行動する渚中学校の取り組みは素晴らしいと思いました。今後もこのようなかたちで子どもたちの生の声を聞きながら、動画や教材の制作に生かしていきたいです。お子さんのいるご家庭にとって、自分の子どもがスマホで何をしているのか、その実態を把握するのは難しいのが現状だと思います。こうしたワークショップで得た知見を、スマホ・ケータイ安全教室をはじめとするさまざまな活動を通じて積極的に発信していくことで、適切なスマホ利用についてみなさんが考えるきっかけづくりにしたいと思います」(日野)

「私は高校入学時にスマホデビューしました。当時は学校への持ち込みが禁止されているなど、『スマホ=悪』という捉え方が一般的だったように思います。その後、世の中の変化とともにスマホのあり方も変わっていき、『使い過ぎに気をつけながら、上手に使いこなそう』という方向にシフトしつつあると感じます。渚中学校の取り組みも、まさにそう。『スマホ=生活を豊かにしてくれるもの』と捉え、ルールや心構えを自分たちで主体的に考える。それを実践している生徒さんの声を聞くことができたのは有意義でした」(峯)

これからの時代を生きる子どもたちにとって、スマホやPCをはじめとするデジタル機器は欠かすことができないツールになってきている。KDDIはこれからも、安心で豊かなデジタル社会の実現に向けて、スマホの適切な利用に向けた取り組みを続けていく。

「KDDIスマホ・ケータイ安全教室(依存) 夢中になって」

文:TIME&SPACE編集部

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。