2021/09/16
アーティストを近くに感じられる動画アプリ「smash.」 縦型にこだわった開発の裏側とは
2020年10月に提供が開始された動画アプリ「smash.(スマッシュ)」はスマホでの視聴に特化し、5〜10分程度の短尺動画を配信するバーティカル(縦型)シアターアプリ。BTS、乃木坂46、Hey! Say! JUMPといった人気アーティストの作品をはじめとするさまざまなオリジナルコンテンツを配信し、若者のあいだで話題になっている。利用者数は右肩上がりで、2021年7月時点で132万ダウンロードを突破した。
smash.の最大の特徴は、すべての作品が「縦型」であること。
下の動画は、俳優の斎藤 工さんが企画プロデュース&出演したことで話題を呼んだ「Hitch×Hook」(2021年6月よりsmash.で独占配信中)のプロモーション映像。即興劇を取り入れた演出および縦型の魅力で、臨場感を楽しむことができる。
smash.を手掛けるのは、ライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」などを展開するSHOWROOM。また、KDDIも同社への出資や業務提携を通じて、同事業のサービス展開を支援する。
テレビや映画など一般的な映像作品は依然として「横型」が主流だが、近年はスマホの普及にともなって縦型の動画が増えつつある。なぜsmash.は縦型にこだわったのか?縦型であることのメリットとは?SHOWROOMと、KDDIの担当者に話を聞いた。
SHOWROOMの多田勇輝さんと荒川力哉さんは同社の新入社員で、コンテンツ制作やデータ分析を担当。嵐 亮太さんはsmash.の立ち上げから関わり、同事業の事業部長を務める。KDDIの川辺英介と木村樹里亜はSHOWROOMのメンバーとともにsmash.の運営やコンテンツ制作に携わっている。
「プロ×縦型」という新領域への挑戦
――まずはsmash.を立ち上げた経緯と、縦型動画に着目した理由を教えていただけますか?
嵐「私たちは以前からライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」を運営してきましたが、エンターテインメントを通じてより多くの人に感動を届けたいという思いから、新しい動画メディア事業の立ち上げに至りました。それがsmash.です。
新しい動画メディアを立ち上げるにあたって、既存の市場を「メディア(プロ)」と「プラットフォーム(アマチュア)」、「ディスプレイ(横型)」と「スマホ(縦型)」の4象限でマトリクス化して分析してみたところ、「プロ×縦型」という領域がすっぽりと空いていることがわかりました。」
嵐「縦型動画のサービス自体はそれまでも存在しましたが、いずれもアマチュアが投稿するプラットフォームで、プロが制作したハイクオリティな縦型動画を提供するサービスはありませんでした。私たちはそこを狙って挑戦していこうと考えました。
また、かつて映像はテレビなど横型のディスプレイで観ることが当たり前でしたが、早くからスマホに触れてきた若い世代にとっては縦型で観ることが身近になっています。そういった背景もあり、スマホでの視聴に特化した縦型に着目しました。」
荒川「私自身、現在23歳で、子どもの頃はテレビをよく観ていましたが、高校生になって自分のスマホを持ってからはTikTokやInstagramをよく観るようになりました。いまでは横型よりも縦型のほうがしっくりきます。」
多田「私も荒川と同い年ですが、同感です。私たちの世代にとって、映像はテレビではなく、スマホで観るのが当たり前。縦型であることに違和感はありません。」
「一対一」の没入感は縦型ならでは
――縦型と横型は、観る側にとってどのような違いがありますか?
嵐「縦型はスマホの規格に沿った設計です。わざわざ横に回転させなくても、全画面の迫力ある動画を楽しむことができます。また、横型は全体を広く映すことができるのに対し、縦型は「一対一」で見せるのに向いていることが特徴です。たとえばMV(ミュージックビデオ)の場合、アーティストとの距離が近く感じられ、横型よりも没入感が得られます。これを私たちは「手のひらが特等席。」というキャッチフレーズで表現しています。
たとえば、私は小学生のときからHey! Say! JUMPのファンなのですが、スマホの近い距離感で観て、一対一で見つめられると、私でもドキドキしてしまいます。」
多田「私の友人の乃木坂46のファンは、smash.でミュージックコンテンツを観て「キュン死しそう」と言っていました(笑)。それほど距離感の近さを感じられるのは縦型ならではだと思います。」
――コンテンツを制作するうえで苦労した点はありますか?
嵐「「プロ×縦型」のコンテンツはこれまでほとんど存在せず、イチから作り上げる必要があったので、その点はとても苦労しました。また、距離感の近さや、一対一の没入感といった縦型ならではのメリットは、動画を実際に観てもらえば一発で伝わるのですが、体験前のユーザーの方々に言葉で説明する難しさもありました。
どうすれば縦型の魅力を最大限活かしたコンテンツをつくれるのか?制作者側もアーティスト側も試行錯誤の連続でしたし、より良いコンテンツをお届けできるよう、いまも工夫や改善を続けています。ありがたいことに、新しい領域だからこそ縦型動画に挑戦してみたいというクリエイターも増えつつあります。」
川辺「嵐さんがおっしゃるように、「縦型×プロ」はこれまでになかった領域です。そこに対して革新的な挑戦を続けるSHOWROOMの姿勢に共感しています。私たちKDDIもコンテンツビジネスを手がけてきた知見や実績がありますので、これまで培ってきた経験をフィードバックしていければと思います。」
「好き」を通して広がる、つながる
――ユーザーからはどのような反応が寄せられていますか?
嵐「smash.にはPICKという機能があり、視聴中に2本の指先で画面をつまむだけでお気に入りの瞬間を画像や動画で切り取って保存できます。切り取ったPICKはコメントを付けてTwitterやLINEなど一部のSNS に投稿することも可能です。このPICK機能が当初の想定を上回るほど利用されていて、ユーザーさん同士で盛り上がっています。」
荒川「たとえばBTSのコンテンツのコメントを見てみると、自分が好きなアーティストに対して身悶えているファンが多い印象です。「○○が好き」というシンプルなコメントではなく「JINの寝顔が好き」、「目覚めた瞬間の表情がたまらない」といった細分化された話題で盛り上がっています。それも一対一の没入感が得られる縦型ならではだと思います。」
木村「ユーザーのみなさんにはPICK機能を利用して、自分の「好き」をほかの誰かと分かち合える空間を作ってもらいたいと思っています。アプリ内で他のユーザーがPICKした映像を一覧で見ることができるので、自分と似た嗜好をもった人と繋がることができるのも楽しいです。」
新しいエンタメを「通信」が支える
――smash.は縦型であることに加え、コンテンツ1本あたりが5〜10分程度の「短尺」であることも特徴です。短尺にこだわった理由とは?
嵐「日常生活のちょっとした隙間時間に楽しんでほしいというのが狙いです。たとえば、お蕎麦屋さんに入って、注文したお蕎麦が届くまでのあいだにコンテンツを1本観終えてしまうこともできます。ただ、smash.に並ぶ作品は、決して“ながら見”コンテンツではありません。smash.がこだわっているのは、「Short, but deep」であること。短い時間でも、心を揺さぶる作品に出会ってほしい。そんな想いを込めて、濃く、深いコンテンツを多数揃えています。」
川辺「私たちKDDIとしても、smash.はちょっとした隙間時間に楽しめる、日常生活に溶け込むプラットフォームだと考えています。私は読書が好きで、月に100冊以上読む本の虫。日常に潜む隙間時間をすべて読書にあてているほどです。かつては紙の本でしたが、最近はもっぱら電子書籍。スマホのロックを解除して1秒かからず読み始められるので、ストレスがありません。この体験をsmash.に当てはめると、ストレスなく動画を楽しむには、ストリーミングのための高速通信が不可欠です。smash.はもちろん4Gでも楽しめますが、高速・大容量・低遅延な5Gなら体験が劇的に変わります。」
嵐「昔と比べてコンテンツがあふれているなか、高画質な映像をストレスなく楽しめる環境が欠かせません。4Gから5Gへ、高速通信が普及するなかで、そのあたりのストレスがなくなりつつあります。画質は良ければ良いほど、得られる感動は大きい。元の映像自体は4Kや5Kの高画質で撮っているので、通信環境が整えば、配信する動画の画質を向上できる余地はあります。」
川辺「「5Gってなにがすごいの?」という人も、smash.を通じて「5Gってこういうことか!」ときっと実感してもらえるはずです。干からびた植木鉢の土に水を染み込ませるように、ぎっしりと氷が入ったグラスにコーラを注ぐように、日常生活の隙間にエンタメが溶け込む。そんな世界を当たり前にしていくためにも、KDDIの通信技術で下支えしていきたいですね。」
これからの5G時代を見据え、スマホでの視聴に特化した新感覚動画アプリ「smash.」。サービスの提供開始から約1年が経ち、人気アーティストのMVのほか、アニメやドラマなど、ここでしか観られないオリジナルコンテンツは日を追うごとに充実度を増している。縦型の特徴を生かした独創的で高品質なコンテンツは、普段から見慣れた横型とは違った視聴体験が得られるはず。まだ未体験の人はぜひ体験してみてほしい。
※「Hey!Say!JUMP」の書体はCentury Gothicが正式表記
縦型の魅力を体感!担当者のおすすめコンテンツ
多彩なコンテンツを揃えるsmash.のなかから、縦型の魅力を体感できる特におすすめの作品をご紹介!
■SHOWROOM 嵐さん
smash.オリジナルホラードラマ「スマホラー」
嵐「私のおすすめは「スマホラー」。ホラー映画の旗手・清水 崇監督がプロデュースを手がける、smash.オリジナルのホラードラマです。縦型なので左右の見える範囲が限られ、どこからなにが出てくるかわからない怖さがあります。」
■SHOWROOM 荒川さん
縦型ドラマ「人のスマホを見てはいけない」、地上波連動の音楽番組「MUSIC BLOOD」
荒川「「人のスマホを見てはいけない」は、人気YouTuber「だいにぐるーぷ」による縦型ドラマです。自分のスマホがジャックされたような疑似体験が味わえるのは、スマホでの視聴に特化したsmash.ならではだと思います。
「MUSIC BLOOD」は地上波と連動したコンテンツで、アーティストの裏側が垣間見えて面白いのでおすすめです。」
■SHOWROOM 多田さん
smash.オリジナルアニメ「暗黒家族 ワラビさん」、ラジオブースの様子が楽しめる「オールナイトニッポンX」
多田「「暗黒家族 ワラビさん」は、地上波では味わえないブラックユーモア満載のsmash.オリジナルアニメです。1本あたり4分程度なのでサクッと楽しめるのも魅力で、smash.らしさを体感できるコンテンツのひとつだと思います。
「オールナイトニッポンX」もおすすめで、特にフワちゃんの回が最高です。耳で聞いて楽しむのが普通だったラジオ番組を視覚的にも楽しむ体験が面白い。フワちゃんは毎回、いい意味で色々とやらかしてくれるのですが、それをラジオと連動する形で、smash.という場所で見られるのは特別感がありますね。
■KDDI 川辺
smash.で楽しむ新感覚バラエティ「ハライチのYAMi」、「オールナイトニッポンX」
川辺「私のおすすめは「ハライチのYAMi」。テレビ東京から独立した佐久間プロデューサーが、大外しのリスクを度外視したホームラン狙いのフルスイングで作るチャレンジングな番組です。本当に好き勝手できるsmash.だからこそ生まれる新しい「笑い」は、現代アートだと思います。特に、初めて会ったギャルと芸人とで漫才をする「ギャル漫グランプリ」という企画は最高でした。漫才としてもしっかりできていて、本当に面白いと思います。
多田さんと同じく、私も「フワちゃんのオールナイトニッポンX」が好きです。ほかのラジオパーソナリティとは一線を画す激しさがあって、仕事中のBGMのつもりで流していても気持ちが持っていかれてしまい、つい仕事の手が止まってしまいます(笑)。
■KDDI 木村
乃木坂46「ごめんねFingers crossed」オリジナルバーティカルMV
木村「乃木坂46のミュージックコンテンツは、ファンならずとも必見。縦型なので距離が近く感じられ、ひとりひとりのかわいさがさらに際立っています。一対一で向かい合っているような感覚にもなり、ドキドキしながらつい見入ってしまいます。」
「smash.」サービス概要
・料金:無料版(一部コンテンツを視聴可能) / 有料版(月額550円[税込]で全コンテンツ見放題、auご契約の方は加入時より6カ月間無料)
※ご加入の料金プランにより、ご利用状況に応じて通信速度制限あり。詳しくはau/UQホームページでご確認ください。
※povoは6カ月間無料特典の対象外となります。
・提供会社:SHOWROOM株式会社
・サービス詳細:https://smash-media.jp
・利用方法:
【android】Google Play
【iOS】App store
・SNS:@smash_media_jp
文:TIME&SPACE編集部
撮影:冨田味我
※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。