2021/09/10
スマホを見ながら寝落ちすると眠りの質が低下する?睡眠測定アプリで検証してみた
おうち時間が増加して、スマホと接する時間が長くなったという人も多いだろう。なかには日中だけでなく、帰宅してからもスマホをいじりっぱなし……夜はベッドでスマホを見ながらそのまま寝落ち、という人もいるのではないだろうか。
こういった生活が習慣化した場合、健康に影響はあるのだろうか? そこで、本記事では睡眠の質を測定し、「スマホと睡眠」について検証してみた。
KDDIでは睡眠の質を簡単に計測し、より良い睡眠を目指すことができる機器を提供している。生活を快適にするためのスマートホームサービス「au HOME」の「睡眠モニター 01」だ。
こちらをマットレスの下に設置し、オリジナルアプリ「Real Sleep」をインストールしたスマホとBluetooth接続して入眠することで、睡眠の質を数値化して計測。眠りの質を採点・記録してくれるというわけだ。
では、さっそく「スマホと睡眠」について検証してみることにしよう。
au HOMEの「睡眠モニター 01」を使ってみた
今回、検証に協力してくれたのは飯田菜々さん。舞台を中心に芸能活動中の26歳だ。
飯田さんには、「睡眠モニター 01」を実際に使って、以下の2パターンの睡眠データを計測してもらった。
①「ベッドで1時間ほどスマホを見ながら入眠」
②「眠る2時間前からスマホを見ずに入眠」
そうして、これらの眠りの質に違いがあるのかを調べた。
まずは「睡眠モニター 01」で、実際に睡眠データ測定を行った。飯田さんに「睡眠モニター01」と「Real Sleep」アプリをインストールしたAndroidスマホを託し、測定と自撮りをお願いした。三脚も使いつつ、普段SNSなどで活用しているテクニックでいろんなシーンを撮ってくれた。
手順は簡単だ。「睡眠モニター 01」をマットレスの下に差し込み、スマホアプリ「Real Sleep」を立ち上げてBluetoothでスマホと接続。これで完了。
飯田さんは床に直接置いたマットレス厚み20cmで眠っているそうだが、「睡眠モニター 01」は厚み50cmまで対応可能だ。
①初日「ベッドで1時間ほどスマホを見ながら入眠」
ベッドに入ってからスマホを見る人は少なくないだろう。SNSをチェックしたり動画を観たり明日の予定を確認したり。飯田さんも普段はスマホを見ながら眠っているという。
②2日目「眠る2時間前からスマホを見ずに入眠」
スマホを寝室に持ち込まず、就寝時間の2時間前からは別の部屋に置いた。ブラッシングなどしながら時間を過ごしたが、「すぐにスマホを見たくなって困りました(笑)」と飯田さん。
果たしてどんなデータが取得できたのか
そうして取得したそれぞれの睡眠データがこちら。
【ベッドで1時間ほどスマホを見ながら入眠】
【眠る2時間前からスマホなしで入眠】
左がそれぞれ「睡眠スコア」。その日の睡眠を100点満点で採点したもの。起床規則性(毎日同じ時間に起きているか)、睡眠時間(睡眠時間の長さ)、寝付き(ベッドに入ってから眠るまでの時間)、中途覚醒(睡眠後、どれだけ目覚めずに眠り続けられるか)、深い睡眠(深い睡眠状態にある時間)という5項目×20点満点で採点する。
右は「睡眠ステージ」。ユーザーが起きているのか眠っているのか、眠っているとすればそれは深い睡眠か、浅い睡眠か、レム睡眠かを記録したものだ。計測装置がベッド上にいるユーザーの「身体の動き」「呼吸数」「心拍数」を計測、それらの数値から独自のアルゴリズムを活用して睡眠の状態を導き出す。
なお「睡眠モニター 01」には、測定した睡眠データを元に、アプリ上で睡眠アドバイスがもらえるサービスもある。
今回の飯田さんの睡眠スコアには1点しか差がないが、睡眠ステージは明らかに異なるグラフになっている。ここにどんな違いがあるのだろうか。
スマホあり/なしの特徴を「ニューロスペース」に聞いた
飯田さんの睡眠データを詳しく分析してもらうために、「Real Sleep」を監修している「ニューロスペース」を訪問。
同社は、先端技術を駆使して人々の睡眠における課題を解決する「スリープテック」(睡眠テクノロジー)を展開している。
質の良い眠りとはなにか、実践するにはどうすればいいか、そして眠るときのスマホとの付き合い方とは? 今回、お話を伺うのは代表取締役CEOの小林孝徳さん。(なお、ニューロスペースでは通常こうしたサービスは行っていません。)
まずはスマホを見た日と、見ていない日の顕著な眠りの違いから。
飯田「よろしくお願いします!さっそくですが、スマホあり/なしの睡眠スコアの差はわずか1点でした。スマホは睡眠の質にはあまり影響がないということですか?」
小林「飯田さんの場合、重要なのは睡眠ステージの中身です。こちらがスマホを見ていない日の睡眠ステージです。特徴的なのは、睡眠後すぐに浅い睡眠(薄いピンク)から深い睡眠(濃いピンク)に入っていること。」
【スマホを見ずに眠った際の睡眠データ】
飯田「ホントですね。これはいいことなんですか?」
小林「はい。睡眠前半に深い睡眠が出現することが、質の良い眠りを示す重要なポイントです。深い睡眠中には、脳と身体両方の休息が行われています。飯田さんの場合は、睡眠の前半にしっかり濃いピンクの深い睡眠が出ているのがいいですね。一方で、中盤から後半にかけても深い睡眠が出ています。夜型でロングスリーパーの方に多い傾向です。」
飯田「そうなんです!次の日に予定がなにもないと、何時間でも寝られちゃうんです(笑)。すごいです!なんか占い師の方とお話ししてるみたい。」
一方で、眠る直前までスマホを見ていた日のデータには、質の良くない睡眠の傾向が顕著に出ていた。
小林「先ほどのように、浅い睡眠(薄いピンク)から深い睡眠(濃いピンク)へと入っていくといいのですが、浅い睡眠のあと、覚醒状態(グレー)が続いています。」
【ベッドで1時間ほどスマホを見ながら入眠】
飯田「眠ってるつもりなのに、目が覚めてるってことですか?」
小林「そうです。覚醒状態が断続的に現れると睡眠効率が悪くなり、質の良くない眠りになります。それが翌朝のだるさや疲れにつながります。」
小林さんは、スマートフォンには睡眠に影響するいくつかの要素があるという。
小林「まず「光」です。光の刺激が脳に刺激をあたえてしまい寝付きにくい状態また質が悪い状態を導いてしまいます。次に「情報」。ニュースやSNSなどを読むと、脳がそれを処理するモードになる。そして「条件づけ」。人間の脳は場所と行為をセットで記憶する特徴があります。ベッドで毎日スマホをいじると、脳が『ここは情報をインプットする場所だ』と覚えてしまうんです。」
飯田「私、完全にそのタイプですね。だからできる限り遠くに置いて、ナイトモードで画面を暗くして、なるべく目に光が入らないようにして使ってます。」
小林「それは大正解ですね!私自身は夜8時から朝6時まで、自動でナイトモードになるように設定しています。質の良い睡眠の準備としては、就寝2時間前からはスマホを見ないのがベストなのですが、現実的には難しいと思うので、見るのはせいぜい就寝30分前までがおすすめです。」
質の良い睡眠は心身ともによい影響を与える
小林さんによると、睡眠は人間の心身にさまざまな良い効果をもたらすという。
たとえば、入眠後3時間ほどのあいだに深い眠りが訪れれば、成長ホルモンが分泌され、疲れた肌や運動でダメージを受けた筋繊維が再生したりもするのだ。
小林「睡眠は記憶にも強く影響します。飯田さんはお芝居の台本を覚えたりするのは得意ですか?」
飯田「得意ではないですが、一所懸命がんばって覚えてます。」
小林「台本は、寝る前にしっかり読んでしっかり眠ると覚えやすいと思います。学んだことが記憶に定着するのは睡眠中です。そして朝起きたときにもう1回読み返すと、記憶の定着率がグッと良くなります。」
小林「レム睡眠とは、脳は比較的活発に動いていて身体が休んでいる睡眠の状態で、このときにも脳内で記憶の整理や定着が行われます。台本はもちろん、試験勉強などでも、覚えたいことがあるときは眠ったほうがいいですね。」
飯田「そうなんですね! いいことを聞きました!」
小林「なにかを覚えるだけでなく忘れるのも睡眠の効能です。その日なにか失敗したとします。人間って「失敗した」という経験と一緒に「失敗してイヤだった」という感情もセットにして覚えてしまう性質があるのですが、レム睡眠中には記憶の整理が行われます。「失敗した」という経験から「イヤだった」ネガティブな感情が切り離されて記憶を定着することができるんです。」
飯田「あ、寝たらイヤなことは忘れるっていう……。」
小林「そう、それです!」
質の良い睡眠の準備は日中から始まっている
寝入ってから3時間ほどのあいだの深い睡眠に、中盤から後半にかけてのレム睡眠。これらがバランス良く出現するのが、質の良い睡眠なのだ。では、そのために就寝までにすべき準備について、小林さんから紹介していただこう。
・深部体温を調節する
深部体温(体の内部の体温)は、起床後約11時間後にいちばん高くなります。この時間が活動のピーク。そこから深部体温は徐々に下がっていきます。そのタイミングであえて一時的に深部体温を上げるんです。すると体内時計が元に戻そうとして深部体温を急速に下げる。それで一気に眠くなります。就寝時間1時間前に入浴するのが一般的ですが、カフェインの入っていない温かい飲み物を飲むのもいいですね。
・リズムを崩さない
仮眠自体はいいことだと思います。問題はタイミング。日中の隙間時間に少し眠るのはいいのですが、夜、帰りの電車の中でしっかり眠ってしまうのはあまり良くないですね。夜にきちんと眠る『本睡眠』に影響が出て、深い睡眠に入りにくくなってしまいます。同様に、休日などに長時間まとめて眠る、いわゆる“寝だめ”も睡眠のリズムを崩しがちなので、あまりおすすめはできません。
・起きたら、目に光を入れる
朝、目に光を入れることで体内時計がリセットされて、新しい1日がはじまります。寝起きの悪い人は、目覚めた瞬間にカーテンを開けて朝日を見ることで、すっきり目覚めることができます。逆にまだ眠りたいときには、できるだけ日の光を目に入れないこと。不意に光を見ると目覚めてしまい、睡眠のリズムが狂いかねません。遮光カーテンなどで光の調節をすることも重要です。
よりよいライフスタイルのために通信会社ができること
最後に、通信会社が「睡眠」を取り扱うことになった経緯と、ライフスタイルにどう関わっていくのかをKDDIの畑瀬泰博に聞いた。
「睡眠モニター 01」を用いることで、「au HOME」に睡眠という要素を組み入れたのが畑瀬だ。
「『au Home』というスマートホームのサービスをはじめたときに、家を通信テクノロジーで快適にするなかで、睡眠は避けて通れないテーマだと考えていました。というのも、日本人の半分以上が睡眠に関して問題を抱えているというデータがあったからです。
スマホの普及で多くの人が歩数計を使うようになり、日々の自分の歩数を認識し、健康のために歩くことが重要だと考えるようになりました。同様に、『睡眠モニター 01』と『Real Sleep』を使うことで、まずは睡眠を“見える化”して、どのくらい自分がきちんと眠れているかを正確に把握できれば、睡眠から生活習慣を変えるきっかけになるのではないかと思っています」
通信やAIといったテクノロジーによって、歩数や体温、血圧などと同じように、睡眠の質も簡単に計測し、データ化できるようになった。KDDIはこれからも通信のチカラで、ひとり一人のライフスタイルに合わせて、快適で健康な生活をサポートしていく。
■睡眠モニターを利用するには
・au HOMEに加入する
まずはauユーザー、またはauひかりユーザー向けのサービス「au HOME」への加入する方法。「au HOME」は住まいの不便や困りごとを解決し、より安全・安心な暮らしを実現するためのスマートホームサービスだ。このサービスに加入し、「睡眠モニター 01」を購入して登録すれば、眠りにまつわるさまざまなデータを知ることができる。
・「まくらぼ」を利用
オーダーメイド枕の店「まくらぼ」とKDDIとのコラボで、「まくらぼ」店舗で販売するマットレスにあらかじめ「睡眠モニター 01」を設置するサービスも展開。「まくらぼ」店舗で対象のマットレスを購入後、「まくらぼ × with HOME」への加入と、専用アプリ「Real Sleep」のダウンロードで利用が可能に。
・東横INNに宿泊して体験
9月10日より、ホテルチェーン「東横INN」に導入。東横INN公式アプリをダウンロードして対象ルームに宿泊すれば、無料で睡眠データを測定し、測定結果と簡単なアドバイスを確認することができる「睡眠PJ(プロジェクト)」をスタート。まずは東横INN大宮駅東口(276室)、東横INN広島駅スタジアム前(154室)から。2022年3月までに約800室で提供予定。
写真:正慶まゆみ
文:TIME&SPACE編集部
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