2021/02/15

新日本フィルの演奏で楽器の音色に迫る!KDDI『音のVR』でクラシック音楽の魅力を再発見

KDDIとKDDI総合研究所は、2021年2月より「新音楽視聴体験 音のVR」アプリで、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏による新しいコンテンツの配信を開始した。

新日本フィルの音のVRコンテンツより
新日本フィルの音のVRコンテンツより 新音楽視聴体験 音のVR」コンテンツ、新日本フィルハーモニー交響楽団演奏の「ボレロ」

「音のVR」とは、KDDI総合研究所による独自の技術。スマホやタブレットで専用アプリを使い、演奏中の好きなパートを画面上でピンチアウト(拡大)すると、映像と同時に、その歌声や楽器の音色にも寄って視聴することができるというもの。まるで演奏している舞台上を自由に移動しながらそれぞれの楽器に耳を傾けるような感覚を体験できる。

新日本フィルハーモニー交響楽団とKDDIは、新型コロナウイルス感染症の影響で、いまだコンサートの制限が続いているなか、5G時代の最新通信技術を活用して自宅で楽しめる新しいクラシック音楽鑑賞の提案として、音のVRのコンテンツを企画した。とくにこれまでクラシックに馴染みのなかった人にもわかりやすくその魅力を伝えられるよう、スマートフォンで楽しめるようになっている。

新日本フィルの音のVRコンテンツより 「新音楽視聴体験 音のVR」コンテンツより。各楽器の名前も表示される

今回はオーケストラで使われている個々の楽器に着目。視聴者が自ら興味を持った楽器やパートにフォーカスすることで、どんな音色でどのように演奏されているのかを楽しむことができる。

「新音楽視聴体験 音のVR」アプリのダウンロードはこちら ※2021年2月5日現在、iOSのみでの配信となります。

オーケストラを構成する各パートの演奏を「音のVR」で徹底解剖!

こちらが今回の収録の模様を交えたデモムービー。

新日本フィルハーモニー交響楽団は、フランチャイズホールである「すみだトリフォニーホール」で、総勢19名による「ボレロ」のほか、弦楽器・木管楽器・金管楽器・打楽器の各パートによる演奏を1曲ずつ収録した。

弦楽器は、ヴァイオリン2名、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの五重奏でパッヘルベル作曲「カノン」を演奏。

新日本フィルの弦楽四重奏

木管楽器は、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンの五重奏でハイドン作曲「ディベルティメント変ロ長調第1、2楽章」を演奏

新日本フィルの木管五重奏

金管楽器はトランペット2名、トロンボーン、ホルン、チューバの五重奏でオッフェンバック作曲「天国と地獄より『カンカン』」を演奏。

新日本フィルの金管五重奏

打楽器は4人で10種類以上の楽器を使い、アクトン・オストリン作曲「パーカッション組曲」を演奏した。

新日本フィルの打楽器アンサンブル

そして、総勢19人でラベル作曲「ボレロ」を演奏。

新日本フィルのオーケストラ19名による演奏。

音のVRコンテンツの収録は、ステージ中央に設置した360度マイクと360度カメラを取り囲んで円型に並んで演奏される。

音のVR収録のための機材 収録用の360度マイク(上)と360度カメラ(下)

では、それぞれの楽曲について、「音のVR」を利用した際の聴きどころを、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏者のコメントとともに紹介していこう。

弦楽五重奏:音楽の授業で聴いたことのある「カノン」

ドイツのヨハン・パッヘルベルが作曲し、「パッヘルベルのカノン」としても知られ、音楽の授業やCMなどでもきっと耳にしたことがあるはずだ。

「音のVR」新日本フィル弦楽五重奏より

今回の収録用に楽曲のアレンジを行ったヴァイオリンのビルマン聡平さんは「弦楽器の良さが発揮できる曲」だという。

新日本フィルのビルマン聡平さん 新日本フィルハーモニー交響楽団主席第2ヴァイオリン奏者・ビルマン聡平さん

「ヴァイオリンは高く伸びやかな音が魅力、ヴィオラは少し低くて人間の声に近い、落ち着く音です。コントラバスは野太くてよく響く。チェロはメロディーも伴奏も担当できる音域の広い楽器で、『カノン』ではコントラバスとともに、通奏低音という伴奏を弾き、そこでのデュエットが美しいので、注目ください。また今回は、コントラバスやチェロでもメロディーを弾く箇所がありますので、そこは『音のVR』でフォーカスして聴いていただきたいですね。メロディーはもちろん、その下でどんな和音が鳴っているのか、ぜひ体験してください」

木管五重奏:木管のさまざまな音色が楽しめる「ディベルティメント」

「ディベルティメント変ロ長調第1、2楽章」はハイドンが残した、木管楽器の持ち味を存分に生かした合奏曲。

「音のVR」新日本フィル木管五重奏より

オーボエ客員首席奏者でありつつ音大でも教鞭を執る古部賢一さんは、「木管担当の学生がまず最初に取り組むくらい、木管楽器のエッセンスが詰まっている」という。

新日本フィルの古部賢一さん 新日本フィルハーモニー交響楽団客員主席オーボエ奏者・古部賢一さん

「木管楽器は金管楽器や弦楽器と違って、鳴る原理がすべて違うんです。たとえば、フルートはジュースの瓶みたいに鳴らす。オーボエとファゴットはリードという薄片を2枚震わせて吹きますが、リードの扱い方がまったく違います。そして、クラリネットのリードは1枚。木管五重奏では、すべての楽器が異なる原理で音を発するので、音色もはっきりと違うんです。そのぶん、ハーモナイズ(調和させること)が難しいんですが、まとまると美しい。ぜひ、それぞれの音色とハーモニーを対比させながら聴いてみてください」

金管五重奏:運動会でもおなじみの「天国と地獄より『カンカン』」

「カンカン」はジャック・オッフェンバックのつくったオペレッタ「天国と地獄」の序曲。運動会の定番的BGMとしても親しまれている曲だ。

「音のVR」新日本フィル金管五重奏より

「『カンカン』はキラッとした金管の派手な音色にぴったりなんですよ」と、トロンボーンの山口尚人さん。

新日本フィルの山口尚人さん 新日本フィルハーモニー交響楽団副主席トロンボーン奏者・山口尚人さん

「トランペットはオーケストラのなかでも壮大なメロディーを奏でる楽器です。この曲でもおもにメロディーを吹いていますが、今回のアレンジはほかの楽器もメロディーを吹くのが特徴。ホルンは柔らかい音色でオーケストラでは前面に出てきてソロで聴かせることはあまりないですし、トロンボーンやチューバも、低音でハーモニーの土台をつくっている楽器。フォーカスして聴く機会は少ないと思うのでぜひ『音のVR』で楽しんでみてください。とくに『カンカン』は同じメロディーを違う楽器で吹き分ける構成にしていますので、聴き比べやすいと思います」

音色の異なる打楽器12種登場!「パーカッション組曲」

4つの楽章からなる打楽器アンサンブル「パーカッション組曲」。今回の収録では4人の打楽器奏者が、それぞれ3つの楽器を手に演奏した。つまり全部で12種類の楽器が使用される。

「音のVR」新日本フィル打楽器アンサンブルより
「音のVR」新日本フィル打楽器アンサンブルより

①小太鼓/②スティック/③トライアングル
④中太鼓/⑤ウッドブロック高音/⑥サスペンデッドシンバル高音
⑦バスドラム/⑧ウッドブロック低音/⑨サスペンデッドシンバル低音
⑩ティンパニー/⑪木魚/⑫グロッケンシュピール

この打楽器曲、「実は4つの楽章にそれぞれ役割があるんです」と、ティンパニー奏者の川瀬達也さんは話す。

新日本フィルの川瀬達也さん 新日本フィルハーモニー交響楽団主席ティンパニー奏者・川瀬達也さん

「第一楽章は小太鼓やティンパニーといった革を張った楽器(①④⑦⑩)、第二楽章はドラムのスティックやウッドブロックなどの木を打ち鳴らす楽器(②⑤⑧⑪)、第三楽章はトライアングルやグロッケンシュピールなど金属製の楽器(③⑥⑨⑫)と、それぞれ音色の異なる打楽器で演奏する構成になっているんです。まずはその点に注目しながら音の違いを楽しんでほしいです。また第四楽章では、それらすべての楽器を持ち替えながら演奏しています。単純な楽譜ですが、持ち替えが忙しくて演奏が難しい。その様子もあわせて観てください」

すべての楽器が一体となる管弦楽アンサンブル

そして総勢19名で演奏する楽曲は、ラベル作曲の「ボレロ」だ。これも、誰もが知る有名曲だ。小太鼓がリズムを刻むなか、さまざまな楽器がメロディーを紡いでいく。

「ボレロ」を演奏する新日本フィルのメンバー

今回、金管五重奏のリーダーでもあるトロンボーンの山口尚人さんが編曲した。

「本来は、管楽器がメロディーを受け渡していく『ボレロ』ですが、今回はすべての楽器がメロディーを演奏するように編曲しました。また、個別の楽器だけでなく、グループごとに役割をもたせています。弦、木管、金管、打楽器が曲中にどんな表情を見せるのか、ぜひ『音のVR』で楽器の音色にフォーカスして聴いてみてください」

新日本フィルハーモニー交響楽団事業部長の貝原正三さんは、そんな「ボレロ」を今回の取り組みの象徴だという。

新日本フィルの貝原正三さん 新日本フィルハーモニー交響楽団事業部長・貝原正三さん

「『ボレロ』ではすべての楽器の音色が分かるよう編曲がなされました。コロナの影響でこうしてオーケストラで演奏する機会は、ほぼ自主公演の定期演奏会に限られます。通常なら、ヨーロッパから招聘する指揮者も来日できておりません。その様ななかで『音のVR』のような取り組みをきっかけに、とくに若いみなさまが楽器に興味を持ち音楽を好きになっていただけたらと思います。クラシックの名曲を楽しみながら『音のVR』を体験されましたら、ぜひコンサートホールの生の音を聴いてみてください。100人のオーケストラのアンサンブルはすごい迫力です。必ずや感動して頂ける事と思います。すみだトリフォニーホールでお待ちしております」

オーケストラの挑戦を技術でサポートし、ファンの裾野を広げる

「音のVR」を開発したKDDI総合研究所の堀内俊治に、今回の取り組みにおける新たな達成点と、今後のビジョンについて聞いた。

KDDI研究所の堀内俊治 KDDI総合研究所 イノベーションセンター・マルチモーダルコミュニケーショングループ 堀内俊治

「今回は新たなチャレンジとして『音のVR』の3Dサラウンド音源の制作にあたり、360°マイクだけでなく、天井吊りマイクなどから方向ごとの音源を合成、ミックスして使用しました。これにより、より多くの楽器数での演奏も、高い精度で『音のVR』コンテンツとして制作できるようになりました。また弦に触れる音やピストンを押す音、バチを置く音など、演奏以外の楽器の操作音も生々しく聴こえます。そこもあわせて楽しんでいただけましたら幸いです」

楽器数の多いオーケストラの演奏は吊りマイクで収録をアシスト 今回は初めて「音のVR」で吊りマイクを使用。楽器数の多い演奏にも対応できるようになった

クラシックファンにはこれまでになかった音楽視聴の楽しみ方を、クラシック音楽に親しみのなかった人や、これまでオーケストラを聴く機会がなかった人にはより気軽に本物の音に触れてもらえるように。

アフターコロナに向けた挑戦や、新しい音楽鑑賞への提案をKDDIは通信のチカラでサポートしていく。社会課題の解決や、ワクワクを提案し続けるために、KDDIはこれからもパートナーとともに新しい体験価値を提供し、社会の持続的な成長・発展を目指していく。

文:TIME & SPACE編集部
写真:正慶真弓

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