2020/12/01

『いっき』とは本来どんなゲームだったのか?【35年目の真実】

こんにちは、ライターのギャラクシーです。

今 僕は、往年の名作ゲーム『いっき』をスマホでプレイしています。auスマートパスプレミアム会員の特典のひとつとして、他にも色んなゲームが遊べるんです。

 

『いっき』は1985年に発売されたゲームですが、その特殊な難易度のせいで、僕の学校では「何なんだよこのゲームは!???」とさじを投げた子がほとんどでした。しかし大人になった今なら、35年前のシンプルなゲームなんて―

 

余裕でクリアできるわけですよ!!!

 

嘘よね~ん

 

いや無理! 何年経とうが難しいものは難しい。クリアできる人いるのこれ?

ほんと、何なんだよこのゲームは!?

 

というわけで、作った人に直接「何なんですか?」と聞くために、サン電子株式会社にやってきました。自社のゲームブランドサンソフトから、『いっき』、『アトランチスの謎』など、数々の人気ソフトを発表してきた会社です。

 

お話を伺ったのはこちらのお二人。『いっき』とはどういうゲームだったのか、35年越しに聞いてみましょう!

 

auスマートパスプレミアムは、動画を見放題で楽しめたり、映画館を割引価格で利用できたり、色々な特典があるサービスです

※auユーザー以外でも利用できます!

 

特典のひとつ、“クラシックゲーム”では、『いっき』などのサンソフトゲームはもちろん、『ゼビウス』や『くにおくんシリーズ』などの名作ゲームが、auスマートパスプレミアム会員であれば、ゲーム内課金もアプリのダウンロードも不要でお楽しみいただけます!

まずはどんなゲームが遊べるのか、一覧だけでもチェックしてみましょう!

 

 

本来の『いっき』はもっと“やりやすい”ゲームだった?

gyala「今日はよろしくお願いします! auスマートパスプレミアムでクラシックゲームが遊べるようになったということで、名作『いっき』について教えてください」

tkuc「懐かしいですね~。あれを作ってたのは1985年、23歳か24歳の頃だと思います」

smzs「未だにこうして話題になり、スマパスに収録して頂けるのは、有り難いことです」

gyala「プレイした誰もが忘れ得ぬ、思い出のゲームだと思います。そもそも農民が一揆するっていうオンリーワンのゲームを、忘れられるわけがない」

tkuc「昔のサン電子にはゲームを開発する専門の部署がなくて、コーヒーサーバーとかパチンコとかを作っている『開発部』の一角で、ひっそりとアーケード用のゲームを作ってました。『いっき』も元はアーケードゲームだったんですよ」

smzs「FCのソフトを作るようになってから、やっと専門的にゲームを作る部署ができまして、それが『サンソフト』です。一発目のタイトルが『スーパーアラビアン』、続いて『ルート16ターボ』、『いっき』は三番目ですね」

tkuc「当初は人数も少なくて、常時『いっき』に携わってたのは2~3人という状況でした」

gyala「そんな少人数で作られてたのか……。発売当時、僕は小学生だったんですが、周りにクリアした友だちがほぼ居ませんでした。たいへん特殊な難易度のせいで、その~……クソゲー……と呼ぶ友だちもいました。すいません」

 

tkuc「わはは、いや、言われ慣れてるんで大丈夫です(笑)。僕も『難しすぎる』とか『竹槍 使えね~』とか色々な意見を聞きましたけども、実はアーケード版はもうちょっとプレイしやすいゲームバランスだったんですよ」

gyala「え! そうなんですか!?」

smzs「『いっき』の死因として、突然現れた敵にやられるっていうパターンが多いと思いますが、アーケード版は“敵が出現する”というモーションが用意されてるんです。だから『あ、敵が来るぞ!あっちに逃げよう』と考える一瞬の時間がある」

gyala「アーケード版ではもう少し余裕があったと。なんで削っちゃったんですか!???」

tkuc「容量の都合で削らざるを得なかったんです。アーケード版と比較すると、容量は4分の一くらいになっちゃいましたからね。FC版ユーザーからの低い評価を聞くと、『本当はもっとプレイしやすいのに……』と悔しかったですよ」

gyala「昔のゲームには必ずついてまわる問題ですね」

tkuc「他にも、アーケード版では小判レーダーマップみたいなものがあって探しやすいんですけど、それもカットされちゃって。探し回ってるうちにやられてしまうことも……」

gyala「あるあるだわ~」

smzs「アーケード版では画面上の敵を一掃する便利アイテムとかもありましたよね」

gyala「つまり、すごい削られてるんですね。『いっき』といえば、武器である竹槍が役立たないことで有名でしたが、アーケード版ではどうだったんですか?」

 

※いっきのデフォルト武器は飛び道具である「鎌」(8方向に距離攻撃できる)ですが、途中で手に入る「竹槍」は前方距離しか攻撃できず、後ろから襲ってくる敵を倒すのが困難

 

tkuc「竹槍が前方近距離しか攻撃できないというのは同じなんですけど、アーケードでは“前方向からの手裏剣に対して無敵”というメリットがありました。FC版ではそのメリットが削られてしまったので、単に使いにくい弱体化ウェポンになっちゃったかも」

gyala「oh...アーケードからの移植というのは、サンソフトさんが自社でおこなったんですか?」

smzs「外部の会社への発注ですね。当時はほとんどそのケースじゃないかな」

tkuc「今挙げたゲームバランス的な部分もそうですが、一番ショックだったのは、FC版ではステージが8面(8パターン)から、4面(4パターン)になってしまったこと。本当はもっとバラエティ豊かなステージ構成だったんです」

gyala「外注先に『8面まで入れてよ!』とは言わなかったんですか?」

tkuc「いや、その外注先はすごく有名で腕のいい会社なんですよ。それでも、当時の移植は本当にカツカツに削らなければとてもROMに入り切らなかった。どのメーカーも泣く泣くゴッソリ削ってたんですね。だから、一生懸命ギリギリ限界まで入れてくれたんだろうなっていうのは、僕らもわかってて」

smzs「とても言えないですね」

gyala「ちなみにFC版『いっき』って、容量はどれくらいだったんですか?」

tkuc「128Kビット(16Kバイト)のROMですね

gyala「えー!! そんな少ない容量で作られてるんだあのゲーム!」

最近のゲーム|およそ20GB(2000万Kバイト)=125万倍くらい

スマホの写真一枚|およそ3MB(3000Kバイト)=187倍くらい

※注:めちゃめちゃざっくりした数値です

↑画質を落としまくったこの写真一枚の容量が、およそ16Kバイトくらいです(この一枚と同じ容量でゲーム一本作ってたのすごい!)

 

tkuc「あの頃256KビットのROMは、まだまだ高価な時期でした。営業部からの『256KのROMだと利益を出すのがキツいかも』みたいな意見を汲んで、128Kにしたんですよ」

gyala「壮絶な“削り”が必要な時代だったんですね。丸太をえんぴつ一本にするくらいの」

smzs「そういう状況だから、当然グラフィックの精度も落とすしかなかった」

tkuc「そもそもFCの解像度は256×224くらいでしたからね。今の標準的なゲームやスマホの画面(フルHD)は1920×1080、次世代機なんかだと4Kが標準だから3840×2160くらいある」

gyala「畳と切手くらい大きさが違うじゃないですか

 

ざっくり比較するとこんな感じ

 

gyala「ここまで話を聞いていて、FC版『いっき』はアーケード版からかなり要素を削って販売されたことがわかりました。ということは、あまり売れなかったのでしょうか?」

tkuc「いや、それが……」

 

「ムチャクチャ売れたんですよね……」

 

gyala「えー! そうなんですか!?」

tkuc「80万本くらい売れましたね

gyala「すごっ! 確かに、僕のクラスではみんな持ってた気がしますけど」

smzs「弊社が家庭用で出したゲームの中では、一番売れたんじゃないかな」

gyala「そんなに売れた理由って、何だったんでしょうか」

tkuc「アーケード版がかなり人気あったので、そこから人が流れてくれたのが大きいです。急いで移植をしたおかげで、うまく流れができた」

smzs「あと他にはないゲームだったっていうのがあるんじゃないでしょうか」

gyala「当時小学生でしたが、あの頃は剣と魔法のファンタジーとか、戦闘機のシューティングとか、“かっこいいもの”が溢れかえってました。“農民が鎌を投げて忍者と戦う”っていう、それだけで小学生にはおかしくて、ウケてましたね」

 

 

『いっき』誕生秘話

gyala「『いっき』って、かなり特殊なゲームですよね。誰が、どのように思いついたんでしょうか」

tkuc「最初にアーケードゲームの開発会議で、上司のKさん(現在はすでに退社)が、『こういうゲームを作りたい』と構想を語ってくれたんですね。なので、あえて誰が監督かというと、Kさんだと思います。当初は兵士が主人公で、戦場を舞台にしたゲームだったんですよ」

smzs「えっ、それ僕も初めて聞きました」

gyala「まったく別物じゃないですか! どういう内容だったんですか?」

tkuc「一人プレイなんだけどキャラクター2体を切り替えながら戦場を進んでいく、というのが売りでした。キャラAを茂みから援護射撃させて、その隙に使用キャラを切り替えて、キャラBが突撃する、みたいな」

 

こんな感じ?

 

gyala「それを一人のプレイヤーが操作するってことですよね? 画期的すぎる」

tkuc「そう、画期的すぎた。ある会社に売り込みに行ったら、ボロクソに言われました。操作が複雑で難しすぎるとか、キャラクターを切り替えながら進むなんて普通のプレイヤーはついていけない、とか。今でもはっきり憶えてるんですが、『作り手の自己満足では?』とまで言われました」

gyala「たかが数分プレイしただけで好き勝手なこと言いやがって!って思いました?」

tkuc「いえ、『これ難しすぎるよな』という自覚はあったんで」

gyala「自覚があったのに何で売り込みに行ったんだ……」

tkuc「会社に帰って会議を開き、『やっぱり操作するキャラは一体だけにしよう』となりました」

smzs「やっぱり(笑)」

tkuc「ただそうなると、『当時よくあった普通のゲーム』だから、何か他とは違うアイデアが欲しかった。で、もはや誰が言い出したのか忘れましたけど、『兵士じゃなく農民を主人公にするのはどう?』という話になりました」

 

gyala「話 飛びすぎ!!!」

tkuc「煮詰まった会議って、そういう突拍子もないアイデアで盛り上がるじゃないですか。Kさんも『農民が戦うアクションゲームは他に無いぞ!』って言って、企画が決定したんです。こうして開発コードネーム『オリーブ』は、当初とは全く別物になって始動しました」

gyala「もそもと『オリーブ』っていうコードネームだったんだ(笑)。変におしゃれなのが笑っちゃう」

tkuc「ただゲーム性に関しては、自慢のシステムを採用してまして。普通、敵から逃げる時というのは逃げる方向(進行方向)にしか弾を撃てませんよね? だから“攻撃を避けて”“敵の方に向き直って”“撃つ”という3ステップが必要になる。でもいっきは一番近くにいる敵を自動照準で狙ってくれるので、“避けながら敵を倒す”という、流れるようなプレイが可能になった」

gyala「ただのお笑いゲームではなく、アクションはちゃんとしていると」

 

smzs「あと、ああいったタイプのアクションゲームで二人プレイができるっていうのは、あの時代にしては画期的だったんですよ。先日ある大手ゲームメーカーの方とお会いした時に、『当時、あれはすごいと思いました』っておっしゃってくださいました」

gyala「ちょっと気になってたんですが、『いっき』の“敵”ってなぜ忍者なんでしょうか。現実では、一揆が起きた場合に鎮圧にやってくるのは、幕府なり藩なりの軍……つまりサムライでは?」

tkuc「『いっき』ってシューティングに近いというか。結局は弾を撃ち合うゲームなんですよね。農民は鎌を投げればいいんですが、サムライって刀を投げたりしないじゃないですか」

gyala「あ、なるほど。忍者なら手裏剣っていう飛び道具のイメージがある」

tkuc「そういうわけで、設定としては無理やりなんですけど忍者になりました。無理やりといえば、そもそも一揆なのにたった一人(2Pを入れると二人)なの?という問題もありましたけどね」

smzs「大人数の戦闘を描写するなんて当時は絶対に無理だったから、それは仕方ない」

gyala「主人公である二人、ごんべ(権べ)と、たご(田吾)は、当初から変わってないんですか?」

tkuc「デザインは変わってませんが、最初は名前が権兵衛と田吾作でした。直前になって『権兵衛と田吾作だとよくある名前だから、商標権をとられてる可能性がある』ってことで、今の名前になりました」

gyala「まあ、どこかの煎餅メーカーとかが商標権とってそうな名前ではある。ちなみにあのイラストって誰か有名なイラストレーターが描いたんですか?」

tkuc「知り合いでデザインとかやってる人が近所に住んでて、絵心があったんでね、その人に描いてもらいました。確か……米屋の息子だったと思います」

gyala「何屋の息子だったかはどうでもいいです!」

 

 

今『いっき』が取り上げられるということ

gyala「いまだに『いっき』は難しかったとよく聞きますが、当時ユーザーの声はどのようなものだったんですか?」

tkuc「難しいとはよく言われますが、個人的にはそう思ってないんですよね。作ってる時に何回もプレイしたせいかもしれませんが」

gyala「間違いなく何回もプレイしたせいですよ。あのゲームは難しいです」

smzs「あの頃は今と違って、ユーザーの声が製作者に届く手段がほぼなかった。ソフトについてるアンケートハガキくらいしか、生の意見を聞く機会ってないんですよ」

tkuc「一日2000枚とか3000枚とかハガキが来てたんですが、そのハガキを送ると抽選でプレゼントが当たるみたいなことをやってたんで、悪い意見はほとんどなかった。みんな褒めてくれるんですよね」

gyala「悪口を書いたらプレゼントがもらえないって思ったのかな」

smzs「ちなみにその時のプレゼントは、『いっき』のイラストがドーンと描かれたオリジナルインテリア時計と、オリジナル机上ブラシですね」

 

あんなプレゼント、ほんとに欲しがる人いたのかな……と、いらんことを言う竹内さん

 

tkuc「当時まだゲーム専門誌も創刊されてなかったから、作り手には客観的なゲームの評価がわからなかったですね」

gyala「でも結果的に『いっき』は発売から35年、未だに愛され続けています。理由は何だとお考えですか?」

tkuc「他にはないテーマ、独特のキャラクター、そしてバカバカしいとも言えるゲーム内容じゃないでしょうか」

smzs「あんなに変わったゲームって、今でもなかなか無い。プレイした誰もが記憶に残してくれて、だから愛されてきたのかなと。サン電子はゲーム以外にも色んな事業を手掛けてますが、35年も憶えてもらってる商品って、ゲームだけです」

gyala「考えてみればすごいことですよね。35年も経った現在、auスマートパスプレミアムでプレイできることになったわけですが、今の女子高生とかが新たにプレイするかも……?」

tkuc「おぉ、それは嬉しいですね。昔のゲームは気軽にプレイできるのが良いところ。今遊んでも楽しめるはずです!」

smzs「会社としても、時代を超えて新しい人たちに遊んでもらえたら嬉しいです」

gyala「スマパスではたくさんのメーカーのゲームが遊べますが、まさに時代を彩った名作ばかり。同時代にゲームクリエイターとして活躍した竹内さんから見ると、ライバルであり戦友であった作品たちについても、何か思うところがあるのではないでしょうか」

tkuc「あの時代、ゲームクリエイターたちは少ない容量をやりくりして、何とかおもしろくしようと頑張ってました。不便だったりイメージ通りのものが作れないこともありましたが、だからこそアイデアで勝負したり……とても熱い時代だったと思います。その熱気を感じて頂けたら!」

smzs「ちなみにサンソフトからは他にも『マドゥーラの翼』『リップルアイランド』『かんしゃく玉なげカン太郎の東海道五十三次』などがスマパスで遊べるので、みなさん楽しんでください」

gyala「ありがとうございます! では最後に、せっかくなのでauスマートパスの『いっき』を、竹内さんにプレイしてもらいましょう。あらかじめ言っておくと、さっき『いっき』が難しいとは思わなかったとおっしゃっていたので、僕の中ではめちゃめちゃハードルが上がってます」

tkuc「お任せください。作った人間なので、コツはわかってますから」

 

「このゲームは、小判が見つかったからといって焦って取っちゃだめなんですよねぇ。まず敵を片付けてから取ったほうがいい」

 

「落ち着いてやれば必ずクリアできるように作って……あっ!?」

 

「あれ?」

 

「…………………………………………………」

 

「このゲーム……難しいな……」

 

 

まとめ

というわけで今回は、『いっき』について教えてもらうために、サン電子にお邪魔しました。

35年も人々の記憶に残り、愛されてきたこのゲーム。小学生の頃は挫折しましたが、いつかクリアできるまで、スマパス版『いっき』をプレイするぞ~!

 

 

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