2018/10/03

スマホをかざせば自動で点数計算! 『麻雀カメラ』実現までの舞台裏

複雑な点数計算を自動化する画期的アプリ

中国では千年以上の歴史があるという「麻雀」。2018年7月に新しい麻雀プロリーグ「Mリーグ」が発足したが、2022年北京冬季オリンピックで頭脳スポーツとして採用される可能性も浮上しており、ここにきて再び注目を浴びている。

また、かつては不健康なイメージもあったが、近年は「賭けない・飲まない・吸わない」を謳う「健康麻将(けんこうマージャン)」も登場し、中高年を中心に人気を集めている。

ただ、麻雀は初心者にはハードルが高く、新たに始めるのが難しい側面があるのも事実。役をすべておぼえるだけでもひと苦労なうえ、点数計算は非常に複雑。習得するのにそれなりの時間と経験が欠かせない。

そんななか、画期的なスマホアプリが登場した。スマホをかざすだけで点数計算が行える「麻雀カメラ」だ。

麻雀カメラ スマホ用アプリ「麻雀カメラ」。iOS対応。広告表示あり(広告非表示のオプション有料課金は360円)

アプリの使い方は至って簡単。

麻雀カメラの利用シーン

アガったら、手牌にスマホのカメラをかざすと……。

麻雀カメラの画面

牌が自動的に認識され、アガリの手牌が画面に表示された! この時点でまず驚きだ。

続いて、ドラやリーチの有無など、各種条件を選択。

麻雀カメラの画面

最後に「点数計算」をタップすると……

麻雀カメラの画面

点数が表示された!

麻雀を知らない人にはさっぱりわからないと思うが、一応解説しておくと、役はタンヤオ・ツモ・ドラ1。子の30符3翻で、いわゆる「ザンク」。ツモアガリなので「2,000・1,000」である。

もちろん役満の点数も計算できる。

麻雀カメラの画面

雀士なら一生に一度はアガリたい九蓮宝燈も……。

麻雀カメラの画面

ほらこの通り。親のツモアガリで16,000オール! こんな夢のような手もスマホをかざすだけで自動で認識し、点数を計算してくれるのだ。

「スマホをかざすだけで点数計算」を可能にしたKDDI総合研究所の画像認識技術

ところで、「スマホをかざすだけで点数計算」はどのようにして可能になったのだろうか? その技術的背景とは? アプリの製作に携わった担当者たちに話を聞いた。

左から、樫尾秀樹さん(ノースショア)、北﨑修央(KDDI)、加藤晴久(KDDI総合研究所) 左から、樫尾秀樹さん(ノースショア)、北﨑修央(KDDI)、加藤晴久(KDDI総合研究所)

「『麻雀カメラ』には、世界最高レベルの精度を誇るKDDI総合研究所の画像認識技術が使われているんです」

そう語るのは、「麻雀カメラ」の製作全体を指揮したKDDIの北﨑修央。

株式会社KDDI ライフデザイン事業企画本部 ビジネスインキュベーション推進部 次世代ビジネス推進グループ 北﨑修央 KDDI ライフデザイン事業企画本部 ビジネスインキュベーション推進部 次世代ビジネス推進グループ 北﨑修央

「KDDI総合研究所ではかねてから画像認識技術の研究を進めていて、私たちKDDIはこの技術を活用したさまざまなサービスを提供してきました。ARコンテンツの作成・再生が楽しめる『SATCH VIEWER』、商品にスマホをかざすだけで価格やレビューがわかる『買い物カメラ』といったアプリがその代表例です。そんななか、『麻雀の牌を認識させて、点数計算を自動化できたら面白いんじゃないか?』というアイデアが生まれて、このアプリの開発がスタートしました」(KDDI 北﨑)

麻雀カメラの画面と麻雀牌

このアプリの開発を担当したノースショアの樫尾秀樹さんは、「点数計算の自動化は、全自動卓の登場に次ぐイノベーションとなる可能性を秘めている」と胸を張る。

ノースショア株式会社 コンテンツ開発ディヴィジョン 樫尾秀樹さん ノースショア株式会社 コンテンツ開発ディヴィジョン 樫尾秀樹さん

「KDDIさんから最初にお話をいただいたのは2年ほど前のこと。当時はまだ画像認識技術を活かしたアプリやサービスは少なかったですし、画像認識の技術自体も発展途上の段階。そんななか、KDDIさんからこのアプリのお話をいただいて、面白そうだからぜひやってみたいと考え、お引き受けしました。偶然ですが、私を含め、弊社も麻雀好きが多くて(笑)。

麻雀ってもともと手積みで遊ぶものでしたが、全自動卓の登場で飛躍的に効率化したのですが、次のステップってなんだろうと考えたとき、一般的に難しいとされる点数計算を自動化することではないかと思いました」(ノースショア 樫尾さん)

画像認識エンジンの開発を担当したKDDI総合研究所の加藤晴久は、「麻雀牌をスマホのカメラで認識させるのは簡単なことではなかった」と振り返る。

KDDI総合研究所 ソフトウェアインテグレーショングループ 加藤晴久 KDDI総合研究所 ソフトウェアインテグレーショングループ 加藤晴久

「とりわけ苦労したのが、メーカーによって牌の柄が微妙に異なること。特に一索は鳥の模様が全然違います。そこで、まずはいろんなメーカーの麻雀牌を買ってきて、それらをひとつひとつ解析していくところから始めました。画像認識には高度な技術が求められますが、開発自体はそんなアナログなことからスタートしています(笑)。結局4社ほどの牌を購入しました。

そしてもうひとつ難しいのは、アガリ牌を並べたときに、牌同士がくっついてしまうこと。たとえば、二筒がふたつ並んだとき、二筒がふたつなのか、四筒がひとつなのか、境目を判別させるのが難しい。それらの課題をクリアするために、AIのディープラーニング(機械学習の手法のひとつ)の技術を応用しました」(KDDI総合研究所 加藤)

箱に入った麻雀牌

また、将来的に、画像認識の技術が進んでいくと、スマホをかざすだけで買い物ができたり、そのログをもとに精度の高いおすすめ情報を提案してくれたりと、さまざまなことが可能になるという。

「究極的には、世の中にあるすべてのモノを認識できるようにしたい。もちろん、そのためには膨大な時間と労力がかかりますが、もしそれが可能になったら、私たちの暮らしは大きく変わると思います」(加藤)

ともあれ、麻雀の敷居の高さを一気に下げる可能性を秘めたこのアプリ。麻雀の点数計算の難しさに尻込みしている人は、ぜひダウンロードして試してみてもらいたい。

文:榎本一生
撮影:TIME & SPACE編集部

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