2018/08/13

富士山の混雑度や気温を見える化。「ミエル フジトザン」がレジャーの未来を変える

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今年7月10日から9月10日までの期間、KDDIとKDDI総合研究所が、静岡県御殿場市と小山町とともに提供している「ミエル フジトザン」。このサービスの登場は、近い将来、山登りだけでなく様々なレジャーシーンで新しい体験をもたらしてくれるかもしれません。果たしてそれはどんな未来なのでしょうか?開発を担当したKDDI総合研究所・宇都宮と、KDDI ビジネスIoT企画部・野口にこのプロジェクトの目的を聞きました。

「ミエル フジトザン」とは?

「ミエル フジトザン」は、IoTセンサーを活用して登山口や登山道の通過人数や、温湿度を確認できるウェブサイトです。登山者は「ミエル フジトザン」を事前にチェックすることで、その地点の混み具合や気温などを把握できるため、スケジュール管理や服装の準備など適切な登山計画に役立てることができます。

「ミエル フジトザン」サイトはこちら

「ミエル フジトザン」サービスイメージ 各山道に設置されたセンサーの情報は、スマートフォンやパソコン上で見ることが出来る。
富士山の「ミエル フジトザン」センサー設置現場 富士山の「ミエル フジトザン」センサー設置現場

進化する富士山×IoT

実は、昨年も「実証実験」という形で同様のサービスを実施していました。その実験結果を経て、今年はより実用性の高いサービスとして提供することになったのです。

昨年の計測値によると、登山客の8割近くは山頂に登らず新五合目や周辺のハイキングコースでの散策を楽しむということが分かりました。この結果を踏まえ、今年は新五合目にある登山客の交流拠点「Mt. FUJI TRAIL STATION」でも新しいサービスを提供しています。例えば施設内に設置された望遠鏡型のVR「VR View Scope」では、変わり易い山の天候でも晴れた日の美しい富士山の様子をダイナミックな360°ビューで楽しめます。

「望遠鏡型のVR「VR View Scope」

実は難しい。山岳地帯での「見える化」

さてこの「ミエル フジトザン」を提供する狙い、そしてこの技術の先に、私たちのレジャーシーンにどんな未来が待っているのでしょう。

「ミエル フジトザン」で重要になるのは耐久性、省電力、そして通信環境。昨年の実証実験を経て、KDDIが出した結論は「LTE-M」の活用でした。

インタビューを受ける「ミエル フジトザン」開発担当者 左:KDDIビジネスIoT企画部 サービス企画1G 野口 一宙
右:KDDI総合研究所 スマートコネクトG 宇都宮 栄二

「昨年は、LoRa(省電力で広域をカバーできるIoT向け通信技術LoRaWAN)をベースにサービスを構築していましたが、今年はKDDIで展開済みの4G LTE基地局で提供可能な通信規格LTE-Mを活用しました。LTE-Mならば、ゲートウェイ (親機) の設置が必要なくなり、さらに低消費電力で広範囲の通信を安定して利用できます」(宇都宮)

いわゆる“モノのインターネット”と呼ばれるIoT向けの通信サービスでは、接続するモノ(通信機器)が通常の携帯端末より消費電力が低く、かつ広範囲の通信を可能にするネットワークが求められます。そうしたニーズを実現するのがLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる通信技術なのですが、このLPWA方式のうちLTE-Mは、通信キャリアが持つ基地局を利用したセルラーネットワークで提供する方式のため、より安定したIoTサービスが実現できるのです。

今回の「ミエル フジトザン」で言えば、山道に設置するIoTセンサー搭載の端末はモバイルバッテリーで長期間稼働しなければならず、さらに常に安定したネットワークに接続している必要があります。その点、富士山周辺の該当地点では既にKDDIのLTE-Mもエリア化されており、このLTE-MによるIoT端末を設置することが可能になったのです。

耐久性の高い乾電池

そして昨年より進化したもう一つのポイントが耐久性。今回、設置した端末を見せていただくと意外なことが分かりました。

「ミエル フジトザン」カウンター 実際に設置された「ミエル フジトザン」カウンター。昨年に較べて大幅に小型化・軽量化されている。

「前回はモバイルバッテリーを電源として使いましたが、今年からは単1型アルカリ乾電池を使うように変えました。私たちが様々な場所で取り組んでいるIoTの実証実験で乾電池を電源として使っている場合が多く、海や山など温度や湿度などの厳しい環境でも安定した電源として利用できることが判っています。今回、富士山の取り組みでも乾電池を採用してみました」(宇都宮)

実際、前回の実証実験ではモバイルバッテリーを使用した端末は1週間程度しか電力が持たなかったそうですが、今回は、通過人数をカウントする人感センサーに加えて、温湿度を計測するセンサーを搭載した上で、単1型アルカリ乾電池16本で1ヶ月以上連続稼働できる見込みとのこと。

さらに、LTE-Mを採用したことで、端末自体の小型化を実現。写真の中身はまだラフな構成ですが、サイズ感を見る限り現時点でもさらに小型化、軽量化できそうですね。

「通過人数をカウントするセンサーは、赤外線のセンサー、超音波の距離センサーに加え、今回新たにLiDAR(ライダー)と呼ばれている光を使った距離センサーを採用しました。さらに、温度と湿度センサーも重要です。5合目と6合目で気温が10度くらい違う時があるので、装備や服装を準備するうえでとても参考になると思います」(宇都宮)

「ミエル フジトザン」カウンターを手に解説する開発者 「LTE-Mのモジュールであれば、今後もさらなる小型化、軽量化が可能になります」(宇都宮)

混雑具合を見てルートを選んだり、気温を想定して装備や服装を準備したり。「ミエル フジトザン」が量産化されることで、全国の登山がどんどん安全・快適になっていきそうです。

コミケが快適に!?レジャーの未来を変えるIoT

そして、この技術は、登山だけでなくレジャー全般のスタイルを変えていくかもしれません。

「通路に置いて人をカウントする、車の数を数えるなどの応用ができるのではないかと思ってます。例えばコミケなどの単発のイベント会場で、ブースごとにセンサーを設置すれば空いている場所を把握することが出来ます。そうした、2~3日間のイベントであれば、乾電池だけでの小型のセンサーでも十分活用できます」(宇都宮)

そう、このIoTセンサーと通信ネットワークを活用すれば、山岳地帯だけでなく例えばサーファー向けに波の情報を提供したり、大規模なフェスやイベントなどで細かい場所ごとの混雑状況を把握したりといった応用も可能になるのです。そうなれば、レジャーの計画も立てやすくなり、行った先でも混雑状況をリアルタイムで把握してスムーズに行動できるようになります。

イベントのイメージ写真 人感センサーを各ブースに設置すれば、行列の人数がリアルタイムで分かるので、空いているブースを効率よく回って楽しめる。短期間のイベントでも低消費電力で小型のセンサーがあれば比較的簡単に導入可能。

IoTの進化を支える通信ネットワークLTE-M

そしてレジャーはもちろん生活全般にもよい影響があると、IoTサービス企画を担当している野口は話します。

IoTサービスの未来を語る開発担当者

「すでに、法人向けの分野では水田にセンサーを設置して細かい水位管理が必要な農業作業の効率化に役に立っています。また、以前には、沖縄でゴミ箱の中のゴミがどのくらい溜まっているかをモニタリングすることで集配の効率を上げるといった実証実験もさせて頂きました。今後も、例えば衣服や身体にセンサーをつけて汗の量やストレス度合いを把握して熱中症対策をするですとか、生活全般に応用範囲は広いと思います」(野口)

水田センサーを設置した様子 豊岡市の「スマート農業プロジェクト」では、LTE-M対応の水田センサーを設置して農作業の効率化を図った。

量産レベルにまで進化した「ミエル フジトザン」。そのポイントはLTE-Mを採用したことで、低消費電力で広範囲の安定した通信を実現したことでした。そして、この「行楽地の混雑状況や現場の環境、さらには人の健康状況を「見える化」する」ことの先には、登山に限らず様々なシーンで、安心で快適なレジャー体験が生み出されていく未来が待っています。

「生活者のお客様は普段何も意識してないけれども、確実にLTE-Mのネットワークで生活が変わっていく」と野口が言うように、今後ますます安全・快適になっていくレジャーの未来。その裏では、こうしたLTE-MやIoTセンシングの技術が重要な役割を果たしていくのでしょう。

文:TIME&SPACE編集部

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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