2013/11/25

au2013冬モデル特集『isai LGL22』 手に取った瞬間からワクワクを感じる新境地を開く

2013年冬モデルの中でも、ひときわ異彩を放つのが、LG Electronicsとの共同開発モデル「isai(イサイ)」だ。約5.2インチの大画面ながら、女性でも片手で持てる持ちやすさ、ホームスクリーンで新しい情報を見られるオリジナルスクリーンが特徴だ。開発に携わったLG Electronicsの金 希哲氏と、KDDIの上杉直仁に聞いた。

isaiという名に込められた「ちょっと特別な」思い

開発担当者の上杉 直仁

KDDIとLG Electronics(以下LG)の共同開発プロジェクトがスタートしたのは、2012年秋モデルの発売直後。KDDIとして、他の事業者との差別化をいかに実現するかを模索する過程で、LGとの共同企画というアイデアが生まれた。既にKDDIではLGのスマートフォンを2機種(Optimus X、Optimus G)を採用した実績があり、どちらも購入者の満足度は高かった。

「isaiには“異才”“異彩”などの意味があります。LGさんから出していただいた候補の中から、日本語をベースとしていて、すっと入り込みつつ、なにか『おやっ?』と思わせ、”いい意味で他とはちょっと違う、ちょっと特別な感じ”を表現できる名前ということで選びました」

上杉はisaiというブランド名に込めた思いをこう語る。日本市場という特定の市場の、しかも1キャリアであるKDDI向けに、ブランド名もデザインもオリジナルなスマートフォンを提供するのは、グローバルメーカーのLGとしては異例の対応だ。LGにとっての日本市場の位置付けを、金氏はこう語る。

LG開発担当者の金 希哲氏

「日本市場はハイエンドの端末を好むユーザーが多く、ここで評価される製品を作ることで、スマートフォンの品質が上がる、テストマーケティングの場として位置付けています。日本の市場はLGにとって重要です」

女性にも持ちやすい5.2インチモデル

まったく一からの共同開発となったisai。オリジナルモデルとしてこだわったのは、デザインとユーザーエクスペリエンス(UX)である。

「せっかくやるなら市場に対して驚きをもたらしたい、という思いがあった。LGさんと一緒にやることで、何がオリジナルで表現できるか、というところからスタートしました。その結果、デザイン、UX、そしてブランドの3つを独自にやったことに意義があったと思います」(上杉)

「デバイスのスペックとしては最高のものを、ということで、CPUとディスプレイには一番いいもの、つまり(グローバルモデルの)G2と同じものを使いました。しかし、それ以外の点については、フォルムのベースからKDDIさんの要求をいただいて作り上げたもので、つまりCPUとディスプレイ以外はG2とは全部違う端末です。isaiは、G2をベースにした端末ではありません」(金氏)

ディスプレイ以外の余分な要素をカットした「狭額縁デザイン」を採用。約5.2インチと大画面ながら、片手で操作可能な全幅72ミリを実現

デザインは、「ピュアな湧き水」をコンセプトに、筺体と壁紙を独自に設計した。「日本人に好まれる、日本人の心になじむデザイン」を目指して、KDDIとLGのデザインチームが正面からぶつかりあった。最後まで議論したこだわりのポイントが、裏蓋の上下の角を落としたラウンドフォルムと、直線状に巻いたメタルフレームだ。

「機械的にはぎりぎりまで中身を詰めるために(裏蓋の)エッジを立てたくなるのは理解できますが、手に持った時になじむように、新しさを感じる、一歩進んだデザインにするためには、上下の角を落とすところは譲れませんでした。また、メタルフレームは、コネクタを避けて少し蛇行させがちですが、デザイン的には縦横斜めをスパッと揃えて真っすぐ回したいと要望しました」(上杉)

「加えて、うちのデザイナーは社内のエンジニアを説得しなくてはいけませんでした。アルミを回すとアンテナ性能が出ない、ラウンドフォルムではマイクロSDカードを入れるスペースがないとエンジニアに言われても、引き下がらず戦いました」(金氏)

苦労の末、大画面でも持ちやすいサイズを実現するために、グローバルモデルでも採用している狭額縁デザインに加えて、背面にラウンドフォルムを取り入れたことで、「女性の小さい手にもなじみ、持ちやすい5.2インチモデル」を実現した。

ホームスクリーンは、「ピュアな湧き水」を表現するために、水が揺れるオリジナルの壁紙を作成した。今までのLGでは、壁紙はグローバルで統一するのが原則だったので、これも特別である。

おきて破りの4色展開

4色のカラーバリエーション。(左から)ブルー、アクア、ホワイト、ブラック

筺体のデザインがほぼ固まったのが2013年初夏のこと。その後、カラーバリエーションを決めるにあたっても、“特別”な決定があった。プロモーションカラーのアクアに、ブルー、ホワイト、ブラックを加えた"4色展開"としたことである。

「通常、スマートフォンのカラーバリエーションといえば3色なので、営業も3色で組み立てるのがセオリーです。でも、我々としては、フラッグシップ感、AKBでいえばセンターに立つようなモデルとして、インパクトを表現したかった。それでも、4色でいこう、とはなかなか言えませんでした」(上杉)

水をコンセプトに、「かわいくなり過ぎない、グラス感を表現した色」であるアクアに、ホワイト、ブラックを加えた3色を並べてみると、少しぼやけた印象になる。「水らしさ」を意識して「アクア、ブルー、ホワイト」にすると、スマートフォンでは定番の「ブラック」を取りこぼす。実際に色を決める段階になると、ますます「4色でいくしかない」という思いは強くなった。

「KDDIさんから『4色でいきたい』と聞いたとき、我々としては『もう遅い、もっと早く言ってよ』という気持ちでした。他が3色のところに4色の陳列は目立つし売れるかもしれないけれど、カラーバリエーションが増えるということはそれだけ生産のリスクも高くなるので、社内での調整が必要になります」(金氏)

そもそもグローバルモデルではカラーバリエーションという概念自体があまりないことも、社内を説得するときの不安材料だった。それでも最終的に4色での発売にこぎつけたのは、KDDIとLGのデザイナーが長い時間をかけて意識を合わせ、新しいものを作るという意思統一がされていたからだと金氏は言う。

「従来は共同企画といっても、メーカーから見れば、いくつかのモデルを提案してOKをもらい、細かいオーダーを受けるというものでした。でもisaiは、どちらかの提案にイエス・ノーを言うだけでなく、お互いがアイデアを持ち寄って1つのものを作る、本当の意味での共同企画になった。今回はそういうステージに上がれたんだと思います。LGのデザイナーたちも、独自の壁紙やカラーバリエーションなど、今までやりたくてもできなかったことができたと感じているのかもしれません」(金氏)

縦横フリックで「今が分かる」ホームスクリーン

ホーム画面をセンターと4つのカテゴリーに分け、各カテゴリーのページを上下フリックすることで時系列に情報を表示する「isaiスクリーン」

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もうひとつのこだわりであるUXは、スマートフォンの顔であるホームスクリーンを新たに開発した。横フリックでニュース、トレンド、SNS、動画の4つのスクリーンを選択し、縦にフリックして時系列に情報を表示する。個別にアプリを起動せず、ホーム画面から最新の情報にアクセスできる。「スマートフォンを買っても電話とメールしか使わない」人のハードルとなっているのが、アプリをダウンロードして設定しなくてはやりたいことができないことだが、それを極限まで低くすることを考えた。指を縦横に動かして自由に操作するには、片手で持てることが重要になる。ここで、裏蓋のラウンドフォルムが生きてくる。

「スマホを買ったら、まず、指でスクリーンを操作したいし、きれいな画像を見たいと思います。ホーム画面に最新情報を組み込めば、設定不要で、買ったらすぐに新しい情報が見られます。約5.2インチの大型ディスプレイということは聞いていたので、『画像できれいに見せる』ことにこだわりたいと思っていました」(上杉)

ホームスクリーンに情報を画像で配信するというアイデアは、KDDIの若手社員が発想したものだ。スマートパスやビデオパスなどのauのサービスにも連携しており、画像で配信するために専用の形式で情報を配信する仕組みを用意するなど、社内での調整も彼らが行った。ホームスクリーンとはいえ、実際には1つの専用ブラウザでもある。LGには、百数十名規模のグローバルなUI開発部門があるが、そこから数名をisai開発チーム専任に引き抜いた。

「スマートパスのタイムライン機能を画像で楽しく見せたいということも意識しました。そういうことを考えたのは、LGさんのIPSディスプレイがあったからこそだと思います。大きくて、きれいなディスプレイがあるから、画像を見せて、いろんな人にいいねと思われる自信がありました」(上杉)

最初に画像を見て「いいね」と思ってもらい、かつ「飽きずに使ってもらえる」ことを考えた。トレンド、ニュース、SNS、動画の4カテゴリーは、「飽きないで使ってもらえるカテゴリー」という視点で絞り込んだものだ。かつ、画像だけでなく、1画面1コンテンツで記事の最初だけを見せることで「もうちょっと中をのぞいてみたい」と思わせる仕掛けも盛り込んだ。

使用頻度の低い項目を非表示にして、使い方に合ったシンプルなUIにする「クリーンビュー」

いつも使うアプリや機能のアイコンの色が変化し、スムーズに見つけられる「アプリハイライト」

「スマホをなかなか使いこなせない人」を意識して開発した機能は他にもある。「普段は使わない設定用ボタンは隠して画面を広く使う」クリーンビューは、カメラ、アドレス帳、ギャラリーに実装。カメラにはシャッターボタンだけを表示してプレビュー画面を広く使い、電話帳には「電話をかける」ボタンだけを分かりやすく表示する。「アプリハイライト」は、アプリ画面をスクロールするとよく使うアプリのアイコンの周囲がハイライトして探しやすくなる機能だ。

「使いこなせていない人に、と考えて搭載した機能ですが、私たちも使ってみると意外に便利です」(上杉)

他にも、LGスマートフォンの標準UIにあるノックオン(画面を2タップでスリープ、アウェイク)、フロントタッチボタンの表示や順序をカスタマイズできる機能など、細かいところだが使い勝手を大きく改善する機能が搭載されている。

歴史に残る「禁断のプロジェクト」

さまざまな課題を乗り越えて、isaiという端末が誕生した。KDDIとLG、2つの企業の間にある壁を乗り越えてチームが一つになれた決め手は何だったのだろうか。

「LGさんが日本市場で初めてこれだけのチャレンジをするということで、高いモチベーションをもって取り組んでいただいたことが大きかったと思います。お互いがいいものを作ろうという思いで、だんだん意思疎通ができて、分かり合えていく過程がとても楽しかったです。LGさんも、苦しいけれど楽しいと感じていただいていたからではないでしょうか」(上杉)

「上杉さんのおっしゃる通りです。最初に声をかけていただいたときは、なぜうちなのか、と半信半疑でした。でも、KDDIさんの考えや背景を知り、発表会が近づいてくるにつれて、これは本気なんだ、うちはこのチャンスを逃してはいけないと感じました。ビジネスとして見ると、ブランドを変えて、ソフトも変えて、今までLGではやらなかったことをやる、ある意味“禁断のプロジェクト”です。成功しても失敗しても、歴史的事例として残ると思います」(金氏)

先日の記者発表会では、集まった記者たちの感想から十分な手応えを感じたという。だが、UIやUXの良さを一般のユーザーに伝えることは、記者に伝えるよりも難しい。特に、ハイエンド市場ではデバイスとしての性能にほとんど差がなくなりつつある今、店頭で差別化を図るには、分かりやすい魅力を持ったUIとUXが不可欠だ。年齢・性別を問わず、誰でも手に取ったその場でスマホを持つ“わくわく感”と“感動”を味わえる、スマホの新しい境地を開く端末が誕生した。

文:板垣朝子

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