KDDI NEWS

2012/08/09

世界に羽ばたくジャパニーズベンチャー PART1. シリコンバレーのアントレプレナーたち

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世界に羽ばたくジャパニーズベンチャー。

■PART1

米国ならではの出会いが生んだコミュニケーションアプリ

シリコンバレーに居ながら、投資家には一切頼らず、自己資金と売上で起業を成功させた日本人もいる。もともとは専業主婦で、テクノロジーは苦手と公言する久保由美さんだ。言葉をうまく話せない重度の自閉症の子どもたちが感情を表現したり、彼らのスピーチ・セラピーの助けになるスマートフォン用アプリを開発。2009年に、「Voice4U」の名称で、日米で同時発売し、好評を得ている。

「Voice4U」を開発した久保由美さん(左)、樋口聖さん(右)と、絵を描いた久保香穂さん(中央)。

「Voice4U」を開発した久保由美さん(左)、樋口聖さん(右)と、絵を描いた久保香穂さん(中央)。

駐在員の妻としてシリコンバレーにやってきた久保さんは、アメリカで出産した長男が2歳のとき、重度の自閉症と診断され、「この子が20歳になるまでに、一言でも声を発してくれたら」との願いを抱く。

言葉を発せない自閉症児の場合、親が「絵カード」を見せて、意思を確認する。ラミネートした大きな絵カードを何百枚もどこへでも持ち歩き、多動の傾向がある子どもの手を引いて歩くのは、かなりの重労働だ。

家族連れが楽しむショッピングセンターで息子が奇声を発したとき、地面に座って、汗だくで絵カードをめくり、「痛いの? 暑いの?」と聞いてなだめたときは涙が出たという。

iPhoneが発売された頃、久保さんが「この中にすべての絵カードを入れられたらいいのに」とつぶやいたところ、たまたま自宅に遊びに来ていた、スタンフォード大学大学院博士課程で航空宇宙工学を研究する樋口聖さんが「できますよ」と即答。彼がボランティアでソフトウェアを開発したのが始まりだった。

「食べる」の絵カード

「食べる」の絵カード

息子を育てた経験から、親の生声を吹き込め、自分で撮影した写真を加えられる機能が欲しかった。

感情や行動を表す30語を含め、160の言葉を絵カードにしたこのアプリ、例えば「食べる」というカードには、自閉症児がよくするポーズで、肘を張りフォークをわしづかみにして、自分のテリトリーを確保しながら食べる姿が描かれている。自閉症児が、自分のことだと安心して、すぐに内容を認識できるのがポイントだ。髪がなく、服を着ていない姿も、服や髪型の変化にこだわることの多い自閉症児が絵の意味に集中できるようにするため。絵を描いたのは、自閉症の弟と18年間暮らしてきた久保さんの長女、香穂さんだ。

専業主婦とスタンフォード大学のロケット科学者。普通なら接点のないはずの2人がシリコンバレーで出会い、2010年に「スペクトラムビジョンズグローバル」社を興した。

「テクノロジーと最も遠い所にいると思われている自閉症児とそのお母さんたちに、このアプリでコミュニケーションの手段があることを知ってもらいたい」と久保さんは言う。

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