2014/08/19

被写体を自動追尾して空撮してくれる無人機

ヘリコプターからの空撮映像で風景と人物を捉えた最初の作品は、映画「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年公開)の、ジュディ・アンドリュース演じるマリアが高原で歌うオープニングシーンだという。70mmフイルムのワイドな映像が印象的な作品だが、実際の撮影ではヘリの震動による映像のブレをおさえるために、カメラをバネで支える工夫がされていたそうだ。

ラジコンで操作できるヘリコプターに手振れ防止機能があるカメラを組み合わせれば、そんな苦労をしなくても空からの映像が手軽に撮れる。昨年11月〜今年2月に実施されたau未来研究所における「未来の携帯電話」研究では、「小型ヘリコプター付きケータイ」というアイデアも提案されたたが、そんなコンセプトを具現化したような、手軽に自分撮り(セルフィー)ができるドローン(無人機)「HEXO+」と「AirDog」が登場する。どちらも、GoProなどの小型カメラを装着することで空撮ができ、スマートフォンなどに映像を無線で送信すれば、リアルタイムでのモニタリングも可能だ。

どちらの製品も、被写体を追尾してカメラのフレームに収める機能を持っている。自分自身を追尾させることで、スキーやウインドサーフィン、自転車などに集中している様子を空から撮影することができるのだ。自分が大自然の中などで動いている様子を客観的に見ることができれば、単に自己陶酔するだけでなく、フォームの改善などトレーニング目的にも活用できそうだ。

HEXO+は、被写体の持っているスマートフォンとドローンが通信することにより、自動的に追尾する。クレーンやドーリー、パンなど、映画撮影で利用されるカメラの動きをシミュレーションする機能もある。一方、AirDogは、被写体が身に付けるAirLeash(Leashは犬の引き綱の意味)が被写体の動きをBluetoothでドローンに送って追尾させる。予め飛行禁止ゾーンを3次元で指定しておく機能もあり、事前に樹木や建物、スキーのリフトなどの位置を設定しておけば、それらを避けて飛ぶことができるという。

リモコン操縦の練習を重ねなければできなかったような被写体の追尾や障害物回避を自動でやってくれれば、専門クルーを雇わなくても、個人で簡単に空撮が行えるようになる。とはいえ、まだ値段は高く、HEXO+は949ドルで予約受付中(2015年5月出荷開始予定)。AirDogは12月発売予定で先行予約価格は1,295ドル。どちらも日本から注文可能のようだが、電線の多い日本では安全面に課題があるし、法律上もクリアすべき課題が多いと思われる。

もっと小型で手軽な空撮セルフィーなら、「MeCam」の発売を待つのがよいかも知れない。こちらのドローンは手のひらサイズでカメラ内蔵。声で「アップ」とか「ダウン」とか「フォローミー」と言って操作する。価格は100ドル程度を目指しており、2014年中には発売開始と言われていたが、現段階で正式な発表はまだない。この価格帯でハチドリのようにホバリングして自分を撮影してくれるなら、セルフィー好きには持って来いのガジェットになりそうだ。

著者:信國 謙司(のぶくに・けんじ)

NTT、東京めたりっく通信、チャットボイス、NECビッグローブなどでインターネット関連の事業開発に当たり、現在はモバイルヘルスケア関連サービスの事業化を準備中。