TS 文化部

2016/06/08

【ネット系女子!】"引きこもり"から、人気UIデザイナーに/灰色ハイジさん

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日頃なにげなく観覧しているWebサイトや、スマホアプリ。そのサービスを使うユーザーが快適に、気持ちよく感じてもらえるような画面を構成するUI(User Interface)/UX(User Experience)デザイナーという陰の立役者の存在をご存じだろうか。

ネットを騒がせている女性をご紹介する「ネット系女子!」の第5回は、UI/UXデザイナー&プランナーとして、Webや広告業界で活躍する灰色ハイジさん。彼女は新卒で博報堂アイ・スタジオに入社後、グループ会社であるクリエイティブエージェンシーSIXに出向し、人気バンドAmazarashiのミュージックビデオや『Pokémon GO』の特報映像にUIデザイナーとして参加。一方でWebマガジンや雑誌に寄稿したり、日本テレビ『SENSORS』でインタビュアーを勤めるなど、メディアの垣根を越えて活動の場を広げている。

現在はフリーランスと、女性向けの転職を支援する株式会社LiBで会社員を復業し、週7日休みなく働いている彼女に仕事やプライベートについて話を聞いた。

UIデザイナーという仕事

この日着ていたワンピースは、展示会で購入したAKIKOAOKIの服。「個性的な服が好きなんです」

当日、彼女の職場に訪れると、上品なワンピース姿の灰色ハイジさんが出迎えてくれた。「服が大好き!」とのこと。そのおしゃれセンスが話題となり、ファッション業界から仕事を依頼されることも多いそう。

「会社ではメンバーシップオプション(ほかの仕事を続けながら社員同様の待遇で働くことができる独自制度)を利用して、一週間のうち木、土、日曜日以外の4日間出勤しています。フリーの仕事は、就業日以外の3日間で作業しています」......すごいバイタリティ!

――まずは灰色ハイジさんのお仕事について教えてください。

「クライアントの課題を聞いて広告などをつくるプランナーと、WebサービスやアプリをデザインするUI/UXデザイナーをしています。今所属している『LiB』では、転職サービスやカウンセリングサービスなど、キャリア女性が出会う様々な事柄を包括的にサポートする事業を行っており、日々アプリやサイトの改善を行っています。また、仕事ではありませんが、趣味で国内外のインターネットに関連した企業に不定期に会いに行き話しを聞くという企画も行っています。インスタグラムやツイッターで『#インターネットおのぼり』と検索してもらえれば、その様子が見られます」

――UIデザイナーとWebデザイナーの違いはなんですか?

「どちらもWebデザインを手がけるという点は同じですが、Webデザイナーに比べてサービスの使いやすさや操作感の設計に特化しているデザイナーをUIデザイナーと呼びます。以前勤めていた制作会社では、ユーザーとのあいだにクライアントや代理店を挟んでいたので、ユーザーの声を聞く機会があまりありませんでしたが、今の会社では直接聞けるようになりました。デザインや使用感を褒められたときは、この仕事のやりがいを感じるところです」

灰色ハイジさんがUIデザイナーとして参加したAmazarashiのミュージックビデオ。映像内に出てくるTwitterのような画面を制作したそう。「対象の全体像や伝えたいイメージを聞いて、実際に世の中に出たらこんなUIが使われるかもしれないという想定に基づいてデザインしました」

小中の時にネットのすごさを実感

――「灰色ハイジ」という名前の由来は?

「14歳の頃からネットで使っていたHNです。私は出身が新潟なんですけど、冬は常に曇りで雪の色も白というより灰色なんです。"日本海のそばにある閉鎖的な世界で生きる薄幸の少女"みたいなイメージを込めつつ、頭の文字がどちらも"は"で語呂がいいので付けました。将来有名になってメディアに出たとき、灰色ハイジは実存して元気でやっているよって当時のネットを通じて知りあった友だちに伝えられたらいいなという思いもあって、いまもこの名前を使い続けているんです。社会人になってからは仕事でも"灰色ハイジ"という名前を使うようになりました。まさか人生の半分以上もこの名前で呼ばれるとは、14歳の私も思っていなかったでしょうね(笑)」

――幼い頃はどんな子どもだったんですか?

「小学校の頃から漫画が好きで、自分でも絵をよく描いていました。自分の絵を投稿したくてイラストサイトをつくったりして。中学生になってしばらくすると、住んでいる場所が近いというだけで集められた環境に違和感があって不登校になって、家でネットばかりしていました。ネットでは自分と同じ趣味の子と自由に繋がれるのが面白くて、居場所ができたように感じたんですよね。ネットを通じて知り合った絵描き仲間のイラストを集めてそのイラストサイトで展覧会をしたり、誰かが絵を投稿したら、それに合ったポエムや小説をまた他の誰かが投稿するといったコラボレーションサイトを運営していました。その頃から、自分が表現者になるより、どんなサイトデザインにすれば人の作品が引き立つかという点に興味を持つようになって。次第に、将来は人とつながって仕事をするデザイナーになりたいと思い始めたんです」

過去の情報を掘り出したい!

――仕事ではインターネットをどうなふうに活用していますか?

「デザインに役立つような情報を収集しています。はてなブックマークは、もう10年以上使っています。スクラップブックのような感覚で、気軽にタグを付けたりブックマークして、情報を管理しているんです。ブックマークは16,000以上、タグの数は全部で1,594個です。最初にブックマークしたのは2006年で、京都にある器のお店ですね。(HPを開いて)......あ、もう閉店してる......」

灰色ハイジさんのはてなブックマークの画面。日々彼女が気になった情報が追加されている。

――Webやデザインに関してのタグが多いですね。

「そうですね。あと、漫画やファッションに関してのタグも多いです。こうやってタグ付けしておけば、なにか調べたかったときに過去の記事をすぐ見られるから便利ですよ。いま、まとめサイトとかキュレーションメディアが流行っていますけど、それってもともと誰かが書いた記事を使い回しているだけですよね。それだったら、昔の記事を掘り起こした方が面白いと思うんです。すっかりブームが去った某SNSのコミュニティやゲームも、いまだに使い続けている人がいるんですよ。そういう人たちのお話も聞いてみたいです。『SNS散歩』みたいな記事にして、Webで連載するのもアリですね(笑)」

灰色ハイジさんの作業環境。「アイデアを思いついたら、ノートや適当な紙にメモしています。パソコンは13インチの小さめのもの。スマホやタブレットで画面を見る人も多いので、ユーザーと同じ目線でデザインができるんです」

――仕事とプライベートで切り替えていますか?

「日常のふとした気づきから仕事のアイデアが浮かぶことが多いので、意識してオンとオフを切り替えることはありません。休日に散歩をしていても、頭の中では目に入ってきた情報をどうやって仕事に生かせるかを考えているので、常に仕事をしているようなものです(笑)。"考える"ことが大好きなんですよ」

"居場所づくり"を支援していきたい

スマホには漫画アプリがぎっしり。「ジャンルを問わず、気になった漫画を読んでいます。漫画は自分のペースで読めるのがいいですよね。Webもそうですけど、時間を自分で操作できるコンテンツが好きなんです」

――休日はなにをして過ごしていますか?

「家で漫画アプリを使って漫画を読んだり、友人や婚約者とオンラインゲームをしています。婚約者はアメリカに住んでいるので、リモートワークならぬリモートライフ中です」

――え、リモートライフ?

「いわゆる遠距離恋愛です(笑)。appear.inというスカイプのようなツールで互いの家の映像を常時見られるようにしています。カメラはNexus端末をWebカメラ代わりにテレビの前に置いて、Googleのクロームキャストを使ってHDMI映像をテレビに飛ばしています。タイムラグもなくて映像もきれいに映るんですよ。音声はいろいろ試した結果、一番音質が良かったのはLINEの通話ですね。会話する時間が多いので、寂しさはあまり感じません。もし喧嘩をしても、一度カメラを切って頭を冷やしてからまた繋げばいいだけですし(笑)」

――では最後に、これからチャレンジしたいことは?

「具体的に詰めている状態ではありませんが、昔の自分のように、不登校だったり引きこもりの子に向けた"場所づくり"的なアプリをつくってみたいですね。それによって、いま住んでいる地域や環境に依存しなくてもいいということへの気づきや、居場所づくりの手助けができたらいいなって思います」

自身の経験に基づいた働き方、暮らし方についてお話してくれた灰色ハイジさん。落ち着いた柔らかい話し方のなかに、芯の強さを感じさせる"かっこいい!"女性でした。柔軟な発想と行動力が、最先端のWebやアプリデザインの世界をつくっているのかもしれません。

文:服部桃子(アート・サプライ)
撮影:富井昌弘

灰色ハイジ(はいいろはいじ)

プランナー、UI/UXデザイナー。大学卒業後、博報堂アイ・スタジオでWebデザイナーを経験。その後クリエイティブエージェンシーSIXでプランナーに転身し、2015年に独立。デジタル施策の企画を中心に、デザインなどを手がける。主な仕事に祭 with android、AmazarashiのMV内のUIデザインなど。不定期に日テレSENSORSでインタビュアーなども務める。

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