知っておきたいICT用語を解説

2017/03/16

MR(複合現実)とは? VRとARとMRの違い

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MRを描いていた「ソードアート・オンライン」

2017年2月、人気ライトノベルの劇場版アニメ「ソードアート・オンライン」が封切られ、およそ2週間で100万人の観客を動員する大ヒットとなった。現実と仮想現実の入りまじった近未来の世界を描いた物語で、川原礫の原作の発行部数は全世界で累計1,900万部を突破したという。そして、この劇場版アニメに登場するウエアラブル端末「オーグマー」こそが、実は今回のテーマの「MR」とも言えるものだ。

物語では、メガネ型の「オーグマー」をかけると、ゲームの世界が現実の世界と重なって現れる。なんの変哲もない街の風景が、モンスターが闊歩するRPG「オーディナル・スケール」の世界に一変するのだ。3Dのモンスターたちはリアルに動きまわり、ゲームの参加者たちはこの世界を共有し、戦う。下の予告編を見ていただきたい。予告編では「オーグマー」を「拡張現実(AR)型」と紹介しているが、実際はARの機能をはるかに越えたもの、つまりMRなのだ。

VR、AR、そしてMRはどう違う?

あらためて、VR、AR、MRの3つの違いを説明する。VRとはヴァーチャル・リアリティの略で、「仮想現実」のこと。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に映される別世界に没入する体験のことで、装着した人は現実から完全に切り離される。

一方、ARはオーグメンテッド・リアリティ(Augmented reality)の略で、「拡張現実」のこと。このICT用語事典の「スマートグラス」でも詳しく説明しているが、HMDではなくスマートグラスを使って現実世界にさまざまな情報を重ね合わせて表示するものだ。

いよいよ実現化する「スマートグラス」。ヘッドマウントディスプレイとの違いは?

それでは、MRとはなにか?

MRとは複合現実のこと

MRはミクスト・リアリティ(Mixed reality)の略で、複合現実などとも言われる。つまり、現実と仮想現実がミックスされた世界のことだ。そう聞いて『ポケモンGO』を思い浮かべる方もいるだろう。スマホのディプレイの中で、目の前の実際の風景と仮想現実であるポケモンがミックスされているのだからMRと呼んでもよさそうだが、『ポケモンGO』はまだARの段階。

では、『ポケモンGO』をMRで実現するとどうなるだろうか。ポケモンは3D映像でもっとリアルになり、その場にいる全員がそのポケモンを見ることができる。しかも、まるでリアルなポケモンがその場にいるように、その人の位置によって正面が見えたり、後ろ姿が見えたりする。これをMRでのホログラム化と言ったりもする(実際のホログラムとは異なるが)。

そして、これこそがMRの醍醐味なのだが、あなたがMR内のポケモンをゲットしようと近づくと、ポケモンは逃げ出すかもしれない。あなたはポケモンを追いかける。ポケモンは捕まるもんかと全力疾走で現実の交差点を渡り、そして人混みに消えてしまう・・・・・・。つまり、どこまでがリアルな現実で、どこからが仮想現実なのか、わからなくなるほどミックスされてしまうのがMRなのだ。

「HoloLens」の衝撃

このMRという言葉が最近とみに聞かれるようになったのは、マイクロソフト社が日本での発売を開始した「HoloLens(ホロレンズ)」のためでもある。「HoloLens」はMR専用としてつくられたHMDで、開発者向けの製品のため1台30万円以上と高価だ。ディスプレイには視線に一致した現実世界が映し出されるので、HMDをかぶっても周囲は見えたままだ。つまり、スマートグラスのように、実際に見えているものの上に映像を重ねて表示できるようになっているのだ。

この「HoloLens」が実現するMRとは、いったい、どんな世界なのだろうか。下の、マイクロソフト社が発表した動画を見ていただこう。そこでは、仮想現実のなかのオブジェなどを、まるで実際に存在するもののように動かしたり、変化させたり、あるいはシミュレーションに使ったりする、驚きのMRが描かれている。そして、これは遠い未来ではなく、明日にでも実現し得る世界なのだ。

世界中で開発競争が進むMR

MRは今後、エンタテインメントだけでなく、科学研究から、医療、商品開発、設計、製造業、宇宙旅行のシミュレーションなど、あらゆる分野で大活躍することが予想されている。たとえば、クルマのデザイン設計など、これまではモックアップを作っていたのが、MRによるデジタルデータだけで済むようになればコストや時間が圧倒的に削減できるようになる。

MR技術の開発はマイクロソフト社だけでなく、さまざまな企業による激しい競争がおこなわれており、たとえばキヤノンは「MREAL」といいうMRシステムをすでに発売している。ゴールドマンサックス社の予測によれば、2025年までにMRを中心としたVRは巨大市場へと飛躍的に成長するという。今のスマホのように、そのうち、だれもが自分用のMR用小型HMD、つまり「ソードアート・オンライン」の「オーグマー」のようなガジェットを持ち歩く日が来るのだろうか。

文:太田 穣

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