2017/01/04

| 更新

2018/07/25

「充電は使い切ってから? こまめにすべき?」 充電上手になるための、正しい『リチウムイオン二次電池』講座

リチウムイオン電池

まずは電池の種類をざっくり解説

リチウムイオン二次電池と、あらためて表記すると大げさな感じがしないでもないが、なんのことはない。あなたのパソコンやスマートフォンに入っている電池のことだ。至るところで大活躍中の電池であり、コレなしには私たちのITライフは成り立たない。

さて、本題に入る前に、皆さんがなんとなく気になっている疑問をまずは解消しておきたい。「二次電池」という言葉についてだ。

大きく分けて電池には一次電池と二次電池がある。一次電池とは使い切りの電池のこと。身近な例を挙げるなら、マンガン電池やアルカリ電池が一次電池となる。ボタン型、コイン型と呼ばれる形状の電池もほとんどが一次電池だ。

一方、二次電池は充電して繰り返し使える電池のこと。つまり、「充電池」だ。

電池の仕組みを簡単に説明しよう。電池の中では化学反応が起こっており、電池内部で電子(イオン)が電解質を通し、極間をー(マイナス)から+(プラス)に移動することで「動力(電圧)」が発生する。電池を使い(放電し)、電池内部のイオンがすべて+(プラス)に移動したら、一次電池の場合は使用不可となる。

外部から電流を流して、この電子(イオン)をー極に戻してあげるのが「充電」だ。繰り返し使える充電の仕組みとは、移動する電子(イオン)を外部からの充電電流により“スタート地点”に戻してやるということなのだ。

小さくてパワフルでスタミナがあるすごいヤツ

リチウムイオン充電池は、その名前にあるとおり、リチウムを使って電子(イオン)が移動することで電気をつくっている。リチウムを含んだ化合物質は大きなエネルギーを持っており、ちょっと水に触れただけでも化学反応が始まるほど強力で、高い電圧を生み出すことができる。充電池の仲間であるニッケル水素充電池の定格電圧が1.2Vなのに対して、リチウムイオン充電池は3.6〜3.8Vと3倍の電圧を持っている。

しかも、リチウムはものすごく軽い! 電圧が高い、つまりエネルギー密度(容積に対する電圧出力)が大きいので、同じ条件で電圧を比較すると、容積が小さく軽い電池につくることができ、これが大きなメリットとなる。

少ない物質で大きなエネルギーを生み出せて、なおかつ軽い。そのうえ、自然放電(使わないまま放置しておくと電気がなくなってしまうこと)や、メモリー効果(電池を使いきらないで充電すると、容量が減ったようになってしまうこと)もない。また、充電・放電の繰り返しにも強く、長期間繰り返し使うことができる。まさにモバイル機器にピッタリの電池といえる。

拡大鏡を使って原子番号表のリチウムを覗いている

充電・放電管理に気を使わないといけない

ここまで長所を書き連ねてきたが、弱点ももちろんある。過充電(満タンになっても充電を継続してしまうこと)や、過放電(電気が空っぽになってしまうこと)、さらには設計時に想定していない充電や放電によってトラブルが引き起こされることもある。

リチウムは「大きなエネルギーを持った物質」だが、わずかな水で反応するくらい繊細な物質でもある。満充電になったら充電を停止したり、満充電に近くなったら電流を小さくしたりと、電池にかかる電圧・電流を細かく制御する必要がある。電池の筐体や専用充電器、電池を使用する機器には、リチウムイオン充電池の作動を制御する機構が組み込まれているのだ。

ユーザーとしては、マニュアルに書いてあるとおり使っていればなんら問題はないのだが、都市伝説的な間違った使い方もあるので気をつけてほしい。たとえば……

1)電池は使い切ってから充電した方が長持ちする?

使い切った状態で長期間放置すると過放電になってしまい、電池の劣化を早めてしまう。とはいえ、外出先で「バッテリー切れた!」からといって、すぐに充電をしないと即劣化が始まる、ということはない。帰宅してから充電すれば問題ない。

2)継ぎ足し充電すると劣化が早まる?

ニッケル水素充電池では、継ぎ足し充電(電池を使いきる前に充電)をすると、容量が減ってしまうようになるメモリー効果があったが、リチウムイオン電池ではメモリー効果はないので継ぎ足し充電が可能だ。

ただし、継ぎ足し充電を頻繁に行うと「サイクル数を増やしてしまう」懸念がある。サイクル数は充電から放電を1サイクルとして「どれくらい充放電を繰り返せるかの回数」のこと。従ってリチウムイオン電池といえども、「むやみな継ぎ足し充電は、長い目で見ればあまりおすすめできない」ということになる。

3)充電しながら使ってはいけない?

スマートフォンを充電しながら使用するのは問題ない。気をつけたいのは、「充電しながら温度が上がる」こと。リチウムイオン充電池の最高許容周囲温度は45℃と規定されており、これより上がった状態で使い続けると電池を劣化させてまう。

4)冷やすと電池は長持ちする?

筆者が子どもの頃は、乾電池を冷蔵庫に保存すると長持ちすると教えられていたものだが、極端な低温(0度など)でもなければリチウムイオン充電池を冷やすこと自体に問題はない。だが、怖いのは結露だ。電子機器や充電池にとって水は大敵。水の侵入によって回路がショートを起こす可能性がある。熱くなったスマートフォンを冷蔵庫に入れるのは避けよう。

リチウムイオン充電池と正しく付き合い、快適なモバイルライフを満喫しよう。

充電中のスマホ

文:吉田 努