通信のチカラ SP

2017/01/19

「通信」が広げるドローンの新しい可能性。LTEを搭載したドローンが登場!

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2016年12月、KDDIは通信でドローンの可能性を大きく広げる「スマートドローンプラットフォーム」構想への取り組みを発表した。なぜ通信事業者であるKDDIがドローンに取り組むのか、また、どのような新たな価値が生まれるのか、KDDI商品企画部の松田浩路に聞いた。

通信+ドローンで生まれる新しい価値

「スマートドローンプラットフォーム」は、ドローンを利用した新たなソリューションを開発したい事業者に対し、「LTE通信ができるドローン機体」「3次元地図」「管制システム」「クラウド」の4つの要素をパッケージにして提供する構想だ。

発表会では5種類の産業用ドローン機体が展示された。世界初の直接作業型アーム付きの機体や、ローターの風圧で垂直な柱や橋梁の裏側に貼り付いて自走する4輪駆動型ドローンなど、プロドローンが開発した独自の機体にLTEモジュールが組み込まれており、すぐに利用が可能だ。

世界初となるロボットアーム付きドローン
橋梁などの対象物に貼り付きながら自走し、安定しながら検査が行える社会インフラ検査ドローン
機体制御の乗っ取りや機体内部データの情報漏洩を防ぐ高度暗号化装置搭載ドローン
水面に着水し、水中の映像を撮影できる防水型ドローン

3次元地図は、ゼンリンが保有する詳細な地図に「高さ」の情報を加えたもので、ドローンが飛行禁止エリアや高いビルなどを回避しながら自律飛行するためには欠かせないものだ。管制システムは、複数のドローンを安全に飛行させるための制御を行う。クラウドはドローンが取得したデータを蓄積し、利用するためのシステムを提供する。

これまでのドローンの制御はWi-Fiなど見通しができる距離でしか行えなかったが、LTEを利用できるようになることで、これまでより広いエリアでドローンを利用できるようになる。

また、LTEを利用して、ドローンの制御だけでなくドローンに搭載されたカメラの映像やセンサーのデータをリアルタイムに確認することが可能になる。今まではドローンを飛ばして、戻ってきた機体からデータを回収するしかなかったのに比べると、エリアも用途も飛躍的に広がるのだ。

発表会当日には、200km以上離れた場所にあるドローンが撮影する映像をリアルタイムで見ながら、ロボットアームを操縦するデモが行われた。

auの4G LTE回線を利用し、東京・渋谷から愛知県豊田市藤岡町のドローンを遠隔操作するデモの様子

「スマホの次」としてドローンに取り組み

KDDI 商品企画部 松田浩路

松田の率いる商品企画部は、「スマートフォンの次に来るもの」を探るべく、数多くの革新技術の萌芽の中からKDDIが取り組むべき領域を見極め、商用化を進める部門だ。判断の基準は2つ。「『Why KDDI』、すなわちなぜKDDIがやるべきなのか、『Disruption』、すなわち破壊的イノベーションによる脅威を機会に転換できないか。この2つの視点から、やるべきか、やらなくてよいかを判断します」と松田は語る。

この視点でドローン事業を評価してみよう。2015年11月に安倍首相が「早ければ3年以内に、ドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す」と明言したことをきっかけに、ドローン商用化に向けた制度整備の動きが加速した。

中でも空を安全に飛ぶために欠かせない通信については、2016年7月に総務省が「無人航空機における携帯電話等の利用の試験的導入」を目的とした省令改正を実施し、携帯電話会社に対して、既設の無線局等の運用等に支障を与えない範囲で試験的な導入が行えるよう、「実用化試験局」という形でドローンに携帯電話等を搭載するための免許を交付できることになった。

通常の携帯電話は「陸上移動局」という扱いとなっている。すなわち携帯電話は地上にあることが前提となっており、基地局もその前提で配置されエリアをつくっている。そこに空中から電波が飛んでくるようになれば、前提が崩れてしまう。ドローンは携帯電話事業者にとって「脅威」なのだ。「空中から電波が飛んでくる」ことを前提とした技術的な検証を行い、既存のLTE利用者に影響を与えず、ドローンを問題なく運航できることを証明できれば、脅威を"機会"に変えることができる。

「実用化試験局」の免許取得により実証実験を行うことの目的は空中を移動するドローンを安全に飛ばすために、空中での電波の干渉やアンテナの向きの最適化、一度に飛ばせるドローンの数などについての制約など、さまざまな技術的要件を検証することだ。そのために、携帯電話基地局を持っている通信事業者しか申請ができないという制約がある。「Why KDDI」に対する答えは明確だ。

一流のプレイヤーと共に新たな市場を創造

ドローンに取り組むとして、KDDIはどのようなプレイヤーになるべきか。実用化試験局の免許を申請できるという立場であることから、他業種の企業がドローンを使用した事業を行いたい場合は、通信事業者に対して免許申請を依頼することになる。

「ドローンでビジネスをやりたい方に、免許を提供するだけでなく、LTE通信モジュールを搭載した機体、三次元地図、管制システム、クラウドをパッケージしたプラットフォームを提供する"イネーブラー"(=後押しする存在)となろう。そして皆様にはそのうえで飛んでいただこうと決めました」と松田は語る。

「過去を振り返ると、KDDIはケータイの時にもEZwebやBREWといったプラットフォームを構築・提供し、パートナーの方々とともに新しい市場を開拓してきました。破壊的イノベーションに対して座して待つのではなく、イネーブラーとして新たな市場を創造していく。モノは変わっても、結局やっていることは変わらないんです」

だがKDDIも通信以外の分野については専門ではない。「それぞれの分野における一流のパートナー」として手を組んだのが、機体を開発するプロドローン、3次元地図を開発するゼンリン、4G/5Gの通信チップを担うQualcommだ。

プロドローン、ゼンリン、Qualcommとの提携を発表する、KDDI執行役員常務の山本泰英

「ドローンの機体はまさしく初期のガラケーやスマホと同様で、まだまだ差別化できる軸があります」。大量生産される小型ドローン分野ではすでに中国企業が市場を席捲しているが、産業用ドローンに求められるメカニカルな機構では日本の技術が強い。プロドローンは国際展示会でもユニークな機体を発表して注目されており、高性能で差別化できる期待を開発できるパートナーだ。

ゼンリンは地図サービスで以前からKDDIと協力関係にあり、ドローンを対象にした3次元地図にも新規事業部を立ち上げ、先進的な取り組みを進めていたことから声をかけた。

また、Qualcommは、LTE、そして今後の5Gでも、通信チップ開発の最先端を走る企業であるだけでなく、アメリカでベライゾンやAT&Tと組んで、ドローンに通信チップを搭載した実験を重ねるなど、ノウハウを持っている。

管制システムについてもシステム開発パートナーの選定を進めており、近く発表できる予定だ。また、ドローン向け気象情報を提供するために、携帯基地局に気象センサーを取り付けた「ソラテナ」をウェザーニューズと共同で運用するなど、さまざまなプレイヤーとの連携を進めている。

なお管制システムについては、経済産業省が2017年度から3カ年計画で、国全体のドローン管制システムの構築に向けた実証実験を予定している。KDDIをはじめ通信事業者各社が実用化試験局免許による運用で開発するドローン管制システムも、この中に統合されていく見込みだ。「ドローン活用には、総務省、経済産業省、国土交通省の3省庁にまたがる検証が必要になります。そこに、我々がイネーブラーとして取り組む意味があります」。

建設業や農業分野ですでに多くの問い合わせ

年末ぎりぎりの発表となったスマートドローンプラットフォームだが、「すでに法人事業部門にはB2Bのお客さまを中心に、数多くの問い合わせをいただいています」と、期待の大きさがうかがえる。

発表会では配送や災害救助などの用途も挙げられたが、現在引き合いが多いのは農業、測量、検査などの分野だ。

「空中撮影データを3D CADデータに変換するビジネスが立ち上がりつつあるので、そこにLTEとスマートドローンをパッケージできるということで、建物の測量・検査を行いたいとの引き合いがとても多くなっています」

B2B領域では、鉱山全体を撮影して3D化して鉱脈の位置を確認したり、国土交通省のiConstruction(工事現場の3Dデータ化による効率化)への取り組みや橋梁検査の厳格化への対応など、LTEで接続される前からすでに顕在化しているドローンのニーズがたくさんある。2017年度以降、商用サービスとして提供できるよう、管制システムなどの整備を進めていく。

auならではの「生活者のスタイルが変わるサービス」を提案

さらにその先に見据えるのは、一般のコンシューマーを対象にしたまったく新しいサービスだ。

ドローンによる配送や見守りなど、「今までのサービスをドローンで便利にする」だけでなく、「ドローンをKDDIの新規事業として立ち上げていくためには、一般のお客さまを視野に入れていく必要があります。ライフデザイン企業を目指すauとしては、ドローンを活用して生活者のスタイルが変わるサービスを提案しauを持つことによる嬉しさを増やしていきたい」と考えている。

発表会では「KDDI ∞ LABO×スマートドローン」アイデアソン開催やハウステンボスとの提携が発表された。ハウステンボスとの取り組みの第1弾が、2月17日から19日に開催される「ジャパン・ドローン・チャンピオンシップ in ハウステンボス」への協賛だ。ドローンに搭載したカメラの映像をモニター・タブレットを介して観客に伝える映像伝送技術で協力する。また期間中、ハウステンボスでスマートドローンをテーマとしたアイデアソンを開催する。

積極的な外部との提携には、「外部のプレイヤーの持つ武器で新たな可能性が開けるはずだ」という強い思いがある。パーソナルユースに向けて、小型機体開発にもゆくゆくは取り組みたいと意欲を見せる。

「一般のお客さまが最初に使うのは、今までになかった視点で撮れる、写真や動画の撮影サービスではないでしょうか」

野球やサッカーのような広いフィールド全体を上空から撮影したり、マラソンランナーに追走しながら撮影するなど、ドローンならではの新しい視点での撮影が楽しめる。テーマパークの撮影サービスも、ドローン定点カメラによる撮影や、場内の移動に合わせてドローンが追随してくれるようなサービスなど、いろいろと考えられそうだ。

撮影の先にあるサービスのアイデアとして松田が挙げたのが、VRとドローンの融合による「アルバム」の進化だ。紙焼きの写真を集めた物理的なアルバムは、デジカメや写メの普及により電子化され、パソコンやケータイのメモリに保存されるようになった。スマホとモバイルネットワークの進化により、写真データはクラウドに集約され、Googleがソートしてくれるようになっている。そして記録されるデータも静止画から動画へと変わりつつある。

「いずれはVR技術が空間をアルバムとして保存するようになってくるはずだと考えています。そのための撮影技術として、360°カメラとは異なる目線から撮影できるドローンには可能性があります。3次元とVRは親和性が高いと思いますので、実写系VRには使いやすいのではないでしょうか」

KDDI研究所で開発した「自由視点VR」のコンテンツ制作にも活用できそうだ。

「自律飛行」には5G技術が欠かせない

経済産業省が開発中の管制システムは、2019年度にドローンの自律飛行の実現を目指している。人が操縦することなくドローンが安全に飛べるようになれば、応用分野は飛躍的に広がるだろう。さらにもう一段、イノベーションが加速する。

ドローンが衝突回避しながら飛行するには、自動運転車のようにドローン同士でリアルタイムなコミュニケーションが必要になる。そのためには、実用化に向けKDDIが技術開発を進めている5G技術が大きな役割を果たすことになる。「スマートドローンプラットフォーム」は、通信の力で未来の扉を開く、KDDIの新たな挑戦なのだ。

文:板垣朝子
撮影:有坂政晴

※掲載されたKDDIの商品・サービスに関する情報は、掲載日現在のものです。商品・サービスの料金、サービスの内容・仕様などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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