2017/03/24

プロダクトデザイナーの深澤直人さんに、INFOBARをトランスフォームしてもらいました

15周年を迎えた「au design project」とタカラトミーとの特別企画で、デザインケータイINFOBARと、"超ロボット生命体"「トランスフォーマー」のコラボレーションモデルを製作する「au×TRANSFORMERS PROJECT」。

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33年という歴史を持ち、ハリウッドで映画化もされて世界中にファンがいる「トランスフォーマー」と、デザインケータイのパイオニアで、発売から14年が経った今でも色あせないデザインケータイの名作「INFOBAR」――

今回は、そのINFOBARの"生みの親"であり、プロダクトデザイナーとして世界的に知られる深澤直人さんのスタジオに、タカラトミーのトランスフォーマーデザイナーであり、今回のコラボレーションモデルを担当した大西裕弥さんが訪問。深澤さんにINFOBAR TRASFORMERSを直接、触っていただき、"お墨付き"をいただきました。

深澤さんがトランスフォームに挑戦!

INFOBARの生みの親であり、日本が誇るプロダクトデザイナーの深澤直人さん

大西裕弥さん(以下大西さん)「早速ですが、これがINFOBAR TRASFORMERSの試作品です」(INFOBAR TRASFORMERSを取り出す)

深澤直人さん(以下深澤さん)「おお、これはすごい。無着色モデルは見たけど、色がつくとまさにINFOBARですね。このロボットモードからどうにかすると、INFOBARになるということですよね。どこから変形できるのかな・・・・・・」
(手に取って、ぐるぐると本体を回しながらトランスフォームの糸口を探し出す深澤さん。完成図と見比べつつ、頭の中で展開図を想像しているようだ)

深澤さん「なるほど、ここから変形するんですね。(背中部分のブロックを発見)あえて説明書を見ないで変形させたい人には知育玩具的というかパズル的な要素もありますね。

トランスフォームをイメージしながら組み上げることで、折り紙のような立体的な想像力だけじゃなく、構造を理詰めで先を読んでいく将棋や囲碁に近い感覚を得られる気がします。大西さんは、どうやってこの薄いINFOBARの中に、変形モデルを入れることを考えているんですか?」

大西さん「まずはINFOBAR TRANSFORMERSに対して深澤さんにそういう感覚をもっていただき嬉しく思います。今回の場合は、デバイス自体を一度構造分解して、腕や脚部になる部分と共にINFOBARとして再構築していく感じです。更にその再構築化の際に、内部構造と表層とを結びつける"変形"という空間に『楽しさ』や『WOW!』といったエッセンスを詰め込むことを最大限努力することで、トランスフォーマートイとして成立させています。ある意味、基板や機械部品、バッテリーなどデバイスが必要とする部材が筐体の中で積み重なって構築されているイメージとも近いかもしれません」

トランスフォーマーデザイナーの大西裕弥さん

深澤さん「INFOBARのデザインの仕方とも似ていますね。実はINFOBARの初期コンセプト『info.bar』は最初、レゴブロックで作ったんですよ。娘のおもちゃ箱から取り出して、プレゼンテーション用に。・・・・・・そのあと、娘には返していないけどね(笑)」

始まった!デザインケータイというトレンド

大西さん「学生時代にそのレゴで作られたコンセプトモデルを初めて知った時に、表現が大胆で驚きと共に大変興味を持たせていただいて、INOFOBARの発売が本当に待ち遠しかったことを覚えています。その初代INFOBARから歴代のINFOBARを使用させていただきました。INFOBAR2に至っては2度購入して使用するぐらい本当にINFOBARシリーズの魅力にどっぷりハマっていました(笑)。

当時、カラフルで大型なタイル状のボタンやメタル素材の高い質感に惹かれ、愛着を持って使用していたことを思い出します。今回、INFOBAR TRANSFORMERSを企画開発していくなかで、このケータイを再度じっくり観察していくと、シンプルなストレート形状にまとめあげられたデザインの裏側に当時の最新鋭技術やこだわりが随所に詰まった本当にすごいプロダクトだと感じます」

深澤さん「INFOBARが出た時というと、折り畳み型の携帯電話が市場を席巻しているタイミングでした。そのなかでも、あえてストレート型の携帯電話をINFOBARで採用したんです。その理由としては、『不変的なプロポーション』という考え方があります。

たとえば、お菓子のチョコバーってストレートな形をしていて、パッケージを開けたら手を汚さずそのままかぶりつくことができる。シンプルで完成された形だから、ずっと形が変わらないんですね。

時代が変わっても、人の行為は変化しません。携帯電話においても、ストレートな端末を耳に当てて通話するという『不変的なプロポーション』も変わらないものではないかという仮説がありました。ストレート型にこだわったのはそういう理由なんです」

大西さん「なるほど。一見するとプロダクトアウトありきな端末だと思われてしまいがちですが、そうではなく、実際の人間の行為や行動をニーズとしてデザインされたというところに改めて感動します」

深澤さん「人のニーズというのは、言葉などでは単純に表現できない面があります。それを物体に落とし込んで、潜在的に"わかっていること"を具体的に"わかっていたこと"にするのが大切だと思います。"こういうものが欲しい"という曖昧なニーズをすくい上げたわけではなく、"これでしょ?"とものをみせて、"そう、これが欲しかった!"と過去形で言わせる感じです。

そう考えるとINFOBARは、なかなか具体化されていなかったものを登場させたという意図はあるかもしれないですね。やはり他人がしたいことを代わりにやってあげることがデザインということだから」

大西さん「そして、その潜在的ニーズを体現したINFOBARが生まれて以後、いわゆる"デザインケータイ"が増えましたよね。そのINFOBARを生み出した『au design project』が携帯電話市場に変革をもたらせていく様が目に見えて感じ取れましたし、私を含めてその時のデザインプロダクトやガジェット好きな方たちの活気やワクワクなどの期待感はすごかった」

深澤さん「そういった意味では、INFOBARが携帯電話自体のデザインの底上げにはなったかもしれません。今の時代、やった結果だけを見て『やれそうだ』という人は沢山います。でも、実際にやってくれる人はそうはいない。

au design projectを開始したことで、アイデアを持った人達が挑戦する風土ができたというのがあるかもしれませんね。形にしようと挑戦している人達のことを私自身、尊敬していますよ」

大西さん「本当におっしゃる通りだと感じています。自分もその影響を受けた一人ですし、INFOBARの出現がデザインはただただ形を表現することではなく、ニーズを想像し必然を"必然たらしめる"ことが必要だと気づかせてくれました。また、それらを生み出すプロセスやコンセプトを持つことは大事ですが、それ以上に実際に実現することがなにより大切だということを教えてくれたと思います」

深澤さん「そうですね。見えていない欲求が明らかになったことで、新たな欲求やモチベーションが生まれてくる。そうした難解なニーズをひも解いていくことに、私自身はやりがいも感じますし、非常に快感を覚えます」

大西さん「深澤さんのお仕事に対する感情についてお聞きできて本当に嬉しいです。学生時代から深澤さんに憧れをもち、目指してきた人間として深澤さんのお仕事やその時の感情、またデザイン論は本当に勉強になります」

深澤さん「デザイナーというと"形をつくる人"と思われがちですが、私は"姿を与えている"つもりなんです。椅子や家電、携帯電話など色々な姿をつくっているけれど、その場や求めていることに合う姿を与えたいと思っています。その当時、世の中に足りなかった姿というのがINFOBARでありauのデザインケータイなんです」

深澤さん「INFOBARがトランスフォーマーになることは、当時からわかっていたよ。・・・・・・ということにしておこう(笑)」

深澤さん「INFOBARのトランスフォーマーを触っていて思うのが、今回の『au×TRANSFORMERS PROJECT』は進化の必然だと思うんです。今は自分で変形させていますが、机の上で勝手に変形して喋ってくれるような可能性も感じますね」

大西さん「勝手に変形とは、未来的なお話しですね! パーソナルユースなホームロボットというイメージですか?」

深澤さん「イメージとしてはプライベートエージェントといった感じじゃないでしょうか? きっともう数年すれば、なにかを任せられるロボットになりますよ。ソフトウエアのエージェント化は現実的なものになっているけど、このコラボモデルのように筐体自体がキャラクターになるというのは、ほかにはないコンセプトだよね。初期コンセプトではPDAや電脳というキーワードによって作り出されたINFOBARが、完成形に近づいてきている気がします」

大西さん「なるほど、深澤さんがINFOBARを生み出す時に想像していた進化の過程にトランスフォーマーが関わることで、INFOBARが完成形態に近づいていっていると。そのトランスフォーマー自体も、オプティマスプライムやバンブルビーなど様々なキャラクターが存在し、もちろん各々が異なる性格をもっているので、そういう点では親和性とか大きな可能性を感じます。さらに当時INFOBARを持っていなかった若い世代の方々にも今回のプロジェクトに興味を持ってもらい、クラウドファンディングに参加していただているようなので、発展の更なる多様化や持続性など含めて、もっと新しい技術やハードウエアと融合していく可能性も感じられますね」

深澤さん「知らない人達にも触ってもらえるいい機会になりましたよね。スマホが全盛になったことで、ソフトウエアの良し悪しばかりが評価されがちです。でも、疑似的なものではなく肌で感じられるハードウエアの方が、やっぱり伝わりやすい」

大西さん「私もハードウェアが持つ存在感や現実性を信じている一人です。なので、本当に今回のINFOBAR TRANSFORMERSが持つさまざまな側面を期待していますし、それがもたらす効果というものが楽しみです。
最後に質問ですが、もしINFOBAR TRANSFORMERSに次回作があったら、どのようなものを期待していただけますか?」

深澤さん「個人的な期待といえば、INFOBAR TRANSFORMERSに、早く人工知能を積んでもらいたい。それでもって、『キュオーン・ガシャン』と音を出しながら目の前で変形していってもらいたいね(笑)。こういう風に、次はこうなったらいいのに! という期待を持たせる意味でも、いいコラボだと思いますよ」

大西さん「ありがとうございます。深澤さんにそういっていただけると非常に嬉しいです。最近はAIが身近なものになりつつありますし、簡易的なAIでも、今回のプロダクトの中に存在させるだけで新しい感覚が生まれそうですね」

深澤さん「AIを積むことができれば、そこにあるモノがヒトに近しい形に感じられると思う。たとえば神様が人間の形をしているのは、人間の形をしている方が身近でわかりやすい存在だから、という説もあります。その真偽はさておき、INFOBAR自体も、今回トランスフォームすることで人型となった。このプロジェクトを経てもう一段階、人に近しい形で具現化できた様な気がしますね」

大西さん「INFOBARの生みの親である深澤さんにそう言っていただけると、このプロジェクトの存在が認められた気がしますし非常に嬉しいです。また個人的にも深澤さんファンとしてINFOBARファンとしても非常に嬉しいですし、ほっとしています(笑)」

深澤さん「むしろINFOBARがトランスフォームできるのを、僕は当時から知っていたけれど、秘密にしていた。そういうことにしておきましょう(笑)」

深澤直人/1996年「IDEO」東京支社を設立し、国内外のデザインコンサルティングに従事。2003年に「Naoto Fukasawa Design」設立し独立。家電や家具など多くの人の心に残るプロダクトをつくる

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※2017年4月11日更新

文:東雲八雲
写真:稲田 平

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